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電解質

ロケルマ、ケイキサレート、カリメート、アーガメイト。違いと特徴

高K血症とは

慢性腎不全では腎機能の低下によりカリウム(K)排泄が低下し、血清K値が高くなりやすい。
また、ある種の薬剤(ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンなど)によりK値は高くなることがある。

血清K値が5.5mEq/Lを超えた状態を一般には高K血症といい、筋力の低下、四肢や唇のしびれ、不整脈などが出る場合がある。あまりにも数値が高いと心停止を起こすため、注意が必要である。

高K血症の治療にはこれまでは陽イオン交換樹脂が使われてきたが、2020年5月に国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物であるロケルマ®が発売された。

 

陽イオン交換樹脂

陽イオン交換樹脂には以下の2種類ある。
Ca型陽イオン交換樹脂:ポリスチレンスルホン酸カルシウム
Na型陽イオン交換樹脂:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム

どちらの陽イオン交換樹脂も消化・吸収されることなく、腸管を通過するにしたがって腸液に含まれるK+と、陽イオン交換樹脂内のCa2+もしくはNa+とが交換され、糞便中に排泄される。結果、腸管内のカリウムは体外へ除去され血中のK値が下がる。

<各製剤の1g当たりのカリウム交換容量>
ポリスチレンスルホン酸カルシウム:
試験管の試験では、1g当たり1.36〜1.82mEqのカリウムと交換。

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:
試験管の試験では、1g当たり2.81〜3.45mEqのカリウムと交換。
なお、生体内ではアンモニア、マグネシウム、有機酸、燐脂蛋白などの他の陽イオンとも結合するため、1g当たり約1mEqのカリウムと交換する。

<Al、Mg、Caを含む製剤には注意>
Al、Mg、Caを含有する薬剤と併用すると、カリウムではなくこれらの陽イオンと交換される可能性があるため、陽イオン交換樹脂の効果が減弱するおそれがある。
これらの薬剤と併用する場合は、一般的には1~2時間程度あけて投与するとよい(参考:今日の治療指針 562-564 2013「慢性腎臓病(保存期腎不全)」)

注:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤のケイキサレート®を販売する鳥居薬品の製品Q&Aでは、「併用による影響を検討したデータはありません。」となっており、どの程度効果が落ちるかは不明である。

 

ポリスチレンスルホン酸カルシウムの製品
カリメート®ドライシロップ92.59%(1包5.4g)
<用法用量>
通常成人1日3~6包(ポリスチレンスルホン酸カルシウムとして1日15~30g)、分2~3、1回量を水30~50mLに懸濁して服用。

<特徴>
カリメート®散の改良型。懸濁時に沈殿しにくく、服用時のザラツキ感の軽減によりアドヒアランスの向上が期待できる。

カリメート®散は注腸の適応があるが、カリメート®ドライシロップに注腸の適応なし。
ドライシロップは、「経口投与する甘味のある製剤」であり 、「経口専用の剤形」であるため(日局の製剤総則)注腸の適応がない。

便秘の頻度が5%以上。

 

ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20%分包25g「三和」
(旧販売名:アーガメイト20%ゼリー25g)
<用法用量>
通常成人1日3~6個(ポリスチレンスルホン酸カルシウムとして1日15~30g)、分2~3で服用。メーカに頼めば、服用しやすくするためのフレーバーがもらえる。

<特徴>
ジェネリック医薬品。ゼリーにすることで、カリメート®散の服用時のザラザラ感を抑えた。ゼリー1個の水分は約15mL。カリメート®(散、ドライシロップ)1回服用時の水分(30~50mL)に比べ少なくてすみ、水分制限のある透析患者には有用

ただし、かさばるため持ち運びには不便。

便秘の頻度は5%以上(還元麦芽糖水アメを含むので、カリメート®ドライシロップよりも便秘が起こりにくいかも??)。

 

 

ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの製品
ケイキサレート®ドライシロップ 76%(1包3.27g)
<用法用量>
通常、成人1日量12包(ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとして1日量30g)、分2〜3、1回量を水50〜150mLに懸濁し服用。

<特徴>
ケイキサレート®ドライシロップは、ケイキサレート®散の服用感の向上を目的に開発された。本剤2包(3.27g×2)はケイキサレート®散1包(5g)に相当する。

ケイキサレート®散は注腸への適応があるが、ケイキサレート®ドライシロップに注腸への適応はない。

便秘の頻度は5%未満。

 

陽イオン交換樹脂の注腸
インスリンとグルコースの静注や、血液透析をするほどではないが、そこそこ緊急の治療を要する高カリウム血症の時に使用される。

カリメート®散、ケイキサレート®散も腸管内で30~60分薬液を滞留させる必要がある。60分を超えて排泄されないようであれば、浣腸等を用いて排泄させる。

 

 

非ポリマー無機陽イオン交換化合物

ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(ロケルマ®)
<特徴>
ロケルマ®は、体内に吸収されない均一な微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物である。
消化管内腔において、カルシウムやマグネシウムのような他のイオンの存在下でも、カリウムイオンを選択的に捕捉して糞中に排泄させる。
結果、消化管内腔におけるカリウム濃度が低下し、血清カリウム濃度を低下させる。

なお、透析患者と非透析患者では用法が異なることに要注意。

ロケルマ®患者用資材はこちらから入手できる。

服用方法は、薬剤を約45mLの水に十分に懸濁し、沈殿する前に服用する。沈殿した場合は、再び懸濁して服用すること。

<用法用量>
通常、成人には開始用量として1回10g、1日3回、2日間服用。
1日3回服用は最長3日間まで可能だが、その際のK値の確認は必須。
以後は、1回5g、1日1回服用。最高用量は1日1回15gまでとする。

血液透析施行中の場合には、通常、1回5gを非透析日に1日1回服用。
最高用量は1日1回15gまで。

<注意点>
投与開始時と投与量調整時は、1週間後を目安に血清K値を測定すること。以後は、患者の状態等に応じて、定期的に測定すること。
増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けること。

K値が3.5mEq/L未満に低下→本剤の減量又は中止を考慮。
K値が3.0mEq/L未満に低下→本剤を中止。

ロケルマ®は水素イオンを吸着して一時的に胃内pHを上昇させる可能性がある。
そのため、下記薬剤の作用を減弱する可能性があるので同時服用は避けること。
これらの薬剤が必要な場合には、ロケルマ®の少なくとも2時間前又は2時間後に服用すること。

<抗HIV薬>
アタザナビル硫酸塩
ネルフィナビルメシル酸塩
リルピビリン塩酸塩 等

<アゾール系抗真菌剤>
イトラコナゾール
フルコナゾール
ボリコナゾール 等

<チロシンキナーゼ阻害剤>
エルロチニブ塩酸塩
ダサチニブ水和物
ニロチニブ塩酸塩水和物 等

なお、陽イオン交換樹脂と異なりAl、Ca、Mg製剤の制限はない。

<副作用>
便秘の頻度は10%未満。

 

参考:各薬剤の添付文書、IF

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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