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皮膚疾患

アトピー治療薬:JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬のコレクチム軟膏とオルミエント錠の特徴

アトピー性皮膚炎とは

増悪と軽快を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする皮膚疾患。
治療目標は、「無症状」 or 「症状があっても軽微であり、日常生活に支障がない寛解状態への導入、そして長期維持」である。

従来の治療薬は
外用:ステロイド、プロトピック®(タクロリムス)軟膏
内服:ステロイド、ネオーラル®(シクロスポリン)、アレグラ®(フェキソフェナジン)などの抗アレルギー薬などであった。

2018年4月には、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体であるデュピルマブを成分とするデュピクセント®皮下注が発売されるなど、アトピー性皮膚炎の新しい薬が出てきている。これは、裏返して言えば既存の治療薬では効果が不十分なケースがあったことを意味する

デュピクセント®皮下注の適応
●既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
●気管支喘息
(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)
●鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
(既存治療で効果不十分な患者に限る)

 

なお、今回紹介するアトピー性皮膚炎治療薬であるコレクチム®軟膏の発売日は2020年6月、オルミエント®錠の適応追加は2020年12月である。

 

コレクチム®軟膏0.5%/0.25%(成分デルゴシチニブ)

<特徴>
世界初の外用JAK阻害薬で、日本では2020年6月に発売された。
ステロイド、タクロリムスに次ぐ第3の抗炎症外用薬である。
成人だけでなく、小児にも使用可能であるが、ともに1回の最大投与量が決まっている

治療効果はタクロリムス軟膏と同等(=ステロイド外用薬のミディアム(マイルド)~ストロング)とされている。ただし、治療効果には個人差があるようだ。
灼熱感などの刺激感はほとんどなく、タクロリムス軟膏が使用できない人への治療選択肢が増えた。

 

<作用機序>
ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することにより、種々のサイトカインシグナル伝達を阻害する。
これにより、サイトカインにより誘発される免疫細胞及び炎症細胞の活性化を抑制して皮膚の炎症を抑制する。
また、サイトカインにより誘発されるフィラグリン等の皮膚バリア機能関連分子の発現低下及び掻破行動(そう痒)を抑制する。

 

<適応>
アトピー性皮膚炎

 

<用法用量>
通常、
成人:0.5%製剤を1日2回塗布。1回あたりの塗布量は5gまで。
小児:0.25%製剤を1日2回塗布。症状に応じて0.5%製剤を1日2回塗布することが可能。1回あたりの塗布量は5gまで。
なお、間隔は12時間程度あけることが望ましい。

成人と小児で使用濃度が異なる。どの規格も1本5g製剤なので(2021/5月)、1回あたり5g=1本、1日あたり10g=2本が最大量。
最大量が決まっているのは、過量投与すると経皮吸収量増加により全身性に影響を来す可能性があるため。
プロトピック®軟膏と異なり、0.25%製剤には「小児用」などとは書いていないので2021年5月時点)、処方入力・調剤間違いに注意。

 

<注意点>
1回あたりの塗布量は体表面積の30%までが目安。
0.5%製剤で治療開始4週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止する。

何も考えず1回の最大量として5gを使用していいわけではなく、「体表面積の30%まで」を考慮すること。
症状改善がなければむやみに長期間使わない!!

 

<副作用>
適用部位毛包炎(2.5%)、適用部位ざ瘡(2.0%)などがある。
免疫抑制作用を考えればこのような副作用は十分理解できる。使用部位に皮膚感染症がないことを確認してから使用すること。

また、適用部位刺激感(1%以上)もある。
タクロリムス軟膏に比べれば刺激感は圧倒的に少ない。

プロトピック®軟膏0.1%:
熱感(灼熱感、ほてり感等)(44.3%)、疼痛(ヒリヒリ感、しみる等)(23.6%)

 

<気になる疑問>
Q.ステロイド外用剤、タクロリムス軟膏との併用は可能か?

