下痢は下痢でも…
下痢型の過敏性腸症候群(IBS)ならイリボー®や抗コリン薬、ロペミン®が有効な場合があるが、これらの薬剤でも改善されない下痢のときは、胆汁酸の吸収阻害による下痢の可能性がある。
通常、胆汁酸の大部分は小腸末端の回腸で胆汁酸トランスポーターにより再吸収されるが、再吸収されなかった分は大腸内で水分分泌と蠕動運動を促進し、排便を促す。
しかし、胆汁酸の吸収阻害があると(例えば回腸を切除していた場合)、吸収されない胆汁酸が大腸に大量に流れ、下痢になることがある。
これを胆汁性下痢症という。
この場合の下痢の特徴は、食事をしないと下痢はしないが、食事をすると下痢になりやすいことだ。
それは、胆汁酸は胆汁の中に含まれており、胆汁は食事の刺激で分泌されるためである。
胆汁性下痢の特徴の一つは、朝食後に下痢を起こしやすいことです。胆嚢に最も胆汁が蓄えられているのが朝食前。
昼食や夕食後は案外下痢にならないことが多いです。 https://t.co/V5ZjkSFoJU— 野口内科_日々の独り言 (@washi_omu) June 15, 2021
☆朝食後に下痢になりやすいと教えていただきました。ありがとうございます!
このように、胆汁酸が原因の下痢の場合には、胆汁酸吸着作用のあるコレスチミド(コレバイン®)が有効な場合がある(ただし適応外)。
慢性の下痢で、食後に下痢になりやすく、イリボー®、抗コリン薬、ロペミン®が無効の場合にはコレスチミドを試して見る価値があるかもしれない。
原因不明の慢性の下痢+食後に下痢になりやすい
→回腸の切除の経験がないか確認してみよう!
なお、コレスチミドには「血糖値改善効果」もあることが報告されている。
<関連事項>
新規便秘薬:胆汁性トランスポーター阻害薬(2018年4月から発売)
エロビキシバット(グーフィス®)
作用機序:
エロビキシバットは回腸末端部の胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸内に流入する胆汁酸の量を増加。
大腸に流入した胆汁酸は、水分分泌と大腸運動を促進し排便効果を促す。
つまり、人工的に胆汁性下痢症を起こし、便秘を改善する薬と言える。
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群(IBS)は、「大腸や小腸に腫瘍や炎症などの器質的な異常がないにも関わらず、排便に関連する反復する腹痛が慢性に持続する状態」である。
症状により以下の4つに分類される。
1:下痢型
2:混合型
3:便秘型
4:分類不能型
<IBS患者への処方例>
●腹痛+下痢 → イリボー®(通常、女性は1日1回2.5〜5μg、男性は1日1回5〜10μg)
●腹痛+便秘 → 酸化マグネシウム or リナクロチド(リンゼス®)
*リンゼス®の適応は「便秘型過敏性腸症候群」と「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」の2つ。
ラモセトロンを成分とする薬剤にはイリボー®とナゼア®がある。
イリボー®:
適応は下痢型過敏性腸症候群。
1日1回2.5〜10μg服用。
ナゼア®OD錠:
適応は抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)。
1日1回0.1mg服用。
同じ成分でも服用量が異なればターゲットとする症状が変わり、適応症も異なる!
コレスチミド(コレバイン®)ってどんな薬?
<作用機序>
コレスチミドは消化管で胆汁酸を吸着し、胆汁酸の排泄を促進する。
これにより胆汁酸の腸肝循環が阻害され、肝臓でのコレステロール→胆汁酸への異化が亢進。
結果、肝臓でのコレステロールプールが減少する。
この代償作用(=肝臓のコレステロールが減ったから取り込まないと!)として肝臓のLDL受容体が増加し、血中LDLの取込みが亢進、血清総コレステロールが減少する。
☞間接的な作用でコレステロールを下げる。
<適応>
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
<併用注意>
ウルソ®などの胆汁酸製剤の作用を減弱させるおそれがあるので、可能な限り間隔をあけて服用する。
<飲むときの注意点>
十分量(200mL程度)の水で服用すること。
温水(湯、温かい茶等)で服用すると膨らんで服用できない場合があるので、常温の水 or 冷水で服用する。
<その他の注意点>
脂溶性ビタミン(A,D,E,K)、葉酸塩の吸収阻害が起こる可能性があるので、長期間投与を行う場合は、これらの補給を考慮する。
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