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抗がん剤

分子標的薬の基本情報~主な抗体薬~ヤーボイ、オプジーボ、アバスチン、ハーセプチン 最低限これだけは覚えよう

分子標的薬とは

分子標的薬は「小分子薬」「抗体薬」の2つに大きく分けることができる。

小分子薬
分子の大きさ:小さい(低分子型)
標的の場所:細胞内
名称:~nib

 

抗体薬
分子の大きさ:大きい(高分子型)
標的の場所:細胞外
名称:~mab

高分子型の抗体薬は細胞外分子標的薬で、
●リガンド標的薬
●膜受容体標的薬
●膜状分化抗原標的薬
などにも分けることができる。

 

主な抗体薬

標的分子も多く覚えるのが大変。
とりあえず、こんなに種類があるんだな、程度でよいと思う。
主な抗体薬は以下の通り。

標的分子 主な薬剤名
EGFR セツキシマブ(アービタックス®)
ネシツムマブ(ポートラーザ®)
HER2 トラスツズマブ(ハーセプチン®)
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ®)
VEGF ベバシズマブ(アバスチン®)
VEGFR ラムシルマブ(サイラムザ®)
PD-1 ニボルマブ(オプジーボ®)
ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
PD-L1 アベルマブ(バベンチオ®)
アテゾリズマブ(テセントリク®)
デュルバルマブ(イミフィンジ®)
CTLA-4 イピリムマブ(ヤーボイ®)

 

作用機序は?

①抗EGFR抗体
EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)は上皮細胞などに発現が認められる膜貫通型の受容体であり、リガンドとの結合によりEGFRチロシンキナーゼが活性化され、細胞内シグナル伝達を介して細胞増殖、分化などに関与する。

抗EGFR抗体はEGFRと結合することで、上記の増殖シグナルの伝達を抑制することで抗腫瘍効果を発揮する。

RAS遺伝子やKRAS遺伝子の変異型では抗EGFR抗体の効果が消失するため、投与前には遺伝子検査を実施する。

セツキシマブ(アービタックス®)は世界初のEGFRを標的とするモノクローナル抗体である。

infusion reactionを軽減させるため、セツキシマブの投与前に抗ヒスタミン剤の前投薬を行う。さらに、セツキシマブの投与前に副腎皮質ホルモン剤を投与すると、infusion reactionが軽減されることがある。

 

 

②抗HER2抗体
抗HER2抗体HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型に特異的に結合し、
●HER2シグナル伝達阻害
●ADCC(抗体依存性細胞傷害作用)活性
を通じて腫瘍細胞増殖を抑制する。

ADCCとは?
HER2に結合した抗体薬に対して免疫細胞が集まり、がん細胞を傷害する作用のこと。

トラスツズマブ(ハーセプチン®)は世界初のヒト化モノクローナル抗体薬である。
また、乳癌*1胃癌*2 において、初めて承認された分子標的治療薬である。

*1 :承認された効能又は効果:HER2 過剰発現が確認された乳癌
*2 :承認された効能又は効果:HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌

トラスツズマブ(ハーセプチン®)では、Infusion reactionの発現回避等を目的とした前投薬(抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤等)に関する有用性は確認されていない。

 

 

③抗VEGF抗体
VEGF(血管内皮増殖因子)は血管内皮細胞の細胞分裂促進・生存を制御する作用をもち、血管新生(=既存の血管から新しい血管が形成される現象)の主要な調節因子である。
そして、VEGFはほとんどのヒト腫瘍において発現が亢進しており、腫瘍の増殖・転移に関与している。

ベバシズマブ(アバスチン®)は、VEGFと特異的に結合することで、VEGFとその受容体(VEGFR)の結合を阻害する。
結果、腫瘍組織での血管新生を抑制することで抗腫瘍効果を発揮する。
血管が作られず、増殖に必要な血液・栄養が行き届かないことから、「兵糧攻め」に例えて説明されることもある。

本剤は世界で初めて血管新生阻害剤として臨床的有用性を示した抗悪性腫瘍剤である。
ただし、単剤では効果がイマイチなので他の抗がん剤と併用するのがポイントである。

本剤の薬理作用から想像しやすいが、本剤を投与すると傷の治りが悪くなる場合があることも覚えておこう。

 

 

