グーフィス®(エロビキシバット)とウルソ®(ウルソデオキシコール酸)の併用という機会はそこまで多くなくても十分ありうることだ。今回は併用するとどのようになるのかを見ていこう。
グーフィス®の作用機序:
エロビキシバットは回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる。
胆汁酸は、大腸管腔内に水分および電解質を分泌させ、さらに消化管運動を亢進させる為、本剤の便秘治療効果が発現する。
ウルソ®の作用機序:
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は胆汁酸であり、胆汁分泌を促進する作用(利胆作用)により胆汁うっ滞を改善する。
また、投与されたウルソデオキシコール酸は肝臓において、細胞障害性の強い疎水性胆汁酸と置き換わり、その相対比率を上昇させ、疎水性胆汁酸の肝細胞障害作用を軽減する(置換効果)。
さて、ウルソ®は胆汁酸そのもので、グーフィス®はその胆汁酸の再吸収を阻害するので、併用するとウルソ®の効果が減弱する可能性があることがわかる。しかし、どの程度効果が減弱するかのデータは見つけられなかった。
併用処方があった場合、禁忌ではないのでそのまま調剤してもよいかもしれないが、グーフィス®を他の下剤(例えばアミティーザ®、リンゼス®、モビコールなど)に変更できないか相談するのもよいだろう。
この記事を書いていて気になったのだが、グーフィス®とウルソ®の併用でグーフィス®の下剤としての効果が強く出ることはないのだろうか?グーフィスで胆汁酸量を増やすのだから、胆汁酸そのものであるウルソ®の服用で効果増強…?。
こちらもデータが見つけられなかったので知っている人がいたら教えていただきたい。
参考までにグーフィス®の電子添文にはウルソ®との併用注意の記載はあるが、ウルソ®の電子添文にはその記載はない(2023/11月時点)。
このように電子添文の統一がなされていないことがあるので、両者の情報を調べることは大事だ。
統一がなされていない一例として。
フェロミア®(クエン酸第一鉄)の電子添文では併用禁忌の記載はない(2023/11月時点)。併用注意に、タンニン酸を含有する食品、との記載がある。
一方で、タンニン酸アルブミン「ケンエー」の併用禁忌には経口鉄剤とはっきり記載がある。その理由に
「併用により相互に作用が減弱することがあるので、併用しない。 鉄と結合しタンニン酸鉄となり、タンニン酸による収れん作用が減弱することが考えられる」
と書かれている。
電子添文はよく読むことが大切だ。
おまけ情報として、グーフィス®にはわずかにLDLコレステロールを下げることが知られている。IFに以下の記載がある。
本剤5mg以上の反復投与群で血清中LDL-コレステロール濃度の低下が認められ、反復投与の間、その低下が継続した。
臨床検査においては、LDL-コレステロール濃度は、
本登録日、2週来院日(中止日)の順に、
プラセボ群において 113.4±31.5mg/dL(平均値±標準偏差)、114.9±31.4mg/dL、
本剤群において117.9±29.9mg/dL、104.5±25.9mg/dLであり、
本剤群で本登録日に比べ投与後は低い値を示した。
約10mg/dLほどは下げている。
もしかしたら便秘&脂質異常症にはいいのかもしれない。
グーフィス®がLDLを下げる理由としては、
①胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成される
②グーフィスは胆汁酸の吸収を抑える
③胆汁酸の吸収が抑えられた分、胆汁酸を作ろうとコレステロールが消費される
ということが考えられる。
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