m3.comで3000円ゲットしよう!
心臓

Fantastic Four(ファンタスティック・フォー) 〜心不全治療最前線〜 エンレスト、フォシーガ/ジャディアンスがポイント!

Fantastic Four

●慢性心不全の治療薬は下記のように多数ある。
●ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)、ARNI(エンレスト®)、ジゴキシン、SGLT2阻害薬、イバブラジン(コララン®)、ベルイシグアト(ベリキューボ®)など
●上記のうち、どれを併用するのがより効果があるのか。
●結論、ARNI、β遮断薬、MR拮抗薬、SGLT2阻害薬の併用が、全死亡、心血管死亡、心不全入院のリスクを最も減少させることが判明。

 

最新の心不全治療

ここ数年で慢性心不全の治療が大きく変わってきた。

これまでは「ACE阻害薬 or ARB」 + 「β遮断薬」 + 「MR(ミネラルコルチコイド受容体)拮抗薬」というのが標準であったが、今はFantastic Four(ファンタスティック・フォー)と呼ばれる4つの薬剤を全て使用することが、左室駆出率(LVEF)40%未満の心不全(HFrEF)の予後改善につながることが明らかになり、標準治療となりつつある。

 

ファンタスティック・4の種類

HFrEFに対して有効性が示されている以下の4つの薬剤が該当する。
●アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)
●β遮断薬
●ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)
●SGLT2阻害薬

具体的には
ARNI:エンレスト®
β遮断薬:アーチスト®、メインテート®など
MR拮抗薬:アルダクトン®、セララ®
SGLT2阻害薬:フォシーガ®、ジャディアンス®
が使用される。

注意!
MR拮抗薬には他にミネブロ®、ケレンディア®が、SGLT2阻害薬には他にスーグラ®、ルセフィ®、デベルザ®、カナグル®があるが2023年11月時点では適応はない。

参考までに…
ミネブロ®の適応:高血圧症
ケレンディア®の適応:2型糖尿病を合併する慢性腎臓病

あわせて読みたい
エンレストの作用機序、特徴、注意点。新しい心不全治療薬について解説。サクビトリルバルサルタン(商品名エンレスト)はどんな薬? ガイドラインで推奨される治療を行っても、心不全の死亡率や入院率は高く、新しい...
あわせて読みたい
アーチストとメインテートの違い。β・αβ遮断薬と特徴。β遮断薬・αβ遮断薬の基本情報 ●交感神経が活性化すると、心臓のβ1受容体が刺激を受けて心臓の収縮力が強くなり、血圧が上昇したり、...

 

従来の治療とFantastic Fourを比較すると
ACE阻害薬 or ARB → ARNI に変更
SGLT2阻害薬 が追加
となったわけだ。

なお、2021年3月に日本で発表された「2021年日本循環器学会(JCS)/日本心不全学会(JHFS)ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」では、ステージC(心不全ステージ)のHFrEF患者に対して、ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、MR拮抗薬を基本薬と位置付けている。
一方、ARNI、SGLT2阻害薬については、基本薬で効果不十分な場合の選択肢として、ACE阻害薬/ARBからARNIへの切り替え、SGLT2阻害薬の使用を認める内容となっている。

その一方で、欧米のガイドラインではすでにFantastic Fourの4剤はステージC(心不全ステージ)のHFrEF患者の標準治療となっている。
今後日本のガイドラインも変更されていくものと思われる。

 

ARNIとSGLT2阻害薬、Fantastic Fourのエビデンス

ARNI:エンレスト®
エンレスト®は、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象にした海外第III相PARADIGM-HF試験(2014年)において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるエナラプリルと比較し、「心血管死」および「心不全による入院からなる複合エンドポイントのリスク」を有意に20%減少させた。
そして、エナラプリルと比較して「全死亡の発現リスク」を16%有意に低減させた。
☑すごい薬剤がでてきたものだ。

SGLT2阻害薬
フォシーガ®
DAPA-HF試験(2019年):左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象とした試験。主要評価項目(心血管死亡+心不全悪化による入院または予定外の受診)は、心不全の標準治療にダパグリフロジンを上乗せした群で26%の有意な減少を示し、糖尿病の有無にかかわらずリスク減少は同等だった。

ジャディアンス®
EMPEROR-Reduced試験(2020年):
左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象とした試験で、標準治療にエンパグリフロジンを上乗せすることで、糖尿病合併の有無にかかわらず心血管イベントリスクが25%、心不全による入院の初発および再発の相対リスクを30%低下させ、腎機能の指標であるeGFRの低下を遅らせた。

あわせて読みたい
SGLT2阻害薬は心不全に有効か?エビデンスで紹介、EMPA-REG OUTCOME試験、DECLARE試験とは?SGLT2阻害薬のエビデンス:血糖降下作用以外の効果とは? エンパグリフロジン(ジャディアンス®) ●心血管死亡が減少 ●心不...

 

Fantastic Fourの4剤併用:
ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、ARNI(エンレスト®)、ジゴキシン、SGLT2阻害薬、イバブラジン(コララン®)、ベルイシグアト(ベリキューボ®)などのうちどれを併用するのが効果的か。

メタ解析によると、HFrEF患者の予後を改善する薬剤の組み合わせを検討した結果、ARNI、β遮断薬、MR拮抗薬、SGLT2阻害薬の併用が、全死亡、心血管死亡、心不全入院のリスクを最も減少させることが判明した(JACC Heart Fail.2022;10:73-84.)。

 

あわせて読みたい
心不全治療薬の新薬ベリキューボ(ベルイシグアト):作用機序と、特徴。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬とは。ここ最近、コララン®、エンレスト®、フォシーガ®などの慢性心不全の治療薬が次々と出てきている中、新規作用機序のベリキューボ®(ベルイシグ...
最後までお読みいただき、ありがとうございます!

m3.comで3000円ゲット!

Twitterをやっています!【くすりカンパニー】。
「お仕事の依頼」・「当サイトに記事を載せたい方」・「当サイトの記事を使いたい方」・「当サイトをご支援していただける方」を募集中!DMにてご連絡ください。