血糖の指標について
空腹時血糖値:
採血した瞬間の血液中に含まれる糖の量。
HbA1c:
赤血球寿命が約120日なので、HbA1cは過去1~2ヵ月の血糖を反映する指標となる。
欠点として、血糖状態の急な変化を把握しにくいこと、病態によってはHbA1cの数値があてにならないことがある。
<本来よりもHbA1cが高くなる場合(偽高値)>
赤血球の寿命が延長する状態
●鉄欠乏性貧血:
鉄欠乏の状態でヘモグロビンが減少すると、代償性に赤血球の平均寿命が延長する。
<本来よりもHbA1cが低くなる場合(偽低値)>
赤血球寿命が短縮している状態
●腎不全による腎性貧血
赤血球寿命が短縮する状態
●溶血性貧血
●肝硬変(脾機能亢進)
●鉄剤投与中:
鉄剤を投与すると幼弱赤血球が増加し、赤血球の平均寿命が短縮する。
●エリスロポエチン製剤の投与中:
古い赤血球が新しい赤血球に入れ替わるため、赤血球の寿命が短くなる。
グリコアルブミン(GA):
グリコアルブミンはグルコースとアルブミンが結合した糖化蛋白質。
アルブミンの半減期が17日前後であるため、過去2週間程度の血糖コントロール状態を反映する指標となる。
その数値はHbA1c値の約3倍に相当する。
例:HbA1cが6.0ならGAは約18.0。
特徴として、赤血球寿命やESA投与の影響を受けないことから、HbA1cの代替指標と使用されることがある。
血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012によれば、血液透析患者ではHbA1cに代わる血糖コントロール指標として推奨されている。
同ガイドによる目標血糖コントロールは
●随時血糖値(透析前血糖値;食後約2時間血糖値):180∼200 mg/dL未満
●GA値:20.0%未満。ただし、心血管イベントの既往歴を有し、低血糖傾向のある対象者は24.0%未満
が暫定的目標値として提案されている。
ただし、ネフローゼ症候群、肝硬変、甲状腺機能異常症などのアルブミン代謝異常を伴う疾患では影響を受けるため、この場合はGAは正しい血糖コントロール状態を示さない。
そのため、「透析導入前の糖尿病性腎症患者」では多くがネフローゼ領域の高度蛋白尿を伴っており、血中アルブミンの半減期が短縮するためGAは低値となる。
「透析導入前の糖尿病性腎症患者」では、HbA1c、GAとも血糖値を反映する指標として用いることは、適切と言えない。
1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG):
尿糖排泄量の増減に非常に敏感に反応し、過去数日間の血糖の平均値の指標となる。
食後高血糖、血糖変動が評価できる。
1,5-AGは構造がグルコースに似た糖アルコールで、主に食物中から摂取される。
腎臓の糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収され血中1,5-AG濃度は一定に保持されているが、再吸収はグルコースにより競合的に阻害される。
そのため、血糖値が高く尿糖が多く排出されている患者では、1,5-AGの再吸収が阻害され、尿中に1,5-AGが多く排泄される。結果、血清1,5-AGは低値を示す。
食後の血糖変動と1,5-AGが良好な相関を示すため、食後の血糖値が一定以上に高くなり、将来、糖尿病に移行する可能性が高いとされる耐糖能異常(境界型)でのモニタリングに有効である。
<1,5-AG値が低下する場合>
●腎性糖尿やステロイド投与:尿糖排泄閾値が低下し、正常血糖でも尿糖が多量に出るため、1,5-AG値が低下することがある。
●妊娠後期、慢性腎不全、長期高カロリー輸液、重症肝硬変などでも低値となる。
<1,5-AG値が上昇する場合>
漢方薬の人参養栄湯や加味帰脾湯、葛根湯、小柴胡湯、大柴胡湯などには1,5-AGが多量に含まれているため、糖尿病のコントロールとは無関係に高値となる場合がある。
参考:
福岡県薬剤師会 質疑応答
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/120.html
https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_28/ch02.html
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/108.html
https://dm-net.co.jp/ga-file/kensa/ga01.php#03
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/52/5/52_5_341/_pdf
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/171.html
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