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糖尿病

グルコバイ、ベイスン、セイブルの違い、特徴。適応外の使い方とは?

α-グルコシダーゼ阻害薬の基本情報

α-グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)は、小腸粘膜上皮細胞の刷子縁膜において二糖類から単糖への分解を担う二糖類水解酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害し、糖質の消化・吸収を遅らせ、食後の急激な血糖上昇を抑える働きがある。

HbA1cの改善率は0.5~1.0%。食後高血糖のマーカーである1,5-AGの上昇(=食後血糖が低下)がみられる。
α-GIは食後高血糖がターゲット

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食事由来の「糖」に作用するため、糖質の摂取が少なく、タンパク質や脂質の摂取が多い人にはあまり効果はない。当然、食事を摂らないときに服用しても全く無意味である。

直接的なインスリン分泌促進作用はなく、膵β細胞の負担を軽減することができる。

体重増加は起こらず、α‐GIの単独服用では低血糖はまず起こらないという特徴がある。

ただし、他の血糖降下薬(SU剤やインスリンなど)と併用する場合は低血糖になる可能性が少なからずある。軽い空腹感どころではなく、明らかに「ヤバイ低血糖症状」の時は、必ずブドウ糖(グルコース=単糖類)を摂取する必要がある。
砂糖(ショ糖=スクロース)はα‐GIの作用により吸収が遅れるため不適。合成甘味料入りのジュースもダメ。

α‐GIを服用すると腹部症状(おならが出やすい、腹部膨満感など)が出る場合が多い。
このような腹部症状は、腸内細菌が「消化・吸収の遅れた糖質」を発酵し、水素・メタン 等のガスを発生するからと考えられている。

α‐GIは少量からスタートすることで、このような腹部症状が出にくくなる傾向がある。
α‐GIを初めて服用する人の初回量には気を付ける必要がある。
少量スタートが原則

なお、おならが出やすい、腹部膨満感などの腹部症状が出るということは、お薬の効果がしっかりと出ている証拠でもあり、また食事を摂りすぎているサインの可能性でもある。患者から訴えがあった場合、よく話を聞き、説明する必要がある。

下のグラフはセイブル®のIFより。各α-GI製剤の作用点が微妙に違うことに注目。

 

α-グルコシダーゼ阻害薬の種類


アカルボース(グルコバイ®)

アカルボースはグルコアミラーゼ(マルターゼ)、スクラーゼを用量依存的に阻害するほか、膵液及び唾液のα-アミラーゼを阻害し、食後の著しい血糖上昇を抑制する。
α-アミラーゼ活性を持つジアスターゼ製剤(タフマック®など)と併用すると、互いに作用が減弱するため併用注意。
α-アミラーゼを阻害するのはα‐GIの中でもアカルボースのみ!よく覚えておくこと!

3年間行われたSTOP-NIDDM Studyによると、アカルボース投与により2型糖尿病の発症を36%、心血管疾患の発症を49%抑制すると発表された。
心血管疾患の発症については、メタアナリシスに用いられたスタディの質は不十分であり、さらなるevidenceの集積が望まれる。
ボグリボースと異なり、「耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制」の適応はない。


<副作用>
5%以上:腹部膨満・鼓腸、放屁増加、軟便
5%未満:排便回数増加、下痢、腹痛、便秘、嘔気、嘔吐、食欲不振、食欲亢進、消化不良

 

ボグリボース(ベイスン®)

α-GIの中で一番使用されていると言われており、α-GIの中で唯一「耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制」に適応がある(0.2mg製剤のみ)。
日本人を対象としたVICTORY TRIALでは2型糖尿病の発症リスクを40.5%低下させた。
適応、用量を覚えること。

<副作用>
5%以上:下痢、放屁、腹部膨満
5%未満:軟便、腹鳴、腹痛、便秘、食欲不振、悪心、嘔吐、胸やけ、口渇

 

ミグリトール(セイブル®)

ミグリトールはアカルボース・ボグリボースと異なる特徴を有している。

特徴1.
マルターゼ、イソマルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ、トレハラーゼと多くの酵素を阻害する。

特徴2.
ミグリトールは食後2時間より、食後1時間後の血糖値をより強く下げ、そして血糖値が高くなる時間をずらす効果がある。

アカルボース・ボグリボースは食後2時間後の血糖値を強く下げるが、ピーク時間はほぼ同じである。
これは、アカルボース・ボグリボースが小腸で吸収されず、小腸全域でブドウ糖吸収が抑制されるからだ。

一方、ミグリトールは時間経過とともに小腸で吸収される。小腸上部では強力に糖の吸収を抑制するが、小腸下部へ行くに従い薬物濃度が徐々に低下するため、小腸下部では穏やかに糖吸収が行われる。

特徴3.
GLP-1(インスリンを分泌させる物質)の分泌を亢進させるという報告がある。

GLP-1は、膵β細胞で血糖値依存的に(≒血糖値が高い時だけ)インスリンの分泌を促進し、膵α細胞ではグルカゴン分泌を抑制することで血糖値を下げる。
また、中枢では摂食抑制ホルモンとして作用し、食欲を抑える効果がある。

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特徴4.
食後投与でも効果がある(保険適応外)。

セイブル®のIFに以下の記載がある。

2 型糖尿病患者におけるミグリトールの食事による影響(反復投与)
2型糖尿病患者(31例)を2群に無作為化し、ミグリトール50mg を食直前、一方は食後に3カ月間服用して、HbA1c(JDS値)及び 1,5-AG を測定した。

その結果、食後投与群においても、食直前に投与した場合と同程度に HbA1c(JDS値)の有意な低下と、1,5-AGの有意な上昇が認められた。

また、食後30分までなら血糖値上昇抑制効果があるという報告もある(Administration of miglitol until 30min after the start of a meal is effective in type 2 diabetic patients)。

食直前に飲み忘れしやすい人に向いているかも?

注:アカルボース、ボグリボースの食後投与の効果は、わかり次第追記します。

<副作用>
5%以上:腹部膨満、鼓腸、下痢
5%未満:便秘、腸雑音異常、腹痛、嘔気、嘔吐、食欲不振、口渇、消化不良、胃不快感、おくび、胃炎、排便障害、痔核

 

経験談ですが
アカルボース:やや便秘になりやすい
ボグリボース:比較的、消化器症状は出にくいかも
ミグリトール:やや軟便になりやすい

 

α-GIの適応外の使い方

後期ダンピング症候群では、食事による糖質の急激な吸収を抑えるためにα-GIが適応外で使用されることがある。

後期ダンピング症候群とは?
胃がんなどにより胃を切除すると、食事をした際に食物が急速に小腸に流れこみ、食事による糖質が短時間で吸収され血糖値が急激に上昇する。
これに反応してインスリンが大量に分泌され、食事を摂ったにも関わらず低血糖になってしまう状態を、後期ダンピング症候群という。
食後2~3時間で、低血糖症状(ふらつき、冷汗、めまい、手指のふるえ、脱力感など)が現れる。

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