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腎臓・腎機能低下・尿酸

腎機能低下時に、薬物動態はどのように変化しますか?薬の投与量にも注意!調べ方はこれ!

実際の現場では書籍などから腎機能低下時の投与量を調べることになると思いますが、どうして投与量に注意する必要があるのか、というそもそもの理由を知っておくといいと思います。

ちなみに、参考になる本や資料には
・透析患者への投薬ガイドブック 慢性腎臓病(CKD)の薬物治療 第3版
・腎機能別薬剤投与量POCKETBOOK 第3版
おすすめ医療書籍

日本腎臓病薬物療法学会の、腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧
などがあります。


腎機能低下時の薬物動態の変化

腎排泄性薬物の蓄積

尿中未変化体(未変化体の多くが活性体)排泄率が高い薬物」は排泄が遅延し、消失半減期が延長します。それに伴い血中濃度も上昇するため、これらの薬物を投与するときは減量・投与間隔の延長などをしないと副作用が起きる可能性が高くなります。

また、活性代謝物の蓄積が問題となるときもあり、ジソピラミド(商品名リスモダン)では抗コリン作用・低血糖、モルヒネでは鎮静作用・傾眠などがあり、腎不全時では減量が必要です。

消化管浮腫による吸収低下

腎機能が低下すると消化管浮腫が起こる場合があります。この消化管浮腫により、フロセミド(商品名ラシックス)は吸収率が約1/2に低下することがあり、経口ではなく注射剤に変更し投与する場合もあります。

蛋白結合率の変化

慢性腎疾患(CKD)のステージG4~G5の患者、血液透析患者、腹膜透析患者では血中アルブミン濃度が低下しやすいです。多くの薬物は血中でアルブミンなどのタンパク質と結合し、結合型と非結合型の形で存在しています。

このうち「非結合型の薬物のみ」が細胞膜を通過し、作用部位に到達し薬効を発揮します。また、代謝・排泄に関わります。

低タンパク血症では非結合型が増加します。タンパク結合率が90%以上の薬物は、特にタンパク結合率低下の影響を受けやすいです。

<参考>
◇肝代謝型薬物でタンパク結合率が高く、肝抽出率(肝臓に入った薬物が肝臓で除去される割合)が低いフェニトイン(商品名アレビアチン)、ワルファリン(商品名ワーファリン)、バルプロ酸(商品名デパケン)などは、腎機能低下によるタンパク結合率の低下(→非結合型の薬物の増加)で代謝が早くなることがあります1)。
それは、タンパク結合していない非結合型の薬物のみが代謝され、排泄されるからです。

◇フロセミドのタンパク結合率は95%以上で、ネフローゼで低アルブミン血症のときは、タンパク結合できないフロセミドが血管外に漏れ出てしまい、血中濃度が低下することがあり、この場合は投与量を増加する必要があります2)。

参考:1)透析患者への投薬ガイドブック、2)シチュエーションで学ぶ輸液レッスン

分布容積の変化

分布容積Vd(L/kg)=体内薬物量/血中濃度で表されます。

分布容積が意味するのは、体重1㎏当たり、体内の薬物が見かけ上、血中濃度と同じ濃度で体の組織に均一に分布したらどのくらいの容積なのか、ということです。
そして、分布容積が大きい薬物ほど、血中濃度は低く組織に移行しやすい薬物です。

腎不全によるVdの変化は、薬物の種類によって上昇・低下することがあります。

例えば、Vdの小さい水溶性薬物では腎不全による溢水でVdが上昇するため、初回投与量の増量を検討する必要があります。

また、正確なメカニズムは不明ですが、ジゴキシンは腎不全によりVdが低下します。そのため、末期腎不全患者には通常の負荷量の50~70%に減量する必要があります。

<参考>
Vdが大きいもの:プロプラノロール(商品名インデラル)は脂溶性が高く、組織移行性が高い。Vdは4L/kg。

Vdが小さいもの:アテノロール(商品名テノーミン)は水溶性薬物で、組織移行性は低い。Vdは0.6~0.7L/kg。

薬物代謝の変化と活性代謝物の蓄積

P糖タンパク質の阻害

腎機能低下により尿毒素が蓄積し、P糖タンパク質(消化管の排泄トランスポーター)の機能と発現が低下し、薬物の血中濃度が上昇することがあります。

グルクロン酸抱合体と腸肝循環

アセトアミノフェンモルヒネが代謝されてできるグルクロン酸抱合体は、腎機能低下により尿中排泄が減少し蓄積します。その代わりに胆汁排泄の割合が高くなり、腸管内で脱抱合され親化合物の再吸収が増加します。

アセトアミノフェンは透析患者では健常者の約3倍の血中濃度になることもあり、連続投与する場合は少量に留めておく必要があると思われます。

モルヒネは中等度以上の腎機能低下があれば減量をする必要があると考えられます。また、コデインは代謝されてモルヒネになるので、同様の注意が必要です。

なお、フェンタニルやオキシコドンは腎機能低下時でも基本的に減量の必要はありません。

腎臓による代謝の低下

肝臓ほどではないですが、腎臓でも酸化・抱合などの代謝が行われています。
腎臓は肝臓・骨格筋と並んでインスリンを分解する主要臓器の1つで、腎不全ではインスリンの分解能が低下します。このとき、肝臓による代償は起こりません。そのため腎不全のときはインスリンの投与量を減らす必要があります。

まとめ

腎機能低下時には次のことが起こることがある。
〇腎排泄性薬物の蓄積
〇消化管浮腫による吸収低下
〇蛋白結合率の変化
〇分布容積の変化
〇薬物代謝の変化と活性代謝物の蓄積
〇腎臓による代謝の低下

必要に応じて投与量を調節する必要があり、書籍などを活用し適切な投与設計を行っていく必要があります!

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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