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血圧の薬、高血圧

アーチストとメインテートの違い。β・αβ遮断薬と特徴。

β遮断薬・αβ遮断薬の基本情報

●交感神経が活性化すると、心臓のβ受容体が刺激を受けて心臓の収縮力が強くなり、血圧が上昇したり、心拍数が増えたりします
また、血管のα受容体が刺激されて血管が収縮し血圧が上昇します

●β遮断薬は心臓のβ受容体を遮断し、血圧や心拍数を下げます。また、心臓の収縮力を抑え、心臓の酸素消費量や心臓の負担を減らします
β遮断薬の中には、α受容体の遮断作用をもっているものがあり、これらはαβ遮断薬と呼ばれています。

●β遮断薬は高血圧症だけでなく、中には狭心症、慢性心不全、頻脈、不整脈などの症状にも使用できるお薬があります。

●通常、高血圧症の治療の第一選択薬とはならず、他の降圧薬で効果不十分のときに追加されることが多いです。

●高血圧症の中でも、頻脈傾向の高血圧や、ストレスにさらされて交感神経が活性化しているタイプの高血圧に向いています。

狭心症の治療に使用されるときは、運動時など、心臓に負担がかかったときに起こるタイプの狭心症(労作性狭心症)の改善に有効です。

慢性心不全の治療に使用される薬剤では、「必ず低用量」から治療を開始し、様子を見ながら少しずつ量を増やしていきます。
β遮断薬は正しく使用されれば、心不全患者さんの心機能を改善し、心不全患者の生存期間を延ばす効果があります。
特に、カルベジロール(薬剤名アーチスト)ビソプロロール(薬剤名メインテート)に、このような生命予後改善の有用性が示された報告が多いです。

副作用には、まれに、血糖値・コレステロール・中性脂肪の上昇などがあります。糖尿病、脂質異常症(高脂血症)の人に使用するときは、少し注意が必要です。

●β遮断薬の中には、気管支のβ受容体も遮断してしまうものがあり、気管支喘息の症状が悪化することがあります。そのため、気管支喘息がある人にβ遮断薬を使用するときは、注意が必要です。

●β遮断薬の多くは、妊婦、または妊娠している可能性のある婦人には使用できないお薬です。

□発展事項 ~ISA(内因性交感神経刺激作用)について~
β遮断薬はその名の通りβ受容体を遮断しますが、中にはわずかながらにβ受容体刺激作用をもつものがあります。
●矛盾のように思われますが、β遮断薬の中には、交感神経が興奮しているときはβ受容体を遮断し、興奮していないときはβ受容体をわずかに刺激する性質を持つものがある、ということです。
このような作用をISA(内因性交感神経刺激作用)といいます。

●一般に、ISAがないものは心拍数減少作用が強くISAがあるものは心拍数減少作用が弱く、徐脈の副作用が少なくなると考えられています。
なお、現在使用されているβ遮断薬の多くは、ISAがないものが主流です。

 

β遮断薬、αβ遮断薬の特徴

心不全患者の生存期間を延長させるもの

カルベジロール(薬剤名アーチスト)
●αβ遮断薬に分類され、高血圧症だけでなく、狭心症、慢性心不全、頻脈性心房細動にも使用されるお薬です。
慢性心不全に対しては、生存期間を延ばす効果があるという報告があります(N Engl J Med. 1996 May 23;334(21):1349-55.)。
●なお、喘息症状を悪化させる恐れがあるため、喘息の方には使用できません
副作用の血糖値・脂質の上昇は少ないとされています。

 

ビソプロロール(薬剤名メインテート)
●β遮断薬に分類され、高血圧症だけでなく、狭心症、慢性心不全、頻脈性心房細動にも使用されるお薬です。
慢性心不全に対しては、生存期間を延ばす効果があるという報告があります( Lancet. 1999 Jan 2;353(9146):9-13)。
●カルベジロールよりも血圧・脈拍を低下させる効果がやや強いとされます。
●β遮断薬の中でもβ選択性が非常に高く、気管支喘息を悪化させにくい特徴があります。

<カルベジロールとビソプロロールの比較>
●β遮断薬の中でもカルベジロールとビソプロロールはよく使用されます。
●脈拍や血圧を低下させる効果は、ビソプロロールの方がやや強いです。
●共に慢性心不全の生存期間を延長する効果があります。
●慢性心不全への使い分けとしては、重症の心不全ではカルベジロールを慎重に使用し、軽度~中等度の心不全ではビソプロロールを使用するケースが多いようです。
気管支喘息のある人にはカルベジロールは使用できずビソプロロールは慎重に投与すれば使用可能です。

 

メトプロロール酒石酸塩(薬剤名セロケン、ロプレソール)
●カルベジロール、ビソプロロールよりは使用頻度は落ちますが、高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈の治療に使用されます。
●β選択性が高く、気管支喘息を悪化させにくいです。
●日本では適応はありませんが、慢性心不全に対して使用すると、生存期間を延ばす効果があるという報告があります(Lancet. 1999 Jun 12;353(9169):2001-7.)。
→【ご指摘により記事を修正いたします】
MERIT-HF試験( 1999 Jun 12;353(9169):2001-7.)では、慢性心不全にメトプロロールコハク酸塩を使用すると、生存期間を延ばす効果が報告されました。しかし、日本で承認されているのはメトプロロール「酒石酸塩」で、「コハク酸塩」ではありません。
また、急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)でも、生命予後を改善する薬剤の1つにmetoprolol succinate(メトプロロールコハク酸塩)と記載がありますが、メトプロロール酒石酸塩とはなっておりません。そのため、日本で承認されているメトプロロール酒石酸塩を慢性心不全に使用するのは、適切ではないようです。

