グレープフルーツの「果皮」や「果肉」、「ジュース」に含まれるフラノクマリン類は、小腸のCYP3A4という代謝酵素を不活性化します。
そのため、グレープフルーツを摂取すると、「CYP3A4で代謝される薬」の血中濃度が上昇し、時には副作用が起こりやすくなることがあります。
グレープフルーツによるCYPの影響は、摂取量が多いほど影響を受けやすいのですが、少量でも強い相互作用を起こすことがあり、摂取しても安全な量という明確な基準はありません。
グレープフルーツの摂取により、24時間~数日間は相互作用の影響を受ける可能性があると考えられています。
グレープフルーツの中でも、果肉の赤いルビータイプは、ホワイトタイプよりもフラノクマリン類の含有量が半分くらいで、相互作用のリスクも半分くらいと考えられています。
薬剤の種類によってグレープフルーツの影響を受ける度合いは異なります。
また、グレープフルーツの影響は個人差がかなりあることが知られており、ほとんど影響を受けない人もいます。
そのため、一概にグレープフルーツの摂取をやめるべきとはいえませんが、影響を受ける可能性があることを知っておき、注意深く患者さんの状態をモニタリングする必要があります。
グレープフルーツ以外にフラノクマリン類が含まれているものには、
ハッサク、ザボン(ブンタン)、ダイダイ、スウィーティー、バンペイユなどがあり、グレープフルーツと同じようにCYP3A4の代謝に影響を与える可能性があります。
一方、フラノクマリン類をほとんど含んでいないものには、
温州ミカン、バレンシアオレンジ、レモン、カボスなどがあります。
参考:
日経DI
福岡県薬剤師会 質疑応答
公益財団法人 日本心臓財団 注意したいお薬の飲み合わせ
グレープフルーツの影響を受け、作用が増強する可能性がある薬剤の例
●シクロスポリン(商品名サンディミュン、ネオーラル)
●タクロリムス(商品名グラセプター)
●シンバスタチン(商品名リポバス)
●アトルバスタチン(商品名リピトール)
●シロスタゾール(商品名プレタール)
●カルバマゼピン(商品名テグレトール)
☆シクロスポリンは血中濃度が少し上がるだけでも副作用が起こりやすいので、グレープフルーツなどに関する情報提供は必須です。
●エレトリプタン(商品名レルパックス)
●コルヒチン
●トルバプタン(商品名サムスカ)
●タダラフィル(商品名ザルティア、シアリス)
●エプレレノン(商品名セララ)
●アメナメビル(商品名アメナリーフ)
●ナルフラフィン(商品名レミッチ)
●シナカルセト(商品名レグパラ)
●ボセンタン(商品名トラクリア)
●フェンタニル(商品名アブストラル舌下錠)
●イリノテカン(商品名カンプト)
●タミバロテン(商品名アムノレイク)
●パルボシクリブ(商品名イブランス)
●ゲフィチニブ(商品名イレッサ)
●イマチニブ(商品名グリベック)
●アキシチニブ(商品名インライタ)
●スニチニブ(商品名スーテント)
●トファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)
●ラパチニブ(商品名タイケルブ)
●ニロチニブ(商品名タシグナ)
●エルロチニブ(商品名タルセバ)
●パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)
参考:各種添付文書
グレープフルーツジュースにより、効果が「減弱」するかもしれない薬剤
●フェキソフェナジン(商品名アレグラ)
実は、グレープフルーツジュース、オレンジジュース、リンゴジュースは、小腸上皮細胞の有機アニオントランスポーター(OATP:organic anion transporting polypeptide)を阻害し、OATPの基質となる薬剤の吸収を妨げ、効果を減弱することがあります。
フェキソフェナジンはOATPの基質となる薬剤で、これらのジュースの影響を受けることがあります。
100%pureジュースを服用すると、フェキソフェナジンのAUCとCmaxが60~70%低下したとの報告があります(参考:新版 薬の相互作用としくみ)
●ビラスチン(商品名ビラノア)
「健康成人12例に本剤20mgをグレープフルーツジュース240mLで投与したとき、血漿中ビラスチンのCmax及びAUC0-infはそれぞれ約0.6倍及び約0.7倍に低下した。この血漿中ビラスチン濃度の低下はグレープフルーツジュースによるビラスチンの消化管からの吸収阻害に起因すると推察されたが機序は不明である。」と添付文書に記載があります。
果物が薬剤に影響を与える機序
●小腸のCYP3A4不活性化
●有機アニオントランスポーター(OATP)の阻害
この2つがあることは知っておきましょう。
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