モルヌピラビル(ラゲブリオ®)の基本情報・特徴
2021年12月、新型コロナウイルス感染症(=SARS-CoV-2 による感染症)に対する経口抗ウイルス薬としてモルヌピラビル(ラゲブリオ®)が特例承認された。
必要な医療機関に適切な数量を届けるために、「ラゲブリオ®登録センター」を通じて製品発注を受付けることになる。そのため、ラゲブリオ®登録センターに登録した医療機関・調剤薬局でのみ入手可能である。
また、ラゲブリオ®は日本国政府が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関/保険薬局からの依頼に基づき無償で配分される。投与対象患者に対価を請求すること、及び、保険償還を受けることはできない。
承認時において有効性、安全性、品質に係る情報は限られているため、
「ラゲブリオ®を使用するときは、あらかじめ患者又は代諾者に、その旨並びに有効性及び安全性に関する情報を十分に説明し、文書による同意を得てから投与すること」
となっている。
また、院外処方をする場合は処方する医療機関が「適格性情報チェックリスト」に必要な事項を記入する必要がある。
「患者向け同意書」と院外処方をする場合の「適格性情報チェックリスト」はラゲブリオ®製品情報から入手可能である。
☑ どこの医療機関・薬局でも手に入るわけではない。
☑ 患者の同意書、院外処方の場合はチェックリストが必要。
<作用機序>
モルヌピラビルはプロドラッグであり、NHC*に代謝され細胞内に取り込まれた後、活性型であるNHC-TP**にリン酸化される。
NHC-TPがウイルス由来RNA依存性RNAポリメラーゼによりウイルスRNAに取り込まれた結果、ウイルスゲノムのエラー頻度が増加し、ウイルスの増殖が阻害される。
*NHC:モルヌピラビルの主要代謝物。N-ヒドロキシシチジンの略
**NHC-TP:リボヌクレオシド三リン酸化体
なお、NHCは内因性ピリミジンの代謝と同じ経路でウリジン及びシチジンへ代謝され、消失する。
<適応>
SARS-CoV-2による感染症
☑ 臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。
☑ 本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
☑ 重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。
日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第11報」(2021年12月24日)に明記されている「重症化リスク因子を有する者」は以下の通り。
・61歳以上
・活動性の癌(免疫抑制または高い死亡率を伴わない癌は除く)
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患
・肥満(BMI30kg/m2以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)
・糖尿病
・ダウン症
・脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
・コントロール不良のHIV感染症およびAIDS
・肝硬変等の重度の肝臓疾患
・臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
<用法用量>
通常、18歳以上の患者には、1回800mg(本剤4カプセル)を1日2回、5日間経口投与する。
☞規格は200mgカプセルのみ。18歳以上が対象。
☞高齢者での用量調節は不要。
☑ SARS-CoV-2による感染症の症状が出たらすぐに服用開始!
☑ 症状発現から6日目以降に服用しても、有効性を裏付けるデータは得られていない。
<禁忌>
妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
☞動物実験で胎児毒性(催奇形性など)が報告されている。
☑ 患者さんが妊娠していないこと、又は妊娠している可能性がないことを必ず確認すること。
☑ 妊娠初期の妊婦では、妊娠検査で陰性を示す場合があることにも注意。
☑ 妊娠する可能性のある女性に対しては、ラゲブリオ®服用中、及び最終服用後一定期間(少なくとも、最終服用後4日間)に性交渉を行う場合は、パートナーと共に適切な避妊を行うこと。
<副作用>
下痢、悪心、浮動性めまい、頭痛などがある(1%以上5%未満)
①処方・調剤をするには登録が必要
②対象患者は、通常18歳以上の重症化リスク因子を有するもの
③妊婦は禁忌
参考:
ラゲブリオ®添付文書
ラゲブリオ®製品情報
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