ゾルピデム(マイスリー®)
中枢のω受容体(昔でいう、BZD 受容体)には2つのサブタイプが存在し、それぞれω1、ω2受容体と呼ばれる。
ω1受容体:小脳、嗅球、淡蒼球、大脳皮質第4層等に多い
ω2受容体:筋緊張に関与する脊髄や記憶に関与する海馬に多い
これまでのBZD系睡眠薬は一般にω1、ω2受容体に対する選択性が低かったが、ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン構造を有し、中枢のω1受容体に選択的に作用する。
速効性の超短時間型睡眠薬(*)で、選択的な催眠鎮静作用を有し、しかも生理的睡眠パターンに近い睡眠をもたらす。
*tmaxは約0.8時間、t1/2は約2時間
作用持続時間が短いにもかかわらず途中覚醒、早朝覚醒にも効果を示すことが報告されている。翌朝までの持ち越し効果が少なく、長期間服用しても依存性が出にくい。
ラメルテオン(ロゼレム®)
メラトニンは睡眠覚醒リズムに関与するメラトニン受容体1型(MT1受容体)及びメラトニ
ン受容体2型(MT2受容体)に作用し、睡眠を誘発する。
ラメルテオンは、メラトニンMT1及びMT2受容体に対する高い親和性を有するメラトニン受容体アゴニスト。
睡眠・覚醒リズムに働きかけ、鎮静作用や抗不安作用によらない睡眠をもたらす。
なお、食事の影響を受けること、併用禁忌があることに注意。
食事と同時、又は食直後の服用は避けること
理由:食後投与では、空腹時投与に比べラメルテオンの血中濃度が低下することがあるため。
フルボキサミンと併用禁忌
理由:フルボキサミンによる強いCYP1A2阻害作用により、ラメルテオンの最高血中濃度、AUCが顕著に上昇するとの報告あり。併用によりラメルテオンの作用が強くあらわれるおそれがある。
スボレキサント(ベルソムラ®)
覚醒を促進するオレキシンの受容体への結合を阻害する、世界初のオレキシン受容体拮抗薬。
オレキシンの受容体への結合を可逆的に阻害することにより、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発すると考えられている。
投与1週時、1ヵ月時、3ヵ月時の時点において、入眠障害、中途覚醒に対して効果が認めら
れている。
悪夢や異常な夢を見るなどの報告があるので注意が必要。
ラメルテオンと同様に、食事の影響を受けること、併用禁忌があることに注意。
食事と同時、又は食直後の服用は避けること
理由:食後投与では、空腹時投与に比べ投与直後のスボレキサントの血中濃度が低下することがある。
CYP3Aを強く阻害する薬剤(*)と併用禁忌
理由:スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを強く阻害し、スボレキサントの血中濃度を顕著に上昇させるおそれがあるため。
*イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、パキロビッド®、ゾコーバ®など
通常、成人には1日1回20mg、高齢者には1日1回15mgとなっている。
また、CYP3Aを阻害する薬剤 (ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等) と併用する場合は1日1回10mgへの減量を考慮する。
☞高齢者には上限が設定されている。
☞CYP3Aを阻害する薬剤とは要注意。
レンボレキサント(デエビゴ®)
ベルソムラ®と同系統のレンボレキサント(デエビゴ®)が2020年4月に発売。
作用機序はベルソムラ®と同じ。
また、ベルソムラ®と同じ理由で、食事と同時又は食直後の服用は避けること、となっている。
通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。適宜増減が可能だが、1日1回10mgを超えないこと。
☞ベルソムラ®と異なり、高齢者でも成人と同用量が使用可能。
禁忌は「重度の肝機能障害(血中濃度上昇のおそれのため)」。
なお、デエビゴ®はCYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は禁忌ではないが、併用する場合は1日1回2.5mgとすることとなっている(デエビゴの規格は2.5mg、5mg、10mgがある)。
☞ベルソムラ®の禁忌は「CYP3Aを強く阻害する薬剤を投与中」
ベルソムラ®
高齢者の上限量あり。
CYP3Aを強く阻害する薬剤とは併用禁忌。
CYP3Aを中程度阻害する薬剤とは併用注意、10mgへ減量考慮。
食直後の服用で血中濃度低下。
デエビゴ®
高齢者の上限量設定なし、成人量と同じ。
CYP3Aを中程度~強く阻害する薬剤と併用→2.5mgに減量する。
禁忌は重度の肝機能障害。
食直後の服用で血中濃度低下。
患者への説明方法は?
患者への説明の一例ですが
ゾルピデム:脳に作用して眠気を引き起こす薬です。
ラメルテオン:睡眠と覚醒のリズムを整え、寝つきをよくする薬です。
スボレキサント/レンボレキサント:脳を覚醒させる物質の働きを阻害し、眠くさせる薬です。
などはどうでしょうか。
食事の影響をうける睡眠薬は他にもある
参考までに、ドラール®は食事の影響を受けそのバイオアベイラビリティ(BA)は増大することが示唆されています。
処方頻度は減っていますが、処方された場合は寝る直前に服用するよう指導するだけではなく、夕食後~寝るまでの時間がどのくらい空いているのかも確認する必要があるでしょう。
ドラール®は食後すぐに服用・就寝するとBA増大で効きすぎるおそれあり、注意!
<参考>
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