 

カルベジロール、ビソプロロールと並んでよく使われるβ遮断薬

アテノロール(薬剤名テノーミン)
●β遮断薬の中でも処方頻度は比較的高く、高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈の治療に使用されます。
●頻脈傾向の高血圧症は良い適応です。
うっ血性心不全がある人は、病状が悪化する可能性があるため、本剤の使用はできません

 

片頭痛発作の予防にも使用できるもの

プロプラノロール(薬剤名インデラル)
●長い歴史をもつβ遮断薬です。もともとは狭心症、各種不整脈の治療薬として承認され、その後高血圧症や片頭痛発作の発症抑制等の承認を取得しました。
●適応症には
高血圧症、狭心症(冠動脈の異常収縮による異型狭心症は除く)、
不整脈(期外収縮、頻拍性心房細、洞性頻脈、新鮮心房細動)、
発作性頻拍の予防、発作性心房細動の予防、
片頭痛発作の発症抑制、などがあります。

●適応外ですが、食道静脈瘤の出血予防に使用されることもあります。
参考:http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/HC/hepatic-cirrhosis_3(1).pdf

うっ血性心不全、気管支喘息の患者には、症状を悪化させる可能性があるため使用できません
●片頭痛治療薬のリザトリプタン(薬剤名マクサルト)の作用が増強する可能性があるため、一緒に使用はできません。プロプラノロールもリザトリプタンも片頭痛の治療に使われますが、併用は禁忌なので注意が必要です。

 

妊娠中・授乳中に使用が可能と考えられるもの

ラベタロール(薬剤名トランデート
●αβ遮断薬に分類されます。
●高血圧症の治療に使用されますが、処方頻度は多くはないです。
早朝の急激な血圧上昇を抑制することが認められているので、早朝高血圧タイプの人には有効と考えられます(IFより)。
●β遮断薬の多くは、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用できませんが、ラベタロールは妊娠中の高血圧治療にも使用されることがあります。また、授乳中にも使用が可能と考えられているお薬の1つです(高血圧ガイドライン)。
うっ血性心不全、喘息がある人は、病状が悪化する可能性があるため、本剤の使用はできません

 

手指のふるえの改善に使用できるもの

アロチノロール(薬剤名アロチノロール)
●αβ遮断薬に分類され、高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈に適応がありますが、どちらかというと本態性振戦に使用されるケースが多いです。

●本態性振戦とは、原因はわからないけど手指が震えて文字が書きにくかったりするなどの症状をさします。本態性振戦に対する効果は、骨格筋のβ2遮断作用によると考えられています。
うっ血性心不全、喘息がある人は、病状が悪化する可能性があるため本剤の使用はできません

 

世界初のテープ型のβ遮断薬

ビソプロロール(薬剤名ビソノテープ)
●飲み薬のビソプロロール(薬剤名メインテート)を貼り薬にしたお薬で、皮膚からお薬が吸収され、高血圧の治療に使用されます。
●お薬を飲みこみにくい人(例えば高齢者)、お薬を飲むことができる状態ではない人の高血圧を治療するのに適しています。
●飲み薬と異なり、慢性心不全の適応はありません
●2021年1月時点の適応症は次の2つ。
1. 本態性高血圧症(軽症〜中等症)
2. 頻脈性心房細動

●心房細動患者を対象とした試験(第Ⅲ相試験)では、4週間後の安静時心拍数の平均変化値は
テープ4mg≒錠剤2.5mg
テープ8mg≒錠剤5mg
でした。

●嚥下機能低下、認知機能低下、重症ではないが経口投与が難しい患者などに適しています。

●入浴の影響による副作用はないとされており、貼ったまま入浴が可能と考えられています。
剥がれかけてきたときは、ばんそう膏等で縁を押さえてください。それでも剥がれてしまった場合は、次回の貼付時間になってから新しいテープを貼ってください。

 

その他のβ遮断薬と適応症
ベタキソロール(薬剤名ケルロング):高血圧症、狭心症

アセブトロール(薬剤名アセタノール):高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈

セリプロロール(薬剤名セレクトール):高血圧症、狭心症

ニプラジロール(薬剤名ハイパジール):高血圧症、狭心症

ナドロール(薬剤名ナディック):高血圧症、狭心症、頻脈性不整脈

カルテオロール(薬剤名ミケラン):高血圧症、狭心症、不整脈など

ピンドロール(薬剤名カルビスケン):高血圧症、狭心症、頻脈

アモスラロール(薬剤名ローガン):高血圧症。αβ遮断薬に分類

ベバントロール(薬剤名カルバン):高血圧症。αβ遮断薬に分類


参考
①αβ遮断薬

カルベジロール(薬剤名アーチスト)
アロチノロール(薬剤名アロチノロール)
ラベタロール(薬剤名トランデート)
アモスラロール(薬剤名ローガン)
ベバントロール(薬剤名カルバン)

②ISA(内因性交感神経刺激作用)がないもの
アテノロール(薬剤名テノーミン)
ビソプロロール(薬剤名メインテート、ビソノテープ)
プロプラノロール(薬剤名インデラル)
メトプロロール(薬剤名セロケン、ロプレソール)
ベタキソロール(薬剤名ケルロング)
ニプラジロール(薬剤名ハイパジール)
ナドロール(薬剤名ナディック)

③ISA(内因性交感神経刺激作用)があるもの
アセブトロール(薬剤名アセタノール)
セリプロロール(薬剤名セレクトール)
カルテオロール(薬剤名ミケラン)
ピンドロール(薬剤名カルビスケン)

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