フェロ・グラデュメット®(乾燥硫酸鉄:FeSO4・xH2O)
特徴
多孔性のプラスチック格子(グラデュメット)の間隙に硫酸鉄を含有する徐放錠。
消化管内で物理的拡散により鉄を徐々に放出し、最高血中濃度到達時間は6~12 時間後。
鉄放出後のプラスチック格子は、そのまま糞便中に排泄される。
急激に高濃度の鉄を胃腸粘膜に接触させることがないため、胃腸に対する負担が少ない。
鉄吸収効率の高い空腹時に服用することが推奨される。
なお、硫酸鉄はpHの上昇に伴い高分子重合体を形成するため、
●食後に服用
●PPIやH2ブロッカーを服用
●胃の切除をしている
…と吸収されにくくなる。
原則、空腹時に服用し、副作用が強い場合には食直後に服用する。
-名称の由来-
ferro(二価の鉄)とgradually melt(徐放)を合わせてフェロ・グラデュメット®(Fero-Gradumet)と命名された。
フェロミア®(クエン酸第一鉄ナトリウム)
特徴
胃酸分泌に影響されることなく吸収され、血清鉄を上昇させる。
最高血中濃度到達時間は3〜4時間後。
成分は可溶性の非イオン型クエン酸第一鉄ナトリウム。
クエン酸と鉄との間で錯体構造を形成し、酸性から塩基性に至る広いpH域で溶解しているので、中性から塩基性溶液中でも腸管吸収が可能である。
このため、食後投与が可能である(適応上も食後になっている)。
また、PPIやH2ブロッカーの服用中や、胃切除により胃内pHが高くなっても、吸収されにくくなることがないとされる。
-名称の由来-
第一鉄ferrousのferroと貧血Anemiaのmiaとを合わせてフェロミア®(Ferromia)と命名された。
鉄剤による胃腸障害
フェロ・グラデュメット®とフェロミア®による胃腸障害は完全に予防することはできない。
胃腸障害は通常用量依存的であり、1日量を減量するか、食直後あるいは就寝前服用により改善できることも多い。
ビタミンCと併用したほうがよい?
一般に、鉄は2価鉄の状態で吸収が良くなるため、還元剤としてビタミンC(アスコルビン酸 )を併用することがある。
ただし、フェロミア®はクエン酸を含有しているためと思われるが、「ビタミンCと併用しても貧血改善効果は単剤と比較して影響がなかった」という報告がある。
一方、フェロ・グラデュメット®はビタミンCと併用したほうが吸収が良くなるので併用されるケースがある。
鉄剤は毎日服用よりも隔日服用の方がいい?
鉄剤の吸収率は、毎日服用するよりも隔日服用の方が吸収率が良かったという報告がある(Lancet Haematol. 2017 Nov;4(11):e524-e533.)。
鉄欠乏性貧血の特徴
鉄欠乏性貧血は貧血の原因で一番多く、約7割を占める。
生理により鉄を失ったり、妊娠により鉄の需要が高まるので、鉄欠乏性貧血は女性に多い。
鉄欠乏性貧血では、爪がスプーン状に曲がったり、氷食症という氷を異常なほどに食べる行為が見られることがある。
検査値では、血清鉄とフェリチンが減少し、総鉄結合能(TIBC)が上昇する。
一般に、MCVは80より小さく、小球性貧血に分類される。
MCVとは?
平均赤血球容積のことで、mean corpuscular volumeの頭文字をとってMCVという。
MCVは赤血球1個の大きさを表し、基準値は81~100fL(fL:10-15/L)。
大きさにより
小球性(~80)
正球性(81~100)
大急性(101~)に分類される。
参考:
●各種添付文書、IF
●日経DI 2020年6月号
●福岡県薬剤師会 質疑応答
●エーザイ 医薬品Q&A【フェロミア】胃切除後に投与してもよいか?
●Twitterをやっています!【くすりカンパニー】。
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