ベザフィブラート(ベザトール)が肝硬変に有効?
肝硬変の中でも、原発性胆汁性肝硬変(PBC)にベザフィブラート(ベザトール®SR)が有効であるとされている。
PBCの第一選択薬はウルソデオキシコール酸(UDCA)だが、UDCAが無効かつ腎機能が正常な場合、ベザフィブラートが1日量400mg、分2で併用投与される。
ただし、ベザフィブラートのPBCへの使用は保険適応外である。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)とは?
慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患で、自己免疫性肝炎でもある。
多くは以下のような経過をたどる。
肝臓の胆管が免疫学的なメカニズムにより破壊
→胆汁が肝臓内にうっ滞
→胆汁中の成分であるビリルビンが血管内に逆流
→全身の組織にビリルビンが沈着し、黄疸が生じる
その後、
肝臓は炎症とうっ滞した胆汁により次第に肝細胞が破壊され線維化
→徐々に肝硬変へと進行
現在は早期に診断することができること、第一選択薬のUDCAにより進展を遅らせることができることから、現在診断されている多く(70~80%)の患者は肝硬変には至っていない。
また、現在PBCの診断を受けている多く(70~80%)の患者は自覚症状はなく、無症候性PBCである。
PBCの治療薬
第一選択薬
ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)
エビデンスレベル1a,推奨度 A
第二選択薬
ベザフィブラート(ベザトール®SR):保険適応外(2020/9月時点)
推奨度: 2, エビデンスの強さC
ウルソデオキシコール酸(UDCA)
UDCAは胆汁分泌を促進する作用(利胆作用)により、胆汁うっ滞を改善する。
また、投与されたUDCA(親水性)は肝臓において、細胞障害性の強い疎水性胆汁酸と置き換わり、その相対比率を上昇させ、疎水性胆汁酸の肝細胞障害作用を軽減する(置換効果)。
そのほか、胆石溶解作用、消化吸収改善作用が知られている。
PBCは胆汁うっ滞により疎水性胆汁酸が増え、肝細胞障害が起こるためUDCAの服用が効果的。
PBCに対してUDCAを服用すると、肝機能検査値の改善や、組織学的に進行を遅延させる効果とともに、肝移植までの期間や死亡までの期間の延長が確認されている。
1日量600m/日を48 ~132週間投与したところ、「改善」「寛解」の改善率は 81.8%(27/33 例)であった。
ただし、UDCAはPBCを根本的に治すわけではないため、継続服用が大切である。

ベザフィブラート(ベザトール®SR)
PBCに対しては保険適応外。
PBCに対してUDCAを投与しても効果がない症例が約2割おり、その場合に追加投与(1日400mg、分2)が検討される。
ベザフィブラートの追加投与でPBCの予後が改善したという報告がある。
作用機序は、県立加古川医療センター 薬剤部のプレゼン資料によると
「リン脂質の胆汁中への排泄作用により、疎水性胆汁酸をミセル化(疎水性の低下)させ、胆管細胞障害作用が抑制される」とのこと。
PBCの合併症
強い痒み
PBC患者の約7割の人に痒みが出て、さらにそのうちの7割が痒みによる睡眠障害を訴えている(大日本住友 肝臓病のかゆみと睡眠)。
PBCなどの慢性肝疾患による痒みは、「抗ヒスタミン薬が奏功する末梢性の痒み」というよりは、「内因性オピオイド受容体が関わる中枢性の痒み」と考えられている。
抗ヒスタミン薬で症状が抑えられない場合は、選択的なオピオイドκ受容体作動薬であるナルフラフィン(レミッチ®)が有効な場合がある。
ナルフラフィン(レミッチ®)
適応:透析患者、慢性肝疾患患者のそう痒症の改善
骨粗鬆症
食物中のV.Dを吸収するために必要な胆汁が流れにくくなるため、V.Dの吸収が低下し骨密度が低下する。
特に閉経期の女性では骨粗鬆症が進行しやすくなる。
治療薬には次のものがある。
ビスホスホネート製剤
活性化ビタミンD3製剤
デノスマブ(プラリア®皮下注60mgシリンジ)
など
参考:
●難病情報センター 原発性胆汁性胆管炎(指定難病93)
●肝炎ウイルス制御時代の肝疾患診療 日消誌 2018;115:781―787
●原発性胆汁性肝硬変(PBC)ガイドブック 厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班
●原発性胆汁性胆管炎(PBC)診療ガイドライン(2017 年) 厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班
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