便移植とは?
聞きなれないかもしれないが、処理した糞便を経内視鏡的に消化管へ移植する「便移植」という治療法がある。
今のところ対象となる病気には、「潰瘍性大腸炎」と「クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)」がある。
便移植によって腸内細菌叢のバランスの異常を正常化することで効果が出ると考えられている。
潰瘍性大腸炎に対しては、ドナーは同世代か兄弟姉妹で治療効果高いことが報告されている(J Clin Med. 2020; 9: E1650.)。
再発性CDIに対しては高い再発予防効果があるが(Gastroenterology. 2021;160:183–92.)、日本では症例数が少ないこと、長期的な安全性評価が不十分といった理由から、推奨はされていない。
潰瘍性大腸炎とは
安倍晋三・元首相が患っていたことで世間でも広く知られるようになった病気。
大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患で、難病に指定されている。
患者数は今や20万人以上、毎年約1万人の新規患者が発生していると言われている。
治療薬には、
メサラジン製剤
ステロイド
チオプリン製剤
カルシニューリン阻害薬
抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤(抗TNFα抗体薬)
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体製剤
ヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-12/23p40モノクローナル抗体薬
などがある。
クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)とは
CDIは、抗菌薬の使用等により腸内細菌のバランスが崩れ(腸内細菌叢の数や種類が減少し)、 菌交代現象が起こることで発症する。
抗菌薬下痢症の20~30%を占めるとされ、入院患者の感染性下痢症の原因で最多となる。
治療薬には
メトロニダゾール(内服、点滴静注)
バンコマイシン塩酸塩散(内服)
ダフクリア®(フィダキソマイシン)
ジーンプラバ®点滴静注(ベズロトクスマブ)
などがある。
偽膜性大腸炎
内視鏡検査で大腸のかべに小さい円形の膜(偽膜)が見られる病態。
クロストリジウム・ディフィシル菌が産生するtoxinが腸管粘膜を傷害することで症状が出る。
他にも応用されるかも?
便移植により、メラノーマ(悪性黒色腫)患者における抗PD-1治療の耐性克服に有効である可能性が示唆される論文が2021年2月に発表され、15人中6人の患者に臨床的有用性が認められた。
参考:Fecal microbiota transplant overcomes resistance to anti–PD-1 therapy in melanoma patients
☞腸内細菌バランスは奥が深い。
<抗PD-1治療とは?>
免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療のこと。
国内では
PD-1
PD-L1
CTLA-4
の3つ免疫チェックポイントをターゲットとした薬剤が承認されている。
PD-1は免疫細胞の表面にあり、これにがん細胞表面のPD-L1と結合すると、がん細胞に対する攻撃にブレーキがかかる。
CTLA-4は免疫細胞の表面にあり、これに抗原提示細胞のB7(CD80/CD86)が結合すると、がん細胞に対する攻撃にブレーキがかかる。
免疫チェックポイント阻害薬は「PD-1とPD-L1」、「CTLA-4とB7」の結合を阻害することで、がん細胞が免疫にかけているブレーキを解除し、免疫ががんを攻撃できるようにする。
<免疫チェックポイント阻害薬の種類>
抗PD-1抗体
●ニボルマブ(オプジーボ®)
●ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
抗CTLA-4抗体
●イピリムマブ(ヤーボイ®)
抗PD-L1抗体
●アベルマブ(バベンチオ®)
●アテゾリズマブ(テセントリク®)
●デュルバルマブ(イミフィンジ®)
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