肝硬変では腹水(お腹に水がたまる)がよく見られ、利尿薬を使用することでこの症状を改善する治療が行われる。
利尿薬とは、利尿作用で尿量を増やし体の外に水分を出す薬のこと。
腹水によく使用される利尿薬には
①ループ利尿薬のフロセミド(ラシックス®)
②抗アルドステロン薬のスピロノラクトン(アルダクトン®)
があり、それぞれ特徴が異なる。
詳しい作用機序は以下を参考にしていただきたい。
ループ利尿薬のフロセミドは、腎尿細管のヘンレループ上行脚にあるNa-K-2CL共輸送体を阻害し、尿中にNaと水とKを出す作用がある。
抗アルドステロン薬のスピロノラクトンは、その名の通りアルドステロンの働きを阻害することで効果を発揮する薬剤。
アルドステロンは腎臓の遠位尿細管にあるNa-K交換部位に作用し、Kを尿中に排出し、Naを体の中にためる。
スピロノラクトンはこれを阻害するので、結果Kを体に留め、Naと水を尿中に出すことで効果が出る。
水とNaとKの動きに注目すると以下のようになる。
フロセミド:水・Na・Kを尿中に出す。
スピロノラクトン:水・Naを尿中に出すが、Kを体に留める。
Kの移動の方向が異なることが大きなポイントである。
さて、最初に肝硬変では腹水がよく見られると書いたが、それはアルドステロンの分泌が亢進しているためである。
そのため、抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンが第一選択薬となる。
しかし利尿作用はそこまで強くなく、スピロノラクトンで改善されない場合は利尿効果がより強いフロセミドを併用することが多い。
併用する場合のコツは、
スピロノラクトン:フロセミド=2.5:1の割合。
例えば
スピロノラクトン錠25mgとフロセミド錠10mgの割合が良いとされる。
その理由は、
スピロノラクトンの副作用に高K血症が、フロセミドの副作用に低K血症があるのだが、この比率がお互いにKの動きを相殺し、K値を安定させるそうなのだ。
この比率はアメリカ肝臓学会 AASLD のガイドラインでも同じとのこと。ただし、K値を見ながら微調整も行われる(こちらを参考にました)。
肝硬変の腹水に
●スピロノラクトンとフロセミドの併用はよくある。
●比率は2.5:1くらいにするとK値の影響が少ない。
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