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血圧の薬、高血圧

偽アルドステロン症と甘草の摂取量の関係は?発症メカニズムは?

アルドステロンとは

アルドステロンは主に副腎で産生・分泌されるホルモン。
腎臓の遠位尿細管に発現しているミネラルコルチコイド受容体(MR)に作用してナトリウムの再吸収・カリウムの排泄を促し、血圧の維持・上昇に関わる。
尿細管でナトリウムが再吸収されるとき、水も一緒に体の中に引き込まれる。
結果、循環血液量が増加し、心拍出量と末梢血管抵抗が増加することで血圧が上昇する、というメカニズムだ。

アルドステロンの産生・分泌は、主にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系により調節され、一部は副腎皮質刺激ホルモン、カリウムなどによって調節される。

なお、アルドステロンは心肥大や心不全を悪化させてしまう作用があることも知られている。

 

原発性アルドステロン症

アルドステロンが過剰分泌される病気で、高血圧となる。
高血圧患者に占める割合は5%程度。
副腎腫瘍が原因→手術治療。
左右両側副腎(過形成)が原因→手術治療の対象とならず、アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)で治療。

注意!
アルダクトン®:「原発性アルドステロン症の診断及び症状の改善」に適応。
セララ®:アルドステロン症に適応なし。

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偽アルドステロン症とは

アルドステロンが増加していないにも関わらず(むしろ血漿アルドステロン濃度が低下している)、高血圧、むくみ、カリウム値低下などが起きる症状を「偽アルドステロン症」といい、グリチルリチン酸を含む医薬品によって引き起こされる場合がある。
グリチルリチン酸は、甘草(多くの漢方薬に含有されている)、グリチロン®配合錠などに入っている。

<メカニズム>
グリチルリチン酸が、コルチゾールをコルチゾンに変換する酵素(11β-HSD2)を阻害し、増加したコルチゾールが尿細管のミネラルコルチコイド受容体(MR)に作用する。
その結果、アルドステロンと同じくミネラルコルチコイド作用が発揮され、ナトリウムの再吸収・カリウム排泄が促進される。

注意:コルチゾールはグルココルチコイドに分類され、グルココルチコイド受容体を刺激するが、ミネラルコルチコイド受容体を刺激する作用も持っている。

<主な症状>
血圧上昇、低K血症による四肢の脱力(手足の力が抜けたり弱くなったりする)
などがあり、これに次いで
筋肉痛、体のだるさ、手足のしびれ、こむら返り、頭痛、顔や手足のむくみ、のどの渇き、食欲の低下、動悸、吐き気などがある。

症状が進むと、まれに
意識がなくなる、体を動かすと息苦しくなる、歩いたり立ったりできなくなる、赤褐色の尿が出る、ことがある。

<治療方法>
薬剤性の偽アルドステロン症の治療としては、原因と思われる医薬品の服用を中止することが第一。
低K血症に対してカリウム製剤を投与することも多いが、尿中へのカリウム排泄を増すばかりで、あまり効果がないとされる。この場合、抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンやエプレレノンが使用されることもある。

参考:
重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症 平成18年10月 厚生労働省
日本医事新報社 漢方薬による低カリウム血症を補正するにはどうすればいいですか?
偽性アルドステロン症 日本内科学会雑誌 第95巻 第4号 平成18年4月10日
日本内分泌学会 原発性アルドステロン症

 

<発展事項>
偽アルドステロン症のように、血漿アルドステロン濃度が低下しているが、血圧が上昇する病気にはクッシング症候群、リドル症候群がある。

クッシング症候群
コルチゾールが過剰分泌される病気で、ACTH依存性、非依存性とがある。

①ACTH依存性
ⅰ)脳下垂体からのACTHの過剰分泌(クッシング病)
ⅱ)下垂体以外の腫瘍からのACTHの過剰分泌(異所性ACTH症候群)

②ACTH非依存性
 副腎腺腫、副腎がんなどによるコルチゾール過剰分泌

症状として、 満月様顔貌、野牛肩、中心性肥満、皮膚菲薄化、腹部赤色皮膚線条、近位筋の筋力低下などがある。

 

リドル症候群
まれな遺伝性の病気で、腎臓の集合管からカリウムが排泄される一方、大量のナトリウムと水分が体内に保持されることで、高血圧をきたす。
リドル症候群の治療薬はトリアムテレン。スピロノラクトンは無効である。

参考:
難病情報センター クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)
MSDマニュアル クッシング症候群
MSDマニュアル リドル症候群

 

偽アルドステロン症と甘草の摂取量の関係

甘草1g中に含まれるグリチルリチン酸は約40mg。
甘草を1日1~2g服用すると、偽アルドステロン症が発症したという報告がある。
甘草〇g以上から注意!ではなく、甘草を含む漢方薬を服用する場合は、常に注意が必要と考えられる。
なお、甘草の1日服用量が2.5g(グリチルリチン酸 100mg)を超えると低カリウム血症を発現しやすくなるので注意が必要。

参考
漢方製剤による低カリウム血症,偽アルドステロン症 日病薬誌 第43巻9号(1171-1173 ) 2007年
重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症 平成18年10月 厚生労働省

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