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血液、抗血小板・抗凝固薬

プラビックス、エフィエント、ブリリンタの比較、違い、特徴

クロピドグレル(プラビックス®)、プラスグレル(エフィエント®)、チカグレロル(ブリリンタ®)は、
①活性代謝物への代謝過程
②CYP2C19の影響受けやすさ
③作用点のADP受容体(P2Y12受容体)への結合
などに違いがあります。

 

活性代謝物への代謝過程

クロピドグレル(プラビックス®)はCYPで2回代謝されることで活性代謝物になります。

一方、プラスグレル(エフィエント®)は最初にエステラーゼにより代謝され、その後でCYPにより代謝されて活性代謝物となります。

エステラーゼはCYPより代謝スピードが速いため、クロピドグレルよりもプラスグレルの方が活性代謝物の産生効率が高く、そして効果発現が早いです。

このようにクロピドグレルとプラスグレルはプロドラッグなのに対し、チカグレロル(ブリリンタ®)はそれ自体が活性を持っているため代謝活性化を必要とせず、内服後速やかに抗血小板作用の効果を発現します
その反面、作用の持続時間が短いため、チカグレロルは1日2回の服用が必要です。

ちなみに、クロピドグレルとプラスグレルは1日1回の服用です。

●クロピドグレルとプラスグレルはプロドラッグ。
●効果の早さはプラスグレル>クロピドグレル。
●チカグレロルはそれ自体が活性を持つため効果が早い。
●クロピドグレルとプラスグレルは1日1回服用。
●チカグレロルは1日2回服用。

 

 

CYP2C19の影響受けやすさ

クロピドグレルは主にCYP2C19により活性代謝物に代謝されて効果がでます。

このCYP2C19には遺伝子多型が存在し、日本人の約15%はCYP2C19活性が著しく低下しているpoor metabolizer(PM)と言われています。
そのため、日本人の15%の人はクロピドグレルの効果が不十分となる可能性があります。

クロピドグレルの効果には個人差がある一方で、プラスグレルとチカグレロルはCYP2C19の代謝をほとんど受けないため、個人差が生じにくいという特徴があります。

●クロピドグレルの効果には個人差がある。
●プラスグレルとチカグレロルの効果には個人差が少ない。

 

ADP受容体(P2Y12受容体)への結合

クロピドグレル、プラスグレル、チガグレロルは血小板のADP受容体(P2Y12受容体)に結合して血小板凝集作用を阻害します。

このうちクロピドグレル、プラスグレルは「不可逆的に結合」をするのに対し、チカグレロルは「可逆的な結合」をします。

このため、チカグレロルは他の2剤よりも投与中止後による作用の消失(=血小板機能の回復)が早いです。

手術前の休薬期間の目安

クロピドグレル 14日以上
プラスグレル 14日以上
チカグレロル 5日以上

 

●チカグレロルの作用の消失は、他の2剤より早い。
●休薬期間の目安はチカグレロルが5日、クロピドグレル、プラスグレルは14日以上。

 

食事の影響

クロピドグレルは、国内第I相臨床試験において絶食投与時に消化器症状がみられたので、空腹時の投与は避けることが望ましいとされています。

プラスグレルを空腹時に服用すると、食後と比較して、活性代謝物のCmaxが約3.3倍に増加しました(ただし、AUCに顕著な差はなし)。
そのため、空腹時の服用は避けることが望ましいとなっています。

チカグレロルは食事による大きな影響はなく、服用タイミングの指定はありません。

●クロピドグレルとプラスグレルは食後服用が推奨。
●チカグレロルは食前・食後どちらでもOK

 

 

3剤の適応の違いと、通常の用法用量

クロピドグレル(プラビックス®)
1)虚血性血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
→1日1回75mg

2)経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性疾患
・急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
・安定狭心症
・陳旧性心筋梗塞
→初日に1回300mg、翌日以降は1日1回75mg。
  抗血小板薬二剤併用療法期間は、アスピリン(81~100mg/日)と併用する。

