添付文書の副作用の項目に体重増加/減少が記載されているものは数多くあるが、ここでは「重要な基本的注意」に「体重増加/減少」が記載されている薬剤の一例を紹介する。
体重増加に注意する薬剤
ピオグリタゾン(アクトス®)
「循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が短期間に発現し、また心不全が増悪あるいは発症することがあるので、服用中の浮腫、急激な体重増加、症状の変化に注意し、異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導すること。」
☞糖尿病治療薬。
☞アディポネクチンを増加させ、インスリン抵抗性を改善。
どちらかというと肥満の糖尿病患者に効果があり著効するresponderが存在する。
☞浮腫と体重増加に注意する薬。
浮腫は女性に出やすく、女性には1回15mgからのスタートが推奨。
3Kg以上の体重の増加には注意!
☆ピオグリタゾンの配合錠(ソニアス®、リオベル®、メタクト®)も当然注意。
グアンファシン(インチュニブ®)
「体重増加を来すことがあるので、定期的に体重を測定し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。」
☞注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬。
☞選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬で、もともとは高血圧の治療薬だったが販売中止に。2017年5月に、AD/HDの適応で新しい製剤として販売されるようになった。
オランザピン(ジプレキサ®)/クエチアピン(セロクエル®/ビプレッソ®徐放錠)
「体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。」
☞非定型抗精神病薬(多元受容体作用抗精神病薬:MARTA)
☞ジプレキサ®は適応多数(剤形によるので要確認)
●統合失調症
●双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善
●抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
☞セロクエル®の適応
●統合失調症
☞ビプレッソ®徐放錠の適応
●双極性障害におけるうつ症状の改善
ブレクスピプラゾール(レキサルティ®)
「体重増加及び脂質異常症などの代謝の変化が発現することがあるので、本剤投与中は体重の推移を注意深く観察し、体重の変動が認められた場合には原因精査(合併症の影響の有無等)を実施し、必要に応じて適切な処置を行うこと。」
☞セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーター:SDAM
☞適応は、統合失調症。
☞CYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)、強いCYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を併用する場合は用法及び用量の調節を行うこと。
ガバペンチン(ガバペン®)/ガバペンチン エナカルビル(レグナイト®)
「体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。」
ガバペン®
☞抗てんかん薬。併用療法で使用。
☞腎機能で用量調節。
☞適応外だが、「神経障害性疼痛」に使用可能。当該使用事例は審査上認められる。
今はリリカ®があるので、ガバペン®を第一に使用する必要はないと思われる。
レグナイト®
☞適応は、中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)。
☞ガバペンは高度腎機能障害でも量を減らせば使用可能だが、レグナイト®は高度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)では禁忌。
☞ガバペンチンは経口投与時の吸収のばらつき(個人差)があり、また薬物吸収トランスポーターの飽和による臨床用量付近での吸収の飽和が認められる。
プロドラッグ化したガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンとは異なるトランスポーターから吸収され、用量依存的にガバペンチン血中濃度が上昇することが確認されている。
プレガバリン(リリカ®)/ミロガバリン(タリージェ®)
「体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。」
☞リリカ®の適応は、
●神経障害性疼痛
●線維筋痛症に伴う疼痛
☞タリージェ®の適応は、
●末梢性神経障害性疼痛
☞リリカ®とタリージェ®で微妙に適応が異なることに注意!(2021年4月時点)。
☞リリカ®もタリージェ®も腎機能に応じて用量調節を行う。
クロザピン(クロザリル®)
「体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合には、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。」
☞適正使用を図るための流通管理等の実施が義務付けられている。詳細はこちら。
☞適応は、治療抵抗性統合失調症。
使用基準・用法用量は添付文書で要確認!!
