腎排泄型と肝代謝型薬薬物
腎排泄型
尿中に排泄される活性体の割合が多い薬物。
尿中活性体の多くは未変化体ですが、代謝物が活性体のときもあります。
肝代謝型薬物
肝臓で代謝を受け薬効を失い、胆汁中や尿中に排泄される割合が多い薬物。
バイオアベイラビリティ(生物学利用率)
バイオアベイラビリティとは、薬物を血管外投与(経口、筋注など)したときの、循環血中に移行した薬剤の量の割合のことです。
静脈内注射では薬物が全て体の中に入るため100%ですが、経口投与などでは、一部が吸収されずに糞便中に排泄されたり、肝臓や小腸で一部が代謝されるものがあるためバイオアベイラビリティは下がります。
腎臓の寄与度
薬の排泄にどのくらい腎臓が関わっているのかを示すのが腎臓の寄与度です。
静脈内注射された薬物の場合、総クリアランスに占める腎臓の寄与度は尿中活性体(多くは未変化体)排泄率と同じになります。この数値が40~50%以上の薬剤は腎機能に応じた減量を考慮します。
一方、内服薬の総クリアランスに占める腎臓の寄与度は、尿中活性体排泄率だけではなく、バイオアベイラビリティも考慮する必要があります。
問題:Ccrが50ml/分に低下している患者にファモチジン(商品名ガスター)を静脈内投与するときは、どのくらいに減量する必要がありますか?
添付文書には「ガスター注射用投与後24時間までの未変化体の尿中排泄率は、筋肉内投与で71.0~89.6%、静脈内投与で57.8~96.4%である」とあります。
静脈内投与での未変化体の尿中排泄率を約80%とすると、腎臓の寄与度も約80%となります。残りの20%は腎機能によらない排泄を受けています。
ここで、腎機能が正常な人のクレアチニンクリアランス(Ccr)を100ml/分とした場合、Ccrが50ml/分に低下している患者では腎機能が50%に低下しています。
この時のファモチジンの総クリアランスは
20%(腎機能によらない排泄)+80%×0.5(腎機能による排泄)=60%
となり、ファモチジンを体内から消失させる能力は、腎機能が正常の人と比較して60%しかないことを意味しています。
よって、この患者の適正使用量は
ファモチジンの常用量40mg/日×0.6=24mgとなります。
添付文書ではCcrが30<Ccr<60のときは
1回20mg、1日1回もしくは1回10mg、1日2回とあり、1日の用量が似た値になっていることがわかります。
尿中排泄率の解釈の仕方
腎機能が低下している患者に減量するべき薬物は、尿中活性体の排泄率が高い薬物です。活性体の排泄率が40~50%以上だと蓄積しやすいと言われています。
例えば、アロプリノール(商品名ザイロリック)は肝臓で代謝され、活性代謝物オキシプリノールになります。
アロプリノールは尿中未変化体排泄率は約10%ですが、オキシプリノールの尿中排泄率は約70%と高いので、腎機能低下時には注意が必要です。
なお、添付文書で記載されている尿中排泄率は活性を持たない代謝物を含めたものが多く、この場合の尿中排泄率は腎機能低下時の投与設計に役に立ちません。
腎不全で活性代謝物が蓄積する可能性のある薬剤の例
薬物名 | 活性代謝物の作用 |
アロプリノール (商品名ザイロリック) |
汎血球減少、肝障害 |
ジソピラミド (商品名リスモダン) |
強力な抗コリン作用、低血糖 |
グリベンクラミド (商品名オイグルコン) |
血糖降下作用の増強 |
モルヒネ コデイン |
傾眠傾向、鎮静作用の持続 |
ミダゾラム (商品名ドルミカム) |
傾眠傾向、鎮静作用の持続 |
リスペリドン (商品名リスパダール) |
混乱しやすい添付文書の尿中未変化体排泄率という表現
尿中排泄率は静注投与した場合のデータを採用します。そして、同じ薬物なら経口投与でも静注投与でも尿中排泄率は同じです。
しかし、アシクロビル(商品名ゾビラックス)を静注したときの尿中排泄率は68.6%又は76.0%、経口投与したときの尿中排泄率は25.0%及び12.0%1)と記載されています。
なぜ経口投与したときの尿中排泄率は25.0%及び12.0%という記載がでてきたのか、説明したいと思います。
まず、アシクロビルを100投与した場合、静注では100が血液中に入り、約70が尿中排泄されます。つまり腎臓の寄与度は70%です。
次に、経口投与時のバイオアベイラビリティは15~30%2)です。
100を経口投与しても15~30しか血液中に入らず、そこから腎臓の寄与度70%で排泄されると尿中に排泄されるのは10.5~21となります。
この数値から経口投与時の尿中排泄率が記載されているようですが、投与設計には役に立たないばかりか、誤解を招くので注意が必要です。
1)添付文書
2)透析患者への投薬ガイドブック
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