④抗VEGFR抗体
ラムシルマブ(サイラムザ®)ヒトVEGFR-2(血管内皮増殖因子受容体2)に対する抗体であり、VEGFのVEGFR-2への結合を阻害することで、VEGFR-2の活性化を阻害する。

結果、内皮細胞の増殖、遊走及び生存を阻害し、腫瘍血管新生を阻害すると考えられる。

血管新生を抑制する薬
●抗VEGF抗体
●抗VEGFR抗体

ベバシズマブ(アバスチン®)は他の抗がん剤と併用するが、ラムシルマブ(サイラムザ®)は単剤で使用可能な適応と、他の抗がん剤と併用する適応があることに注目

ラムシルマブ(サイラムザ®)投与時にあらわれるinfusion reactionを軽減させるため、本剤の投与前に抗ヒスタミン剤の前投与を考慮する。症状に応じて、抗ヒスタミン剤に加え、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン等)及び副腎皮質ホルモン剤(デキサメタゾン等)を前投与する。

 

 

⑤抗PD-1抗体
免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれている。

通常、ヒトT細胞はがん細胞の抗原提示により活性化され、がん細胞のアポトーシスを誘導する作用を持っている。

一方、T細胞の表面には免疫チェックポイント分子の1つである、PD-1という受容体がある。このPD-1は免疫反応を「負」に調整する作用をもつ(=ネガティブフィードバックによりT細胞の活性化を抑制する)。


実は、このPD-1の作用を逆手にとり、がん細胞はT細胞により排除されない仕組みを有している。

この仕組みに関与する分子に、がん細胞の表面に発現するPD-L1
がある。

がん細胞のPD-L1」が「T細胞のPD-1」に結合すると、T細胞の活性化が抑制され、がん細胞は免疫監視機構から逃れる(排除されない)。

PD-1:Programmed cell death-1(プログラム細胞死1)
PD-L1 :Programmed cell death-ligand 1(プログラム細胞死リガンド 1)


抗PD-1抗体
は、がん細胞よりも先に「T細胞のPD-1」に強力に結合することで、「がん細胞のPD-L1」の働きを阻害する薬剤である。

つまり、「T細胞の活性化の抑制」を阻害することで、T細胞を再活性化させるのだ。

もっと簡単に言うと、
「抗PD-1抗体はがん細胞を攻撃するT細胞本来の働きを回復させ、がん細胞を攻撃できるようにする薬」である。

抗PD-1抗体のニボルマブ(オプジーボ®)は日本発、世界初の抗PD-1抗体である。

 

 

⑥抗PD-L1抗体
免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれている。
抗PD-L1抗体
がん細胞のPD-L1と結合し、がん細胞のPD-L1T細胞のPD-1との結合を阻害することで、T細胞の細胞傷害活性を増強し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられる。

抗PD-1抗体:
がん細胞よりも先にT細胞のPD-1に強力に結合することで、「がん細胞のPD-L1」の働きを阻害する。

抗PD-L1抗体:
がん細胞のPD-L1と結合することで、「がん細胞のPD-L1」の働きを阻害する

 

 

⑦抗CTLA-4抗体
これも免疫チェックポイント阻害薬とも呼ばれている。

活性化したT細胞に発現する免疫チェックポイント分子のCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)は、抗原提示細胞上のCD80とCD86分子と結合することでネガティブフィードバックを受け、活性化したT細胞を抑制する作用をもつ
自身の活性化を、自身で抑制する。

抗CTLA-4抗体であるイピリムマブ(ヤーボイ®)は、CTLA-4に強力に結合することでCTLA-4とCD80/86分子の結合を阻害し、T細胞の活性化を持続させることができる。

なお、ヤーボイ®は(適応症にもよるが)オプジーボ®と併用する薬剤である。

ヤーボイ®とオプジーボ®は、それぞれが「T細胞の活性化に対するネガティブフィードバック」を抑制する効果があるが、それぞれ異なる経路を介しており、ヤーボイ®とオプジーボ®の併用療法は相乗効果を示すことが示唆されている。

 

免疫チェックポイント分子とは?
T細胞に発現する、PD-1、CTLA-4などのこと。

免疫チェックポイント阻害薬には何がある?
●抗PD-1抗体
●抗PD-L1抗体
●抗CTLA-4抗体

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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