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吐き気止め

ナウゼリンとプリンペラン、妊娠・授乳中に使用できるのはどっち?同じ吐き気止めでも何が違う?

最初に要点

●ドンペリドン(商品名ナウゼリン)、メトクロプラミド(商品名プリンペラン)のどちらもD2受容体遮断薬で、上部消化管とCTZに作用し制吐作用を発揮。
●プリンペランは血液-脳関門(BBB)を通過しやすく、ナウゼリンはBBBを通過しにくい。
●そのため、プリンペランはナウゼリンよりも錐体外路障害・内分泌機能異常に注意が必要(長期投与は避ける)。
ナウゼリンは妊婦には禁忌妊婦にどうしても使用するときは、プリンペラン
授乳中に使用するときはプリンペランよりはナウゼリンが推奨

ナウゼリンとプリンペランは妊娠・授乳中に使用はできますか?

ドンペリドン(商品名ナウゼリン)

妊婦には禁忌ですが、実は動物実験が根拠となっている禁忌です。
●経験的に、胎児に対する先天異常のリスクは高くないと考えられています1)。
●主要な催奇形性リスクはないと思われる、という報告もあります2)。

●オーストラリア分類によると、ドンペリドン(Domperidone)はカテゴリーB2(7段階評価のうち上から3つ目)で、入手しうるデータでは胎児への障害の発生が増加したという証拠は示されていない、となっています3)。

●以上のことから、妊娠中に服用してしまったからといって、安易な中絶に結びつかないような対応が必要です。

授乳に関しては、Medications and Mother’s Milkの5段階評価によるとL1(5段階評価のうち1番上)で、児への有害報告はなし、となっています4)。

メトクロプラミド(商品名プリンペラン)

●約120万人の妊婦を対象にしたコホート研究によると、妊娠初期にプリンペランを服用しても主要な先天性奇形(神経管欠損、大血管転位など)には優位な関連性はなく、自然流産、死産のリスク増加との関連性も見られませんでした5)。
●妊娠中でも影響が少なく、妊娠中での使用が可能と考えられています1)5)。

オーストラリア分類によると、メトクロプラミド(Metoclopramide)はカテゴリーA(7段階評価のうち一番上)で、最も安全な評価となっています3)。

【参考 オーストラリア分類 カテゴリーAの評価】
多くの妊婦や妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する直接的・間接的有害作用の頻度が増すという、いかなる証拠も観察されていない。
原文:Drugs which have been taken by a large number of pregnant women and women of childbearing age without any proven increase in the frequency of malformations or other direct or indirect harmful effects on the fetus having been observed.

授乳に関しては、Medications and Mother’s Milkの5段階評価によるとL2(5段階評価のうち上から2番目)で、少数の研究によるが児への有害報告はなく、リスクの可能性がある根拠はほとんどない、となっています4)。

1)薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳
2J Obstet Gynaecol. 2013 Feb;33(2):160-2. doi: 10.3109/01443615.2012.734871.
3https://www.tga.gov.au/prescribing-medicines-pregnancy-database

4)今日の治療薬2017
5JAMA. 2013 Oct 16;310(15):1601-11. doi: 10.1001/jama.2013.278343.


ナウゼリンとプリンペランの共通点と違いについて

ナウゼリンとプリンペランの共通点

●共にドパミンD2受容体遮断薬で、次の①、②の作用により末梢性嘔吐、中枢性嘔吐のいずれに対しても制吐作用を示します。
上部消化管のドパミンD2受容体を遮断し、アセチルコリンの遊離を促進させ胃腸運動を亢進。
CTZ(化学受容器引き金帯、chemoreceptor trigger zone)のドパミンD2受容体を遮断し、制吐作用を発揮。

下垂体後葉のドパミンD2受容体遮断作用によるプロラクチン分泌亢進により、まれに女性化乳房、月経不順、乳汁分泌などの症状が出ることがあるので知っておきましょう。
●他のドパミンD2受容体遮断薬と併用すると錐体外路症状などの副作用が出やすくなる可能性があるので、注意が必要です。

ナウゼリンとプリンペランの違い

ナウゼリンは血液-脳関門(blood- brain barrier:BBB)を通過しにくいことが確かめられており、副作用の錐体外路症状は起こりにくいです。
●一方、プリンペランはBBBを通過しやすく、長期連用で錐体外路症状が出る可能性があるので注意が必要です。
●このため、パーキンソン病の患者に使う吐き気止めは、プリンペランよりナウゼリンの方が適していると考えられます。
●なお、CTZはBBBの外側にあるので、ナウゼリンはちゃんとCTZに作用します。

●ナウゼリンは併用薬に注意かも!?
H2ブロッカー、PPI、制酸薬により胃内pHが上昇すると、ナウゼリンの吸収が阻害され効果が減弱する恐れがあります。併用するときは服用間隔を空ける必要があると考えられます。

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