シクロフェニル(セキソビット®)
「本療法の卵巣過剰刺激による副作用を避けるため、急激な体重増加の有無などに留意すること。」
☞適応は
●第1度無月経
●無排卵性月経
●希発月経の排卵誘発
バレニクリン(チャンピックス®)
「禁煙は治療の有無を問わず様々な症状(不快、抑うつ気分、不眠、いらだたしさ、欲求不満、怒り、不安、集中困難、落ち着きのなさ、心拍数の減少、食欲増加、体重増加等)を伴うことが報告されており、基礎疾患として有している精神疾患の悪化を伴うことがある。」
☞禁煙補助薬。
☞処方箋に「ニコチン依存症管理料の算定に伴う処方」の記載が必須。
☞禁煙治療認定医療機関以外の医療機関が処方する場合は、保険外の扱いとなる。
☞重度腎機能障害では用量調節を行う。
体重減少に注意する薬剤
メチルフェニデート塩酸塩徐放(コンサータ®)
「小児に本剤を長期投与した場合に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与が長期にわたる場合には患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくない時は投与を中断すること。また、成人においても体重減少が報告されている。」
リスデキサンフェタミン(ビバンセ®)
「本剤の投与により体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与中は患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくないときは、投与の中断等を考慮すること。」
アトモキセチン(ストラテラ®)
「小児において本剤の投与初期に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与中は小児患者の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくないときは減量又は投与の中断等を考慮すること。」
コンサータ®、ビバンセ®、ストラテラ®は注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬。
コンサータ®
☞中枢神経刺激薬で、第一種向精神薬。
☞放出制御型のフィルムコート錠(徐放錠)。
☞一包化調剤は不適。
☞コンサータ®は乱用・依存リスクがあるため処方する際は注意。
ビバンセ®
☞中枢神経刺激薬で、覚せい剤原料に指定されている。
☞コンサータ®とビバンセ®は不眠があらわれるおそれがあるため、就寝時間等を考慮し、午後の服用は避ける。
☞コンサータ®とビバンセ®は登録制!
処方医、処方を受ける薬局の薬剤師はADHD適正流通管理システムにアクセスし、必要なEラーニングを受けた後、ADHD適正流通管理システムに登録する必要がある。
ストラテラ®
☞ノルアドレナリンの再取り込み阻害を主作用とする、世界初の非中枢刺激性の AD/HD 治療薬で、依存や乱用のリスクが低いと考えられる。
メチルフェニデート(リタリン®)
「小児に中枢神経刺激剤を長期投与した場合に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与が長期にわたる場合には患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくない時は投与を中断すること。」
☞適応はナルコレプシー。
リタリン®でコンサータ®の代用はできない。
☞処方、調剤はリタリン流通管理委員会で登録を行わないとできない。
各種SGLT2阻害薬
「体重減少が報告されているため、過度の体重減少に注意すること」
☞糖を尿中に排泄するので、体重減少はある意味当たり前かも。ただし、極端な体重減少がないかよく聞き取りを行うこと!
以下、SGLT2阻害薬、もしくはその配合剤。
トホグリフロジン(アプルウェイ®、デベルザ®)
カナグリフロジン(カナグル®)
エンパグリフロジン(ジャディアンス®)
イプラグリフロジン(スーグラ®)
ダパグリフロジン(フォシーガ®)
ルセオグリフロジン(ルセフィ®)
テネリグリプチン/カナグリフロジン(カナリア®配合錠)
シタグリプチンリン/イプラグリフロジン (スージャヌ®配合錠)
リナグリプチン/エンパグリフロジン(トラディアンス®配合錠)
アルツハイマー型認知症治療薬
リバスチグミン(イクセロン®パッチ/リバスタッチ®パッチ)
ガランタミン(レミニール®)
「アルツハイマー型認知症患者では、体重減少が認められることがある。また、本剤を含むコリンエステラーゼ阻害剤の投与により、体重減少が報告されているので、治療中は体重の変化に注意すること。」
☆ドネペジル(アリセプト®)は「重要な基本的注意」には体重減少の記載はないが、体重減少の副作用の記載はある(頻度0.1~1%未満)。
トピラマート(トピナ®)
「体重減少を来すことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察すること」
☞抗てんかん薬。併用療法で使用。
☞体重減少の頻度は21.3%と高い。
☞クレアチニンクリアランスが70mL/分未満の場合には、投与量を半量にするなど慎重に投与する。
ブプレノルフィン(ノルスパン®テープ)
「体重減少を来たすことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察し、徴候が認められた場合には、適切な処置を行うこと。」
☞非オピオイド鎮痛剤で治療困難な、下記疾患に伴う慢性疼痛における鎮痛に使用。
●変形性関節症
●腰痛症
☞毎日貼りかえるのではなく、7日毎に貼り替えて使用。
☞第2種向精神薬なので帳簿記載が必要&保管場所はしっかりと向精神薬の場所に。
☞流通管理の規制あり。処方は、e-learning受講済みの医師のみが可能、ルスパン®テープの購入および調剤のできる医療施設は、予め登録された医療機関および薬局に限られる。
詳しくはノルスパン®テープ適正使用推進webサイトを参照。
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