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腎臓・腎機能低下・尿酸

ネスプとエベレンゾ、バフセオ、ダーブロック、エナロイの違い、特徴。新しい経口腎性貧血の薬とは。

腎性貧血は、慢性腎臓病(CKD)における代表的な合併症の一つであり、「腎臓においてヘモグロビン(Hgb) の低下に見合った十分量のEPOが産生されないことによって引き起こされる貧血であり、貧血の主因が腎障害以外に求められないものをいう」と定義されている。

腎性貧血は末期腎不全への病態進行を早め、また心不全の独立した増悪因子であるため、早期発見・治療が大切である。

 

赤血球造血刺激因子(ESA)製剤

ダルベポエチン アルファ(ネスプ®注射液)

<適応>
腎性貧血(小児適応あり)
骨髄異形成症候群に伴う貧血

<特徴・作用機序>
2012年8月発売。
ヒトエリスロポエチンに新たなN-結合型糖鎖を2本付加することで誕生した、持続型赤血球造血刺激因子製剤。
エリスロポエチン受容体に結合し、赤血球造血作用を示す。

小児から成人まで幅広い年代の慢性腎臓病患者の腎性貧血に適応を有する。
腎性貧血の治療では、2週に1回の頻度で投与する場合が多い(詳細は添付文書を要確認!!)

注射製剤であるため感染症リスクや患者の身体的負担がある。

腎性貧血の適応 
→血液透析、腹膜透析、保存期慢性腎臓病に使用可能!

 

HIF-PH阻害薬

エベレンゾ®、バフセオ®、ダーブロック®、エナロイ®の4つがあり全て経口薬。

<特徴・作用機序>
HIF-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)という酵素を阻害することで、転写因子の低酸素誘導因子(HIF:hypoxia inducible factor)の分解を抑制し、HIF経路が活性化される。

通常、生体が低酸素状態に曝露されると赤血球造血反応が刺激されるが、HIF-PH阻害薬によりHIF経路が活性化されると、正常酸素状態でも内因性エリスロポエチンの産生が亢進し、赤血球造血が刺激される。

HIF-PH阻害
→HIF-αの分解が抑制
→HIF経路が活性化
→HIF応答性であるエリスロポエチン遺伝子の転写を促進
→内因性エリスロポエチンの産生が亢進
→ヘモグロビン、赤血球産生亢進

 

ロキサデュスタット(エベレンゾ®)
2019年11月に発売。

<適応>
腎性貧血。

<用法>
通常、週3回服用。

 

バダデュスタット(バフセオ®)
ダプロデュスタット(ダーブロック®)
2つとも2020年8月に発売。

<適応>
2つとも腎性貧血。

<用法>
2つとも1日1回の服用。

エナロデュスタット(エナロイ®)
近々発売予定(2020/10/31時点)

<適応>
腎性貧血。

<用法>
1日1回、食前または就寝前。
食事の影響を受けるため食後投与はダメ。

食事の影響
健康成人男性に本剤100mgを食後に単回経口投与した時のCmax及びAUCinfは,空腹時投与と比較してそれぞれ47%及び26%低下した。
注)本剤の承認最高用量は,1日8mgである。

添付文書より。

 

エベレンゾ®の添付文書には記載はないが、バフセオ®、ダーブロック®、エナロイ®の添付文書には、「ESA製剤からの切り替え時(注)にHb濃度が低下する傾向が認められることから、切り替え後のHb濃度の低下に注意すること」とある。

注:
バフセオ®:血液透析患者において
ダーブロック®: 血液透析患者、腹膜透析患者において
エナロイ®:保存期慢性腎臓病患者、腹膜透析患者において

ネスプ®注射液、上記4つの経口HIF-PH阻害薬は腎性貧血に適応がある。

エベレンゾ®の用法は週3回であることに注意。週3回の通院が多い血液透析患者は、透析時に服用してもらえば飲み忘れが減るかも?

4つある経口HIF-PH阻害薬のうち、エナロイ®のみ食前or就寝前。その他は食前・食後の指定はない。

ネスプ®は冷所(2~8度)保存、上記4つの経口HIF-PH阻害薬は室温保存。
災害時の保管に経口HIF-PH阻害薬は便利と考えられる。

<HIF-PH阻害薬には警告がある>
 警告
本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

日本腎臓学会、HIF-PH阻害薬の適正使用を勧告

日本腎臓学会は2020年9月29日、「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」を公開。
同勧告について一部紹介。

●HIF-PH阻害薬のターゲットとなるヘモグロビン(Hb)値を、保存期慢性腎臓病(CKD)患者で11~13g/dL、透析期CKD患者で10~12g/dLとした。

●事前に悪性腫瘍、網膜病変の検査を行い、合併がないか、適切な治療がなされているかを確認した上で開始すべきである。

●添付文書上に血栓塞栓症の警告がなされていることを鑑み、虚血性心疾患、脳血管障害や末梢血管病(閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症など)のある患者については、そのリスクを評価した上で適応の可否を慎重に判断する。

●ESA製剤とHIF-PH 阻害薬の併用は想定されておらず、行うべきではない。

●HIF-PH 阻害薬投与においては、鉄が十分補充されていることが肝要である。

●HIF-PH阻害薬によって鉄利用障害が改善する。フェリチン100ng/mL未満、トランスフェリン飽和度20%未満をHIF-PH阻害薬使用時の鉄補充の目安とする。

●血栓塞栓症は血液が急激に粘稠になることでも惹起されうるので、ヘモグロビン値の上昇速度が0.5g/dL/weekを上回らないようにする。


☆用法用量、切り替え方法などの詳細は各添付文書を必ず確認してください。

参考:各薬剤の添付文書、IF

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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