ニキビとは
一般に「ニキビ」と言われている尋常性ざ瘡は、皮膚の慢性炎症性疾患である。
思春期以降に発症しやすく、顔や胸、背中にできたりする。
ニキビは
①古い角質などで毛穴が詰まる
②毛穴に皮脂が溜まる
③そこに主にアクネ菌(Propionibacterium acnes)が過剰に増殖し炎症を引き起こす
という仕組みでできる。
ニキビを悪化させないためには、ニキビのはじまりである毛穴がつまった状態(コメド=面ぽう)の状態から治療を開始するとよい。
コメドを放っておくと、炎症を起こした「赤ニキビ」、化膿した「黄ニキビ」へと悪化していく。
推奨される治療法
尋常性痤瘡治療ガイドライン2017には、面ぽう・急性炎症期・寛解維持期などで推奨される治療法が掲載されている。
以下、評価A(行うよう強く推奨する)の薬剤の一例を紹介する。
面ぽう
●アダパレン(ディフェリン®)
●過酸化ベンゾイル(ベピオ®)
●アダパレン/過酸化ベンゾイル(エピデュオ®)
なお、面ぽうには外用抗菌薬を推奨しない、となっている。
急性炎症期の炎症性皮疹
●アダパレン(ディフェリン®)
●過酸化ベンゾイル(ベピオ®)
●クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル(デュアック配合ゲル®)
●アダパレン/過酸化ベンゾイル(エピデュオ®)
●外用抗菌薬
・クリンダマイシン(ダラシンT®)
・ナジフロキサシン(アクアチム®)
・オゼノキサシン(ゼビアックス®)
●内服抗菌薬
・ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)
炎症軽快後の寛解維持期
●アダパレン(ディフェリン®)
●過酸化ベンゾイル(ベピオ®)
●アダパレン/過酸化ベンゾイル(エピデュオ®)
☆ ディフェリン®、ベピオ®、エピデュオ®は面ぽう・急性炎症期・寛解維持期のどの時期でも推奨されている。
アダパレンの女性への安易な処方に要注意
アダパレンは、ヒトでの妊娠中の使用に関する安全性は確立しておらず、また動物実験(経口投与)において高用量曝露による催奇形作用が報告されている。
そのため、「アダパレンは妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌」となっている。
ただし、
☑動物実験では経皮投与では催奇形性は認められていない
☑通常量の使用では血漿中のアダパレンは検出限界以下で、全身循環への移行はほとんどない
☑国内外臨床試験及び海外での市販後において、推定4300万例の患者にディフェリン®
が使用され、妊娠例が296例報告され(2015年7月31日現在)。このうち、先天奇形が11 例報告されてたが、ディフェリン®との因果関係は明確ではない
これらのことから、胎児へのリスクは低いと考えられるが、添付文書では禁忌になっているので使用させないようにすること。
外用薬での妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌は珍しいほうだと思うので、この機会にしっかりと覚えておきたい。
アダパレン(ディフェリン®)
アダパレン/過酸化ベンゾイル(エピデュオ®)
→妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌
ディフェリン®とエピデュオ®の皮膚炎の予防方法
ディフェリン®とエピデュオ®の成分であるアダパレンや過酸化ベンゾイルは、使い初めに皮膚の乾燥・刺激感、紅斑などが出やすい。
このような皮膚炎の予防として、まずは低刺激性で毛穴につまりにくい化粧水や乳液でしっかりと保湿することが大事である。
もし皮膚炎が出てしまったとしても、使用を続けていくうちに症状が軽減していくことがあるが、症状が強い場合は保湿剤や抗アレルギー薬などを使用する場合もある。
<処方例1>
●ディフェリン®ゲル
1日1回、洗顔後、患部に塗布
●ヒルドイド®ソフト軟膏
1日数回、患部に塗布
<処方例2>
●エピデュオ®ゲル
1日1回、洗顔後、患部に塗布
●プロペト
1日数回、患部に塗布
●オロパタジン
1日2回
エピデュオ®は配合剤のため皮膚刺激症状が出やすい。
処方例2では、エピデュオ®をニキビとその周囲に塗った後に、プロペトを重ねて塗るとよい。プロペトは純度の高いワセリンで、刺激に対して過敏になっている皮膚を保護する。
オロパタジン(などの抗アレルギー薬)は、皮膚炎やそれに伴うかゆみに対して処方されることがある。
エピデュオ®のその他の注意点:
成分の1つである過酸化ベンゾイルには漂白作用があるので、髪、色のついた洋服・枕カバーなどにエピデュオ®が付着しないように注意すること。
アダパレン/過酸化ベンゾイルのもうちょっと詳しい解説
アダパレン:
天然のレチノイドとは異なるが、細胞核内レチノイン酸受容体(RAR)に結合し、RAR の標的遺伝子の転写促進化を誘導することによりレチノイド様作用を示す。
結果、表皮角化細胞の分化を抑制することで面皰(コメド)の数、炎症性皮疹の数、総皮疹数の減少効果を示した。
もっと簡単に言うと、ニキビができる原因の一つの「毛穴のつまり」を抑え、ニキビができにくい肌の状態にする薬。
過酸化ベンゾイル:
以下の3つの作用により効果を発揮する。
●抗菌作用
過酸化ベンゾイルの分解により生成した「活性酸素」が、ニキビに関与しているアクネ菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌に対して抗菌作用を示す。
●角層剥離作用(いわゆるピーリング作用)
角層をはがし、薄くすることで毛穴のつまりを抑える。
その結果、ニキビの前段階である面ぽうができるのを抑える。
●皮膚の炎症を抑える作用
白血球からの活性酸素放出を抑制することによって、皮膚の炎症を抑える。
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