がんの術後、再発予防目的で服用する抗がん剤はどのくらいの期間服用(使用)するのか?
胃がんの場合
胃癌治療ガイドラインによると、ステージ2/3胃癌の術後はティーエスワン®が標準治療であり、術後1年間の治療期間が推奨されている。
ティーエスワン®の治療効果は以下の通り(J Clin Oncol. 2011 Nov 20;29(33):4387-93.)。
<5年生存率>
●術後化学療法あり:71.7%
〇なし:61.1%
(ハザード比0.669;95%CI、0.540~0.828)
<5年後の無再発生存率>
●術後化学療法あり:65.4%
〇なし:53.1%
(ハザード比0.653;95%CI、0.537~0.793)
☞5年後の生存率を約10%上げる効果がある!
乳がんの場合
患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年によると、手術後のホルモン療法は閉経前と閉経後で使用する薬剤が異なる。なお、基本は5年間薬を使用する。
閉経前:抗エストロゲン薬(5年)± LH-RHアゴニスト製剤(2~5年)
閉経後:アロマターゼ阻害薬(5年)or 抗エストロゲン薬(5年)
術後5年以上経過しても、再発するリスクがあることがわかってきており、必要に応じて合計10年間のホルモン療法を勧めすることがある。
<閉経前に使用可能な薬剤>
LH-RHアゴニスト製剤(注射):リュープリン®、ゾラデックス®
<閉経後に使用可能な薬剤>
抗エストロゲン薬(内服):フェアストン®
アロマターゼ阻害薬:アリミデックス®、フェマーラ®、アロマシン®
<閉経前・後に使用可能な薬剤>
抗エストロゲン薬:ノルバデックス®
抗エストロゲン薬(注射):フェソロデックス®筋注。閉経前に使用する場合はLH-RHアゴニスト + CDK4/6阻害剤と併用。
CDK4/6阻害剤:ベージニオ®、イブランス®
それぞれの適応:
ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
それぞれの注意点:
本剤の術前・術後薬物療法としての有効性及び安全性は確立していない
前立腺がんの場合
各種情報を見ても、前立腺がんの術後、再発予防目的でカソデックス®を使用することはなさそうです。あったとしても稀なケース?
参考までに…
カソデックス®は前立腺腫瘍組織のアンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの結合を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する。
前立腺がんのホルモン療法に使用される薬剤には以下のものがある。
<下垂体に作用>
LH-RHアゴニスト製剤(注射):リュープリン®、ゾラデックス®
GnRHアンタゴニスト製剤(注射):ゴナックス®
<内服>
抗アンドロゲン剤:カソデックス®、オダイン®、プロスタール®
女性ホルモン剤:エストラサイト®、プロセキソール®
<アンドロゲンを強力に抑える新規ホルモン治療薬>
ザイティガ®:2014年9月発売。プレドニゾロンと併用して使用する。
イクスタンジ®:2018年6月発売。
「転移性の前立腺がん」はいずれホルモン治療に抵抗性になり、このホルモン抵抗性の病態を「去勢抵抗性前立腺がん」と言う。
去勢抵抗性前立腺がんに対しては、アンドロゲンを強力に抑えるザイティガ®、イクスタンジ®が使用される。
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