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感染症・抗生剤・抗ウイルス薬

ゾフルーザ、タミフルの比較、違い。プラセボとの比較試験の結果とは?

バロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)の効果は?

N Engl J Med誌2018年9月6日号によると、
合併症を伴わない急性インフルエンザの思春期・成人患者にバロキサビルマルボキシル(以下バロキサビル)を単回投与すると次の結果が得られました。

①インフルエンザの症状緩和までの期間は、バロキサビルの方がプラセボよりも約24時間短いが、バロキサビルとオセルタミビルでは差はなかった

②バロキサビルは、投与開始後1日目のウイルス量低下の点において、プラセボとオセルタミビルよりも優れていた

③バロキサビルの単回投与は、安全性に関する明らかな懸念は認められなかった

④バロキサビル治療後では、A型インフルエンザ(H1N1)ウイルスに対するバロキサビルの感受性が低下していた(182人中4人)。

今回の報告では、
●バロキサビルの有効性は、オセルタミビルと比較しても差はない。
● 安全性も特に問題はない。
●ただし、耐性化の問題は気になるポイント。もしかしたら、安易に使用してはいけない薬なのかも?
●今後の報告に注目です。

参考:Hayden FG, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med 2018; 379:913-923.

バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)の作用機序と特徴

作用機序:
バロキサビルは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害することでウイルスmRNAの合成を阻害し、ウイルス増殖抑制作用を発揮します。

キャップ依存性エンドヌクレアーゼとは、宿主細胞由来mRNA前駆体を特異的に切断する酵素で、ウイルスmRNA合成に必要なプライマーとなるRNA断片を生成します。

特徴:
1日1回の単回投与で服用がすみます。
有効性はタミフル®と非劣性、安全性にも大きな問題は今のことろりません。
ただし、薬価はタミフル®よりも高いです。

バロキサビルは、A型及びB型インフルエンザウイルスに有効です。

また、現行の抗インフルエンザ薬に耐性を持つ株によるA型およびB型インフルエンザウイルス感染症にも治療活性を発揮します1)

用法用量:
ゾフルーザ®には10mg錠、20mg錠、ゾフルーザ®顆粒2%分包(1包中にバロキサビル10mg)があります。

成人及び12歳以上の小児
 1日1回40mg:20mg錠2錠or顆粒4包

体重80kg以上の場合
 1日1回80mg:20mg錠4錠or顆粒8包

☆1日1回40~80mgで服用

12歳未満の小児
40kg以上の場合
 1日1回40mg:20mg錠2錠or顆粒4包

20kg~39kgの場合
 1日1回20mg:20mg錠1錠or顆粒2包

10kg~19kgの場合
 1日1回10mg:10mg錠1錠

☆1日1回10~40mgで服用。
☆添付文書上は、10~19kgの小児には顆粒の適応はありませんでした(2018/10)。

 

その他のインフルエンザ治療薬

ノイラミニダーゼ阻害薬


インフルエンザウイルスは感染細胞の表面からノイラミニダーゼの作用により遊離し、別の細胞へ拡散することで増殖していきます。

ノイラミニダーゼ阻害薬は、ヒトA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害することで、A型及びB型のインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。

ノイラミニダーゼ阻害薬には以下のものがあります。

経口剤
オセルタミビル(商品名タミフル)
1日2回、5日間内服

吸入剤
ザナミビル(商品名リレンザ)
1日2回、5日間吸入

ラニナミビル(商品名イナビル)
1日1回、単回吸入

注射剤
ペラミビル(商品名ラピアクタ)
1日1回、単回点滴静注

なお、タミフル®、リレンザ®、イナビル®吸入粉末剤は予防投与が可能です。
★イナビル®は吸入懸濁用160mgセットが2019年6月に製造販売承認を取得しましたが、予防投与の適応はありません。

2018年8月にはタミフル®の10代への使用制限が解除され、
添付文書の警告から、10代患者への「合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること」という記載がなくなりました。

その理由は
①疫学研究でタミフル®と異常行動には明確な因果関係があるとはいえないこと
②薬剤を使用しなくても異常行動はみられること
③タミフル®だけが異常行動を起こすとはいえないこと
があります。

②と③に関しては、次の薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会の資料からわかると思います。

また、各薬剤の添付文書には次の重要な基本的注意が記載されています。

抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず,インフルエンザ罹患時には,異常行動を発現した例が報告されている。
異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として,
(1)異常行動の発現のおそれがあること,
(2)自宅において療養を行う場合,少なくとも発熱から2日間,保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること
について患者・家族に対し説明を行うこと。

なお,転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については,就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと,発熱から2日間以内に発現することが多いこと,が知られている。


<参考までに>

オセルタミビル(タミフル®)は、2017年にWHOによる「保健システムに最低限必要な薬のリスト(model lists of essential medicines)」から外されました。

オセルタミビルなどのNA阻害薬は、インフルエンザの症状を0.5~1.5日短縮しますが、副作用としての嘔吐が高頻度(number needed to harm=20)に生じます(BMJ.2009;339:b3172.)。リスクとベネフィットの観点から、リストから外されたのだと思います。

RNAポリメラーゼ阻害薬

インフルエンザウイルスの細胞内での遺伝子複製に必須の酵素(RNAポリメラーゼ)を選択的に阻害することでウイルス増殖を防ぎます。

RNAポリメラーゼ阻害薬には、2014年3月に承認されたファビピラビル(商品名アビガン錠)があります、

アビガンは、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」という適応で承認されています。

そのため通常のインフルエンザには使えず、インフルエンザウイルス対策(パンデミック発生時など)に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品とされています。現時点では薬価収載もされていません。


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