授乳婦(乳児)へ薬を使用するときは、webから閲覧できる情報と、書籍からの情報が有用です。
webから閲覧できる情報
①国立成育医療研究センターのwebサイト
こちらにアクセスし、
「妊娠と薬情報センター」
→「医療関係者向け情報」
→「授乳中の薬の影響」の順で進んでいくと、
「安全に使用できると思われる薬」、「授乳中の治療に適さないと判断される薬」一覧が出てきます。
非常に役に立つこちらのサイトは、医療関係者なら必ず知っておかないといけないでしょう。
②「LactMed」
アメリカ国立衛生研究所(NIH)が運営するwebサイトで、要約、薬物動態、RID、乳児への影響、乳汁分泌への影響、参考文献などが載っています。リンクはこちらです。
RIDは、〇% of the maternal serum level
〇% of the weight-adjusted dosage などで表現されています。
例)タミフル(Oseltamivir)のRID=0.5%
The dose in milk corresponded to 0.5% of the mother’s weight-adjusted dosage.
アダラート(Nifedipine)のRID=0.1%
The infants would receive an average daily dosage of 0.1% of their mother’s weight-adjusted dosage in breast milk.
【参考】
RID(relative infant dose)は、母乳を介する乳児の体重当たりの薬物摂取量(mg/kg/日)が、母親の体重当たりの薬物摂取量(mg/kg/日)の何%に相当するかを表します。
日本語では、乳児相対摂取量や相対的乳児薬物摂取量などと呼んでいます。
乳児の薬物摂取量
RID = ――――――――― ×100(%)
母親の薬物摂取量
RIDが10%以下なら比較的安全、1%以下はまず問題にはならないと、通常考えられています。
☆RIDが10%を超える薬剤の例
フェノバール、ジフルカン、フラジール、テノーミン、リーマス(全て商品名)などがあります。
ついでにM/P比(Milk-to-Plasma drug concentration ratio)も知っておきましょう!
M/P比=母乳中薬物濃度/母体血漿薬物濃度
で表され、薬物の母乳移行性の指標となり、M/P比が1未満なら乳汁移行は少ないと判断します。ただし、乳児への母乳を介する薬物の影響を評価する「間接的な指標」であることに注意が必要です。
書籍で調べるならこちら!
①Medications and Mother’s Milk
乳児に対する薬の影響度合いがL1~5の5つに分類され、この中で「L1」が安全と考えられます。また、RIDも記載されています。
カテゴリーL1
多くの授乳婦が使用するが、児への有害報告なし。
対照試験でも児に対するリスクは示されず、乳児に害を与える可能性はほとんどない。
カテゴリーL2
研究数は少数だが、乳児への有害報告はなし。
リスクの可能性がある根拠はほとんどない。
カテゴリーL3
授乳婦の対照試験はないが、児に不都合な影響が出る可能性がある。
薬の投与は、その有益性が児の潜在的リスクを凌駕する場合のみに使用。
カテゴリーL4
児や乳汁産生にリスクがあるという明らかな証拠があるが、授乳婦の有益性が児へのリスクを上回る場合は許容する。
カテゴリーL5
授乳婦の研究で、児に重大で明らかなリスクがあるとヒトでの使用経験をもとに示されており、児に重大な障害を引き起こすリスクが高い。
②今日の治療薬
Medications and Mother’s Milkの評価は「今日の治療薬」にも一部記載されています。この機会に「今日の治療薬」を手元に1冊置いておくとよいでしょう。
③薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改定2版
手元に置いてあると非常に頼もしい書籍。ぜひ薬局に1冊置いておきましょう。
④母乳とくすりハンドブック改定第3版
大分県薬剤師会が情報を非常にうまくまとめたものです。購入はこちらからできます。
薬剤を4つのカテゴリーに分類し、大分県内の医療関係者における母乳と薬剤の安全性に関する共通認識の普及を目指し作成されました。
◎(安全):授乳婦で研究した結果、安全性が示されている。
疫学情報はないが、乳児に有害事象を及ぼさないとされる薬剤。
〇(危険性は少ない):授乳婦での研究は限定的だが、乳児へのリスクは最小限である。
疫学情報はないが、リスクを証明する根拠がない薬剤。
△(注意):乳児に有害事象を及ぼす可能性があり注意が必要である(推奨されない)。
安全とされる薬剤への変更を考慮すべき薬剤。
×(禁忌):薬剤の影響がある間は授乳を中止する必要がある。
安全性を示す情報がなく、リスクが解明されるまで回避すべき薬剤。
2010年版の母乳とくすりハンドブックはこちらから見ることができます。
購入の参考になると思います。
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