ニコチン酸アミド散10%「ゾンネ」の基本情報
<成分であるニコチン酸アミドとは?>
ニコチン酸アミドはV.B3とも呼ばれ、ニコチン酸とともにNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)、NADP(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド・リン酸エステル)に組み込まれ、脱水素酵素の補酵素として広く生体内の酸化還元反応にあずかり、細胞の酸化還元反応に不可欠の物質である。
ナイアシン欠乏症のペラグラの治療に使用されたり、適応外だが水疱性類天疱瘡に使用されたりする。
<適応>
①ニコチン酸欠乏症の予防及び治療(ペラグラなど)、ニコチン酸の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時など)
②下記の疾患のうちニコチン酸の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
口角炎、口内炎、舌炎、接触皮膚炎、急・慢性湿疹、光線過敏性皮膚炎、メニエル症候群、末梢循環障害(レイノー病、四肢冷感、凍瘡、凍傷)、耳鳴、難聴
<用法用量>
通常成人1日25〜200mg(製剤量0.25~2g)を経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ペラグラとは
ナイアシン欠乏症をペラグラという。
臨床症状には以下の3つのDが含まれる。
色素沈着を伴う限局性の発疹(皮膚炎 = dermatitis)
胃腸炎(下痢 = diarrhea)
認知機能低下(認知症 = dementia)
皮膚症状:
手に手袋様の分布で、または足と下肢にブーツを履いたような分布で皮膚が赤くなる。
欠乏症の早期にみられる消化管症状:
便秘がよくみられるが、後に悪心・嘔吐・および下痢が起こることがある。
下痢は腸管の充血および潰瘍形成のためしばしば血便となる。
中枢神経系症状:
精神病症状、脳症(意識障害を特徴とする)、認知機能低下(認知症)などがある。
水疱性類天疱瘡とは
水疱性類天疱瘡は、表皮基底膜部抗原(ヘミデスモソーム構成蛋白であるBP180とBP230)に対する自己抗体(IgG)により、表皮下水疱を生じる自己免疫性水疱症である。
臨床的には、全身性の紅斑&水疱ができ、痒みを生じる。口腔粘膜病変を生じる場合もある。年齢的には60-90歳の高齢者に多い。
<治療方法>
低リスク群(口腔粘膜±皮膚の限局性病変)と高リスク群(広範囲あるいは進行性の口腔粘膜病変、あるいは眼、外陰部、鼻咽腔、喉頭あるいは食道病変)に分けて治療方針を立てる。
低リスク群ではステロイド外用や DDS(ジアフェニルスルホン:レクチゾール®) 内服療法、テトラサイクリン・ニコチン酸アミド併用内服療法が用いられる。
高リスク群であっても軽症の場合、低リスク群と同様の治療が選択されることがある。高リスク群で重症の場合は、大量のステロイド内服療法や免疫抑制療法を行う。
以下の一覧は類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)診療ガイドラインより。
軽症例の処方例:
テトラサイクリン500~2,000mg/日(あるいはミノサイクリン100~200mg/日)とニコチン酸アミド500~2,000mg/日を併用する(いずれも保険適応外使用)。
一般に、副腎皮質ステロイド外用療法を併用する。
ここで注目。
ニコチン酸アミドの常用量は1日25〜200mg(製剤量0.25~2g)。
水疱性類天疱瘡での治療量は1日500~2000mg(製剤量5~20g)。
桁違いの量になることがあるのだ。
1日量の製剤量が2gではなく20gの処方が来た場合、処方量が間違っている!と思う前に、患者さんから十分な聞き取りを行っておく必要があるだろう。
なお、V.B3であるニコチン酸アミドは、過剰に摂取した分は尿として出ていく。
しかし、ニコチン酸アミドは投与初期に顔面が紅潮したり、皮膚のかゆみ、歯痛が出たりすることがある。また、投与7週くらいまでに肝障害が出現するリスクがある。
ミノサイクリン(ミノマイシン®)の作用機序は、サイトカイン産生抑制、リンパ球や好中球などへの炎症細胞への抗炎症作用によるものと考えられている。
抗菌作用以外のミノサイクリンの使用は、こちらもご覧いただきたい。
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