2021年5月に発売されたジクトル®テープは、世界で初めて承認されたNSAIDs(成分:ジクロフェナクナトリウム)の経皮吸収型持続性がん疼痛治療剤である。
同じ成分ではボルタレン®テープがあるが、1枚当たりの含有量、適応症などがジクトル®テープと異なる。
ジクトル®テープ
<成分>
ジクロフェナクナトリウム
<適応>
各種がんにおける鎮痛
<用法用量>
通常、成人に対し1日1回2枚を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部、大腿部に貼付し、1日毎(約24時間ごと)に貼り替えて用いる。
症状や状態により1日3枚に増量できる。
<特徴>
ボルタレン®錠/テープで有名なジクロフェナクナトリウムが、新薬ジクトル®テープとして「世界初・がん疼痛に適応のあるNSAIDs貼付剤」で発売された。
1日1回の貼付で、24時間安定した血中濃度を維持し、痛みを持続的に抑える効果が期待できる。
血中ジクロフェナク濃度は、投与7回目以降に定常状態に到達する。
ジクトル®テープ1日1回1枚を14日間反復投与したときの血中ジクロフェナク濃度推移は以下の通り(IFより)。
経口のジクロフェナク錠25mgの内服では定常状態には達しないが(半減期が約1.2時間と短いため)、ジクトル®テープは定常状態に達することがポイントだ。
一般に、定常状態のあり・なしは下の計算式で判断できる。
ボルタレン®錠25mg、8時間おきに1錠服用、半減期1.2時間とすると
8/1.2=6.6 > 4
なので、定常状態なし と判断できる。
ジクトル®テープは、内服が困難な患者にも投与が可能であり、悪心や嘔吐、嚥下困難、消化管閉塞などがみられるがん疼痛患者や、抗がん剤の有害事象である悪心・嘔吐により嚥下できないがん疼痛患者において有用。
また、食事による投与タイミングの制限がないことで服薬アドヒアランス向上も期待できる。
ジクトル®テープはボルタレン®錠何錠に相当?
ジクトル®テープのIFによると、
①ジクトル®テープの用量は、既承認のジクロフェナクナトリウム錠25mg(以下、既承認経口剤)の薬物動態パラメータをもとに、既承認経口剤の1日最大承認用量100mg(=4錠)の曝露量を超えないように設定されており、ジクトル®テープは1日最大225mg(=3枚)まで投与可能となっている。
②また、ジクトル®テープ225mg(=3枚)を1日1回反復投与した際のAUCは、既承認経口剤の1日用量100mg(=4錠)を反復投与した際のAUCと同程度と推測された。
つまり、
ジクトル®テープ225mg(=3枚)/日
≒ボルタレン®錠25mg、1日量4錠
と考えられる。
☞ロコア®テープのように、貼付剤だけど体内曝露量が内服薬と同程度の製剤。

ボルタレン®テープとジクトル®テープの比較
ボルタレン®テープ:15mg/30mg
ジクトル®テープ:75mg
☞含有量が全く異なることに注意!
<1日の使用回数>
両薬剤とも1日1回。
<適応>
ボルタレン®テープ:
下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎 (テニス肘等)、筋肉痛 (筋・筋膜性腰痛症等)、外傷後の腫脹・疼痛
ジクトル®テープ:
各種がんにおける鎮痛
おまけ
個人的感想だが、唾を飲み込むだけで涙が出るくらい喉が痛く、食事なんかとれない時にボルタレン®錠を内服したことがある。
結果、その時は内服後1時間で最大効果、持続時間は3時間しかもたなかった。
痛みがあるのに、効果が持続せず、痛みに悩まされるということは非常につらいものである。
ジクトル®テープは安定した血中濃度が得られるので、がん疼痛のよい治療薬として期待したい。
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