急性膵炎の原因
日本では、アルコールと胆石が急性膵炎の原因の多くを占める。
その他の原因に、自己免疫疾患、薬剤、中性脂肪の高値などがある。
男性ではアルコール性膵炎が多く、女性では胆石性膵炎が多い。
1日に、エタノール48g以上の飲酒を続けると、膵炎発症リスクは約2.5倍になる。
一般に、中性脂肪が1000〜2000mg/dL以上だと急性膵炎のリスクが上昇する。
頻度は、1000mg/dL以上だと約5%、2000mg/dL以上だと10~20%と言われている。
一方で、中性脂肪が500mg/dL以上でもリスクが上昇するという報告もある。
ただし、中性脂肪の高値が原因で急性膵炎となるのは稀である。
●アルコール性急性膵炎の約半数は再発を生じる。
●急性膵炎後の慢性膵炎への移行率は 3~15%。
●アルコール20gは、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となる。
急性膵炎の診断基準
急性膵炎の診断基準は以下の通り。
1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。
2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある。
3.超音波、CT または MRI で膵に急性膵炎に伴う異常所見がある。
上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。
意外!!エフオーワイ®の効果は…
急性膵炎ガイドラインによると、
「急性膵炎に対して、蛋白分解酵素阻害薬(ガベキサートメシル酸塩:エフオーワイ®など)の経静脈的投与は、生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。
そのため、現時点で明確な推奨度を決定できない。」
という意外な結果に。
☞一律な投与は避けるべき?
中性脂肪が高いと急性膵炎を起こす理由
はっきりとした理由は見つけられなかったが、明⽯医療センター総合内科の資料「⾼トリグリセリド⾎症と急性膵炎」によると、
中性脂肪が加⽔分解されたできる遊離脂肪酸がCa2+と結合することで、微⼩⾎栓・灌流障害を起こし膵炎を発症するそうだ。
中性脂肪を下げる薬
中性脂肪を下げる薬にはフィブラート系、EPA製剤などがある。
なお、LDL-コレステロールを下げる薬にはスタチン系がある。
<フィブラート系の種類>
●ベザフィブラート(ベザトール®)
腎排泄型。
徐放性製剤なので、粉砕・かみ砕いて服用してはいけない。
血清クレアチニン値が2.0mg/dL以上の患者には禁忌。
●フェノフィブラート(トライコア®/リピディル®)
腎排泄型。核内受容体PPARαを活性化。
尿酸排泄作用もあり、尿酸値を低下させる。
肝障害、中等度以上の腎機能障害、胆のう疾患がある人には禁忌。
●ペマフィブラート(パルモディア®)
日本で創薬され、フィブラート系として国内では約20年ぶりの新薬。日本では2018年6月から発売。
核内受容体PPARαを活性化。
特徴的なのが胆汁排泄型であること。
重篤な肝障害、中等度以上の腎機能障害、胆石のある人、シクロスポリン、リファンピシンを併用している人には禁忌。
胆汁排泄型なのに中等度以上の腎機能障害では禁忌なのは、既存のフィブラート系による横紋筋融解症のリスクを踏まえて、同様の注意喚起を行うことが妥当であると判断されたからのようです。
<EPA製剤の種類>
●イコサペント酸エチル(エパデール®)
①血清脂質低下作用(中性脂肪を15~20%、総コレステロールを3~6%減少との報告あり)
②血小板凝集抑制作用
③動脈の弾力性保持作用
がある。
●オメガ‐3脂肪酸エチル粒状カプセル(ロトリガ®)
主にEPAとDHAを含んだ製剤。
EPAやDHAは主に青魚に多く含まれている不飽和脂肪酸で、これを高純度に精製し薬にしたのがロトリガ®。
エパデール®もロトリガ®も空腹時では吸収が悪いため、必ず食後に服用。
中性脂肪の管理目標値
「中性脂肪を多く含むリポ蛋白(TGリッチリポ蛋白)の増加」、「small dense LDL 粒子増加」、「HDL-コレステロール減少」を有する脂質異常症は、動脈硬化のリスクが高い。
このことから、中性脂肪の目標値は日本では150mg/dL未満に設定されている。
参考:
急性膵炎ガイドライン2015
J Clin Endocrinol. 2012 Sep;97(9):2969-89.
J Clin Gastroenterol. 2014 Mar;48(3):195-203.
パルモディア®のIF
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