A.日本皮膚科学会作成のデルゴシチニブ軟膏(コレクチム® 軟膏 0.5%)安全使用マニュアルによると、

ステロイド外用剤
→併用は可能と考えられる。

タクロリムス軟膏
→免疫抑制作用が強まり、両剤を併用する意義はあきらかでない。両剤を同一部位に併用する場合には、該当部位を慎重に観察する必要がある。

なお、
全身療法薬(シクロスポリン、デュピルマブ)
→併用した臨床試験のデータはなく、有効性や安全性に対するデータはない。
投与については個々の患者の状態を踏まえ、慎重に判断することが望ましい。

となっている。

 

オルミエント(成分バリシチニブ)

<特徴>
2017年9月に発売。
もともとはリウマチの適応だったが、2020年2月にアトピー性皮膚炎、2021年4月にSARS-CoV-2による肺炎も適応が追加された。

アトピー性皮膚炎に対しては、コレクチム®軟膏に次ぐJAK阻害薬であり、内服薬としては最初の経口JAK阻害薬である。

非常に薬価が高い。2mg錠が約2700円、4mg錠が約5200円(2021年5月)。ぽんぽん処方していい薬ではない。

錠剤のシートが厚紙で挟まれており、ロットの確認ができないため不動在庫買取会社へ売ることができないこともある(厚紙を破ると買取不可の会社だった)。

<作用機序>
バリシチニブはJAK1とJAK2の選択的かつ可逆的阻害剤。
JAK1とJAK2を阻害することでサイトカインによるシグナル伝達を阻害し、炎症反応・免疫反応を抑制する。

 

<適応>
●既存治療で効果不十分な下記疾患
・関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
・アトピー性皮膚炎
●SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)

リウマチ、アトピー性皮膚炎に対してはファーストチョイスの薬剤ではない。
使用者は当然限定されるが、なんとSARS-CoV-2による肺炎、いわゆる新型コロナ肺炎の適応も追加された。

 


<使用上の注意>
関節リウマチ:
メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬等を使用しても症状がある場合に使用。

アトピー性皮膚炎:
ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤等を使用しても十分な効果が得られない場合に使用。なお、保湿外用剤を継続使用すること。

原則として、抗炎症外用剤を併用すること(という記載が添付文書にあるが、これはタクロリムス軟膏ではなく、ステロイド外用剤を指すと思われる)。

SARS-CoV-2による肺炎:
酸素吸入、人工呼吸管理又は体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。
重症患者に使用できる。

 

<用法用量>
関節リウマチ、アトピー性皮膚炎には、
通常、成人には4mgを1日1回服用。なお、状態に応じて2mgに減量する。
増量はしない。症状が良ければ減量する薬

SARS-CoV-2による肺炎には、
通常、成人にはレムデシビル(ベクルリー®点滴静注)との併用し、バリシチニブとして4mgを1日1回服用。総投与期間は14日間まで。
併用しないといけない!

<副作用>
重大な副作用に、
帯状疱疹(3.2%)、肺炎(0.8%)、ニューモシスティス肺炎(0.1%未満)、敗血症(0.1%未満)、結核(0.1%未満)、好中球減少(0.8%)、リンパ球減少(1.3%)、ヘモグロビン減少(0.1%)など。

10%以上の副作用に、
上気道感染(鼻炎、上咽頭炎、副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、口腔咽頭痛、咽頭炎、咽頭扁桃炎、扁桃炎、喉頭炎、喉頭蓋炎、気管炎を含む)、LDLコレステロール上昇

1~10%未満の副作用に、
悪心、腹痛、帯状疱疹、単純ヘルペス(ヘルペス性状湿疹、性器ヘルペス、カポジ水痘様発疹、眼部単純ヘルペス、口腔ヘルペスを含む)、尿路感染、頭痛、トリグリセリド上昇など。

感染症、LDL、TG上昇の副作用に注意。

 

<その他の注意点>
プロベネシド(ベネシッド®)との併用では1日1回2mgに減量するなど用量に注意。
(プロベネシドがOAT3を阻害→バリシチニブのAUCが2倍に増加したという報告あり。)

関節リウマチ、アトピー性皮膚炎では、重度の腎機能障害(eGFR<30)の患者への使用は禁忌

●使用前には、結核感染の有無を確認すること。

その他のJAK阻害薬

フィルゴチニブ(ジセレカ®)
〇既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

ルキソリチニブ(ジャカビ®)
〇骨髄線維症
〇真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)

ペフィシチニブ(スマイラフ®)
〇既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

トファシチニブ(ゼルヤンツ®)
〇既存治療で効果不十分な関節リウマチ
〇中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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