薬の服用により、本当は腎障害が起きてないのに見かけ上クレアチニン(Cr)値が上昇し、腎機能悪化、例えば急性腎障害(AKI)と勘違いされることがたまにある。
「見かけ上」Cr値が上昇する薬剤には、
●ST合剤(バクタ®)に含まれるトリメトプリル
●シメチジン
●コビシスタット(HIV治療薬)
●カプマチニブ(肺がん治療薬)
等がある。
これらの薬剤は尿細管におけるCrの尿細管分泌を阻害するため、腎機能の悪化がなくても血清Cr値が(わずかに)上昇することがある。
このような時は、血清Cr値を使用するGFR推算式やCockcroft-Gault(コッククロフト・ゴールド)の式を用いることはできないが、シスタチンCを用いると腎機能を正しく評価できる。
「血清Cr」と「シスタチンC」の比較
●血清Cr値はGFRが30~40mL/min前後まで低下しないと上昇しない。
●一方、シスタチンC はGFRが60~70mL/minくらいで上昇するので、血清Cr値よりも早期の腎障害に気づくことができる。
ただし、重度の腎機能障害は正確に評価できないため、血清Cr値が2mg/dL以上のときは使用せず、血清Cr値を使用して腎機能を評価したほうがよい。
注意!
とは言っても、ST合剤はCrの偽性高値を示す一方で、実際に腎障害を引き起こすことが知られている。
「Is trimethoprim/sulfamethoxazole-associrated increase in serum creatinine a pseudo-elevation or true nephrotoxicity?」によると、
ST合剤の使用前後に血清CrとシスタチンCを同時に測定したところ、約50%の患者でCrとシスタチンCが上昇し、実際に腎障害が起きていることがわかった。
ST合剤服用中のCr値上昇が、「見かけ上の上昇」なのか、それとも「本当に腎障害が起きているのか」を確認することは大切なことである。
なお、クレアチニンは薬剤の添加剤として使用されていることがある。
たとえば、デカドロン®注射液にはクレアチニンが8mg含まれており、これが原因で「急性腎障害と勘違いしそうになった症例報告」もあるそうだ。
血清Cr値が上昇することがある薬剤にはACE阻害薬/ARBも知られているが、上記の薬剤とは異なる機序で上昇する。ACE阻害薬/ARBで上昇する理由は以下の通り。
ACE阻害薬/ARB
→糸球体内圧が下がる
→糸球体ろ過量が減る
→血清Cr値が上昇
ただし、ACE阻害薬/ARBの投与前と後で、血清Cr値が30%未満の上昇ならそのまま継続投与してよいとされている(参考:CKD診療ガイド)。
「見かけ上」Cr値が上昇する薬剤
●ST合剤(バクタ)に含まれるトリメトプリル
●シメチジン
●コビシスタット(HIV治療薬)
●カプマチニブ(肺がん治療薬)
ただし、ST合剤の場合は本当に腎障害起きていることもある。
ACE阻害薬/ARBでもCr値が上昇することがあるが、投与前と後で30%未満の上昇ならそのまま継続投与が可能。
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