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脳神経・睡眠・精神系

睡眠薬の基本情報、種類、使い分け。依存性は?癖になる?やめられない?認知症になる?

主な睡眠薬の種類

不眠治療に使われる主な薬剤には、以下のものがある。

①ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬

・ベンゾジアゼピン系(ジアゼピン骨格あり)
ベンゾジアゼピン系(ジアゼピン骨格なし)

☆上記の分類はジアゼピン骨格の有無でされるが、どちらもベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用する。

☆なお、今はBZD受容体とは呼ばずω(オメガ)受容体と呼ぶこともあるようだ。

☆ω受容体にはω1とω2がある。

ベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用と関連するω2受容体には作用せず、ω1受容体に選択的に作用するので筋弛緩作用が少なく、高齢者でも使用しやすい

・作用機序は、BZD受容体に作用→GABAA受容体活性化→Clチャネル活性化・Clが細胞内に流入→過分極→鎮静

 

②メラトニン受容体作動薬

・新規作用機序の薬としてラメルテオンが2010年7月に発売。
・筋弛緩作用・依存性はなく安全性は高いが効果は弱い。
・睡眠覚醒リズムに関与するメラトニン受容体に作用し、睡眠を誘発する。

 

③オレキシン受容体拮抗薬

・新規作用機序の薬としてスボレキサントが2014年11月に、レンボレキサントが2020年7月に発売。
・オレキシン(覚醒を促進する物質である)が、オレキシン受容体へ結合するのを阻害することで脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させる。

 

④催眠・鎮静系抗うつ薬、少量の抗精神病薬

・上記①~③の薬剤が無効だったり、不安が強い患者に④の薬剤が使用されることがある。
・ただし、不眠の適応はない。

それぞれどのような薬剤があるかというと…

①ベンゾジアゼピン受容体作動薬
・ベンゾジアゼピン系
 トリアゾラム(ハルシオン®)
 ブロチゾラム(レンドルミン®)
 フルニトラゼパム(サイレース®)など

ベンゾジアゼピン系
 ゾルピデム(マイスリー®)
 ゾピクロン(アモバン®)
 エスゾピクロン(ルネスタ®)

<メモ>
・上記の薬剤のうち、ゾピクロンとエスゾピクロンは投与制限がないが、その他の薬剤には投与制限(30日)がある(2021年11月時点)。
フルニトラゼパムは強い睡眠作用があり、作用時間もやや長い。夜間のトイレで起きる際の転倒リスクの説明は大事。
・ゾピクロン、エスゾピクロンは服用後、口の中の苦味がでることがある。
・トリアゾラムは、一時的に起床して仕事等を行った場合などにおいて健忘があらわれたとの報告がある(一過性健忘)。

 

②メラトニン受容体作動薬
ラメルテオン(ロゼレム®)
メラトニン(メラトベル®)

<メモ>
・両薬剤とも食直後の投与は避けること。空腹時と比較して血中濃度が下がるため。
・ロゼレム®はフルボキサミンと併用禁忌
・メラトベル®は「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」に適応があり、成人には使えない(2021年11月時点)。

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③オレキシン受容体拮抗薬
スボレキサント(ベルソムラ®)
レンボレキサント(デエビゴ®)

<メモ>
・スボレキサントは中途覚醒・早期覚醒に効果あり。
・レンボレキサントは効果発現が速く、入眠困難にも効果が期待される。
・悪夢の副作用報告がある。
・両薬剤とも、食直後の投与は避けること。空腹時と比較して血中濃度が下がるため。
・併用薬の注意点がスボレキサントとレンボレキサントではやや異なる。

ベルソムラ®
高齢者の上限量あり(通常20mg、高齢者は15mg)。
CYP3Aを「強く阻害」する薬剤とは併用禁忌
CYP3Aを「中程度阻害する」薬剤とは併用注意、減量考慮。

 

デエビゴ®
高齢者の上限量設定なし、成人量と同じ(5~10mg)。
CYP3Aを「中程度強く阻害」する薬剤とは併用注意、減量する。
禁忌は重度の肝機能障害

 

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④催眠・鎮静系抗うつ薬、少量の抗精神病薬
トラゾドン
ミルタザピン
ミアンセリン
クエチアピン
レボメプロマジン など

 

睡眠薬の使い分け

不眠のタイプから選択する。以下は参考までに。

入眠困難
●超短時間作用型(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)
●短時間作用型(ブロチゾラム)
●ラメルテオン
●レンボレキサント

 

中途覚醒・早期覚醒
●中時間作用型(フルニトラゼパム)
●スボレキサント

 

BZD受容体作動薬の効果がイマイチ
●睡眠作用の強い抗うつ薬(ミアンセリン、ミルタザピン、トラゾドン)
●少量の抗精神病薬(クエチアピン、レボメプロマジン)

 

なお、高齢者の不眠には
ベンゾジアゼピン系(ゾルピデム、エスゾピクロンなど)
・ラメルテオン(ロゼレム®)
・スボレキサント(ベルソムラ®)
が推奨される。

睡眠薬の依存性について

睡眠薬を飲み始めると依存症になってやめられなくなると心配する患者さんは多いが、現在使われている睡眠薬の多くは適正な量で使用していれば、強い依存性はないとされる

しかし、高用量を長期で服用すると依存のリスクを高める可能性があるため、自己判断で量を増やさないように患者さんに指導することが大切だ。

 

睡眠薬で認知症になるか?

2016年発表の「Benzodiazepine use and risk of incident dementia or cognitive decline: prospective population based study」によると、「ベンゾジアゼピン系の使用と認知症の間に直接の因果関係はないことが示唆される」となっており、

2019年発表の「Risk of Dementia in Long-Term Benzodiazepine Users: Evidence from a Meta-Analysis of Observational Studies」では「ベンゾジアゼピン系が高齢者の認知症のリスクを増加させる」となっている。

睡眠薬(ここではベンゾジアゼピン系を指すことにする)で必ず認知症になる!とは言えないが、もしかしたらわずかばかりに影響はあるかも?、という感じのようだ。

そもそも認知症(ここではアルツハイマー型認知症を指すことにする)はすぐに発症するわけではなく長い時間かけて形成される。

また、認知症の発症前には、抑うつなどの精神症状(前駆症状)を訴えるケースがあり、この段階で睡眠薬が処方されることがある。すると、将来認知症が発症した場合、見かけ上その薬が認知症を引き起こしたかのように見えてしまうこともあるのだ。

本当の要因は何なのか。それを断定するのは難しいのかもしれない。

なお、認知症のリスクを心配される方にはベンゾジアゼピン系ではない
ロゼレム®
ベルソムラ®
デエビゴ®
を提案するも1つの方法と考えられる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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