超速効型インスリン製剤は食直前が基本だが…
超速効型型インスリン製剤の種類はこれまでは以下の3種類があり、全て食直前投与である。
ノボラピッド®(インスリン アスパルト):食直前
ヒューマログ®(インスリン リスプロ):食直前(15分以内)
アピドラ®(インスリン グルリジン):食直前(15分以内)。日本では適応はないが、米国ではアピドラの食直後投与の用法が承認されている。
☞添付文書にはノボラピッド®は「食直前」としか記載されていないが、ヒューマログ®とアピドラ®は「食直前(15分以内)」という記載がある。
<海外臨床試験>
アピドラ®の1型糖尿病患者に対するインスリン グラルギン併用下、
●アピドラ®食直前投与(食事開始0~15分前)
●アピドラ®食直後投与(食事終了直後または食事開始後20分のいずれか早い時点)
●速効型インスリン食前投与(食事開始30~45分前)
の比較試験が行われた。
結果、グリコヘモグロビン値の変化量や有害事象、重篤な低血糖の出現などを比較した検討では、3群間に注目すべき差は認めなかった。
しかし、ノボラピッド®、ヒューマログ®でさえ生理的なインスリン分泌パターンと比
べて遅いことがジレンマだった。
そこで、これら既存の超速効型インスリンアナログ製剤に添加剤を配合し、より速やかな血中への吸収を実現させた製剤が誕生した。
それが、フィアスプ®と、ルムジェブ®である。
フィアスプ®とルムジェブ®の基本情報
フィアスプ®(インスリン アスパルト)
<特徴>
2020年2月発売。
ニコチン酸アミドを添加することにより、インスリン アスパルトの吸収を速めた製剤。
ニコチン酸アミドによる血管の弛緩や血流の増加、アスパルトの単量体への解離の促進が、血中への速やかな吸収に寄与している。
最高血中濃度到達時間はノボラピッド®よりも15分短縮。
<用法>
食事開始時(食事開始前の2分以内) or 必要な場合は食事開始後(食事開始から20分以内)。
持続型インスリン製剤と併用する。
ルムジェブ®(インスリン リスプロ)
<特徴>
2020年6月発売。
添加剤としてトレプロスチニルとクエン酸を加え、インスリン リスプロの吸収を速くした製剤。
トレプロスチニルによって血管が拡張し、クエン酸によって血管透過性が亢進することで、毛細血管への吸収が促進される。
最高血中濃度到達時間はヒューマログ®より12分短縮。
<用法>
食事開始時(食事開始前の2分以内) or 必要な場合は食事開始後(食事開始から20分以内)。
持続型インスリン製剤との併用が可能。
☞この2つは超超速効型と呼ばれるらしい。
☞「フィアスプ®は持続型インスリン製剤と併用」、ルムジェブ®は「持続型インスリン製剤との併用が可能」で、適応が異なることに要注意!
☞フィアスプ®とルムジェブ®の最大の特徴は、既存の超速効型インスリン製剤よりも、さらに生理的な食事時のインスリン分泌パターンに近づいたことである。
なお、フィアスプ®とルムジェブ®の使用タイミングは既存の製剤と大きく異なるので要注意。
フィアスプ®:食事開始時(食事開始前の2分以内) or 必要な場合は食事開始後(食事開始から20分以内)。
ルムジェブ®:食事開始時(食事開始前の2分以内) or 必要な場合は食事開始後(食事開始から20分以内)。
フィアスプ®とルムジェブ®は食事開始後にも使用できることから、「食直前だとどうしても打ち忘れる人」や、「食事内容に応じてインスリン量を調節する必要がある人」には向いているかもしれない。
両者の使い分けについては、持続型インスリン製剤との併用が必須か、そうではないか、くらいだろうか?新しい情報が入り次第、更新します。
インスリン製剤の基礎の基礎
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモン。
インスリンには食後に大量に分泌される「追加分泌」と、食事に関係なく常に少量が出ている「基礎分泌」がある。
追加分泌で食後高血糖を抑え、基礎分泌により空腹時血糖の上昇を抑える。
この2つのインスリンが正常に分泌されていると、血糖値がしっかりとコントロールされる。
しかし、
1型糖尿病の人は、インスリンそのものを分泌することができない。
2型糖尿病の人は、追加分泌と基礎分泌が低下していることがある。
インスリン製剤は、この「追加分泌」と「基礎分泌」を補うことで、血糖値をコントロールするために使用される。
インスリン製剤の分類:
◇追加分泌を補うもの(超速効型インスリン、速効型インスリン)
◇基礎分泌を補うもの(持続型インスリン、中間型インスリン)
◇追加分泌と基礎分泌を同時に補うもの(混合型インスリン)
症状に合わせて適する薬が選ばれる。
インスリンのデメリット:
インスリンは「上手に使用されないと体重が増加」していくことがある。
これは、
◆インスリンには「糖を体に取り込み、蓄積する作用」や、「脂肪の合成を促進する作用」がある。
◆インスリンが効きすぎて低血糖を起こし、低血糖の怖さから食事量が増えてしまう。
などが原因だ。どちらの原因も、インスリンが過剰に投与されているとその傾向が強く出るようだ。
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