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抗がん剤

ティーエスワン~胃がん手術後の治療効果は?いつまで服用する?~

絶対に覚えないといけない抗がん剤シリーズ1.ティーエスワン

一度は調剤をするだろう抗がん剤の1つにティーエスワン®があると思う。
今回は基本情報をおさらいしたい。詳細はティーエスワン®総合情報サイトで確認を。

<成分>
テガフールギメラシルオテラシルカリウムの3つが配合されている。

このうち抗腫瘍効果を発揮するのが、フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグであるテガフール。もっと言うと、5-FUの活性代謝物が抗腫瘍効果を発揮する。

ギメラシルは5-FUの分解経路における律速酵素(ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ)の可逆的な拮抗阻害剤。この酵素を阻害すると、血中及び腫瘍組織内5-FUが高濃度で長時間持続し、抗腫瘍効果が増強される(作用増強)

オテラシルカリウムは、経口投与されると消化管に高濃度に分布し、5-FUのリン酸化酵素を可逆的に拮抗阻害することで消化器毒性(下痢、悪心・嘔吐など)を軽減する(副作用軽減)。 

細かいことは覚えなくても、主成分作用増強剤副作用軽減剤の3つの成分が配合されていることだけは覚えよう。

 

<適応>
胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌
胃がんの術後(単独)、胃がんの再発・転移(シスプラチンと併用)などで処方されることが多いが、実はそれ以外のがんにも使用可能。

 

<用法用量>
体重ではなく体表面積に合せて決定する。詳細は添付文書で確認を。

非小細胞肺癌以外の疾患
本剤を朝食後及び夕食後の1日2回、28日間連日経口投与し、その後14日間休薬する。
これを1クールとして投与を繰り返す。

非小細胞肺癌(シスプラチンと併用時)
本剤を21日間連日経口投与、シスプラチン60mg/m2を第8日目に投与し、その後、14日間を休薬。
これを1クールとして投与を繰り返す。

☞休薬期間があることが最大のポイント。多くの処方は「28日間連続服用→14日間休薬」となっているはず。処方せんに「14日間休薬」などと記載されてないことも多いので、患者さんがDrから説明を受けているかどうか必ず確認。
初回指導は特に丁寧に!必要な人には定期的なフォローを

 

<腎機能低下時の投与量に注意>
配合されている成分のうち、ギメラシルは腎排泄型薬物。
腎機能が低下すると
→ギメラシルの血中濃度上昇
→5-FUの分解が過度に抑制
→5-FUの血中濃度が高濃度に維持
→骨髄抑制などの副作用が強く出る恐れがある。
そのため腎機能低下時の投与量は要注意!

添付文書には記載がないが、TS-1適正使用ガイドには腎機能に応じた減量の記載がある。

 

<注意すべき自覚的副作用>
悪心・嘔吐:

投与開始早期から発現することが多い。必要であればメトクロプラミド、ドンペリドンなどの制吐剤を併用。嘔吐時には脱水に注意。

下痢:
投与開始1~4週目に発現が多い。脱水に注意。

口内炎:
投与開始2〜3週目に多く発現。治療継続の意欲低下につながるため侮れない。

食用不振:
投与開始後1~2週目の投与早期から発現。

味覚障害:
味覚変化、味覚異常、味覚減退、味覚消失などが報告。休薬あるいは投与中止によりほとんどの症例で回復・軽快する。

色素沈着:
投与開始2~3週目頃より顔面、爪、手、足などに色素沈着が発現することがある。投与中止で多くの症例でやがて軽快していく。

発疹(皮疹):
投与開始直後より見られ、2週目で発現が多く見られる。多くは投与中止や対症治療により改善する。

流涙:
意外?な副作用。
半数の症例が投与開始から3ケ月以内に発現。軽度の例では投与中止により軽快するが、涙道狭窄の見られる重度の症例では眼科的処置が必要。

ティーエスワン®は副作用が多く、服用を続けるのが困難なこともある。
「2週間の休薬」の狙いは、この間に傷ついた細胞を回復させ副作用を軽くし、服用を続けられるようにしよう、というものである。

なお、「隔日服用」という方法もある。これにより4週服用・2週休薬よりも、隔日服用の方が消化器系の副作用が少なく、コンプライアンスも向上するという報告もある(Pub Med. ID:23948997)。

ただし、隔日服用は保険適応上、適宜増減の範囲として認められるかはメーカーは答えられないとのこと(実際には隔日指示の処方はたまに見かけるが)。

 

胃がんの術後ではどのくらいの期間飲むのか?

胃癌治療ガイドラインによると、ステージ2/3胃癌の術後はティーエスワン®が標準治療であり、術後1年間の治療期間が推奨されている。

治療効果は以下の通りJ Clin Oncol. 2011 Nov 20;29(33):4387-93.)。

<5年生存率>
●術後化学療法あり:71.7%
〇なし:61.1%
(ハザード比0.669;95%CI、0.540~0.828)

<5年後の無再発生存率>
●術後化学療法あり:65.4%
〇なし:53.1%
(ハザード比0.653;95%CI、0.537~0.793)

5年後の生存率を約10%上げる効果がある!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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