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胃がんの手術後にメチコバールが処方された理由

胃全摘と貧血の関係

胃がんの手術により胃の全摘術を受けた場合、V.B12欠乏による巨赤芽球性貧血を起こすことがある。

理由
赤血球の合成にはV.B12が関与。
V.B12の吸収部位は回腸で、吸収には胃壁細胞から分泌される内因子が必要。
胃を全摘すると内因子が欠乏し、V.B12の吸収阻害の結果、巨赤芽球性貧血となる。

V.B12は肝臓で貯蔵されており、すぐに貧血になることはない。
胃を全摘し、無治療でいると平均5年くらいで貧血が起こるとされているため、胃全摘を行った人は、年に2回ほどV.B12の注射がすすめられている。

 

また、胃を全摘すると鉄欠乏性貧血も起こしやすくなる。

理由
食品から摂取した鉄は、胃酸によりイオン化されてから吸収される。
胃全摘だと胃酸の分泌がなくなるため、鉄の吸収が悪くなる。

 

巨赤芽球性貧血とは?

血液中に、大きく未熟な赤血球が見られることが特徴。
DNA合成に必須のV.B12葉酸が欠乏することで起こる。

<V.B12欠乏の原因>
1)偏食
2)吸収阻害
ⅰ)悪性貧血:自己免疫化生性萎縮性胃炎による壁細胞の減少 → 内因子欠乏 
ⅱ)胃の切除:内因子欠乏
ⅲ)回腸を切除:V.B12の吸収部位が回腸

<葉酸欠乏の原因>
1)偏食
2)吸収阻害:メトトレキサート、フェニトイン、アルコールなど
3)妊娠

巨赤芽球性貧血のうち、61%が悪性貧血、34%が胃全摘、2%が葉酸欠乏。
参考: 東邦大学医療センター 大森病院 臨床検査部

 

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メチコバール®の適応

V.B12製剤であるメチコバール®は、内服と注射で適応が異なる。

内服:末梢性神経障害
注射:①末梢性神経障害、②ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血

巨赤芽球性貧血に対しては、メチコバール®の筋肉内注射が原則である。

その一方で、胃全摘後の巨赤芽球性貧血に対して、内服のメチコバール®が有効という報告もある(ただし、保険適応外)。

参考:
胃全摘後のいわゆる悪性貧血の治療について EAファーマ
日経DI 2019 1月号 P34 

 

胃全摘による鉄欠乏性貧血。鉄剤は何を選べばよいか

フェロ・グラデュメット®とフェロミア®は同じ鉄剤でも、胃内pHによって吸収に差が出る。

フェロ・グラデュメット®は胃内pHが高いと高分子重合体を形成しやすく、吸収されにくくなる。
一方、フェロミア®は胃内pHが高くても吸収が悪くなることはない。

よって、「胃全摘による鉄欠乏性貧血」ではフェロ・グラデュメット®よりもフェロミア®を選択するほうが望ましい。


なお、通常の鉄欠乏性貧血であれば、フェロ・グラデュメット®、フェロミア®のどちらでもよいと考えられる。ただし、PPIなどの胃酸分泌抑制剤を服用中であれば、やはりフェロミア®のほうが望ましいだろう。

 

胃全摘によるその他の症状

胃の全摘によりダンピング症候群が起こる場合がある。

<早期ダンピング症候群>
食物が腸に急速に流れ込むことが原因で、食後20~30分で起こる。
主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感など。
腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの腹部症状がみられる場合もある。

<後期ダンピング症候群>
腸に入った食べ物が短時間で吸収され、一時的に急激な高血糖になる。
これに反応してインスリンが大量に分泌され、食事を摂ったにも関わらずかえって低血糖になることが原因。
食後2~3時間で、ふらつき、冷汗、めまい、手指のふるえなどが現れる。

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