3)末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制
→1日1回75mg

 

プラスグレル(エフィエント®)
1) 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性疾患
・急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
・安定狭心症
・陳旧性心筋梗塞
初日に1回20mg、翌日以降は1日1回3.75mg。
  抗血小板薬二剤併用療法期間は、アスピリン(81~100mg/日)と併用する。

2) 虚血性血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)
1日1回3.75mg

 

チカグレロル(ブリリンタ®)
1)経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
初回用量を180mg、2回目以降の維持用量を90mgとして、1日2回
上記が添付文書の記載。わかりやすく説明すると
朝から服用するとすれば、初日(朝180mg、夕90mg)、2日目以降~(朝90mg、夕90mg)、
夕から服用するとすれば、初日(夕180mg)、2日目以降~(朝90mg、夕90mg)ということ。



2)
以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合
リスク因子:65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害
1回60mg、1日2回

虚血性心疾患には以下のものがある。
・急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
・安定狭心症
・陳旧性心筋梗塞

このうち、陳旧性心筋梗塞とは心筋梗塞が発症してから30日以上経過し、その後の病状が安定した慢性期の状態をさす。
乱暴な言い方をすれば、「既往歴としての心筋梗塞」となる。

PCIが適用される急性冠症候群・陳旧性心筋梗塞に対しては、クロピドグレルとプラスグレルは同じ用法用量だが、チカグレロルでは用量が異なることに注目だ。

例えば、PCI適用の心筋梗塞で入院。その後症状が安定(リスク因子のある陳旧性筋梗塞)した。チカグレロルを使用して治療していた場合どうなるかというと…
維持量を「1回90mg、1日2回」から「1回60mg、1日2回へ」と変更する必要がある、ということだ。

●クロピドグレル:心臓末梢(足など)の領域に適応。
●プラスグレル:心臓の領域に適応。
●チカグレロル:心臓領域のみに適応。

注意!
適応・用法用量は最新の情報を各自を確認をしてください。

 

3剤の共通点~PCIが適用される心疾患では低用量アスピリンと併用

経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される心疾患に使用する場合は、3剤とも低用量アスピリンと併用します。

ただし、チカグレロル(ブリリンタ®)の使用条件には注意が必要。
2022年1月時点では、
「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」
となっており、第一選択薬ではありません。

なお、2020年12月8日、プラビックス®とエフィエント®の添付文書が以下のように改訂されました(赤線部分が追加)。

プラビックス®:
経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患の場合
抗血小板薬二剤併用療法期間は、アスピリン(81~100mg/日)と併用すること。抗血小板薬二剤併用療法期間終了後の投与方法については、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。

エフィエント®:
抗血小板薬二剤併用療法期間は、アスピリン(81~100mg/日、なお初回負荷投与では324mgまで)と併用すること。抗血小板薬二剤併用療法期間終了後の投与方法については、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。

つまり、二剤併用療法期間終了後はプラビックス®、エフィエント®の単独投与ができる場合があるということです。

詳細は添付文書と「2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版(冠動脈疾患患者における抗血栓療法ガイドライン)」で確認をしてください。

ちなみに、抗血小板薬2剤併用療法はDAPT(dual antiplatelet therapy)と呼ぶこともあります。

DAPTにより心血管イベントを抑制することが期待できますが、6カ月未満の短期DAPTと、1年を超える長期DAPTを比較したメタ解析(BMJ.2019;365:l2222.)では、両群で心血管死には差がなかったという報告がされています。

このようなことから、上記ガイドラインではリスクに応じて1~3カ月または3~12カ月のDAPTを続けたのち、アスピリン or P2Y12阻害薬単剤の投与を推奨しています。

下の表は同ガイドラインより。

●PCIの適応時、チカグレロルはアスピリンと併用(必須)。
●クロピドグレルとプラスグレルは、最初はアスピリンと併用するが、場合によっては併用をしなくてもよいこともある。

 

参考:
各薬剤の添付文書
福岡県薬剤師会 質疑応答

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