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脳神経・睡眠・精神系

新薬レイボー:新しい片頭痛の薬、トリプタン系との比較、違い、特徴 

2022年6月に新しい片頭痛の薬、ラスミジタンコハク酸塩錠(レイボー®)が発売された。これまで既存の片頭痛の薬にはトリプタン系などがあったが、レイボー®は世界初のジタン系片頭痛治療剤で、5-HT1F受容体作動薬である。

ここであれ?っと思った人もいるかもしれない。

トリプタン系もセロトニン受容体作動薬だよね?
レイボーも同じセロトニン受容体作動薬なの?と。

では詳しく見ていきたい。

 

片頭痛の原因

まずおさらいになるが、片頭痛の発生原因は何か。

片頭痛の発生機序については様々な仮説があるが、セロトニン過剰放出によるものと、三叉神経の過活動によるものが考えられている。

<セロトニン過剰放出>
セロトニンが何らかの誘因で過剰放出されて頭蓋血管が収縮
→その後急激にセロトニン血漿中濃度が減少
→その跳ね返り現象として血管が拡張
→拍動性頭痛

<痛覚を司る三叉神経の刺激>
→三叉神経から、血管作働性神経ペプチド(カルシトニン遺伝子関連ペプチド:CGPR、およびサブスタンスP)などが遊離
→頭蓋血管の拡張、血管周囲の炎症
→吐き気、頭痛

 

トリプタン系とレイボー®の作用機序の比較

次に作用機序についてだが

トリプタン系は5-HT1B/1D受容体作動型、
ラスミジタンコハク酸塩錠(レイボー®)は5-HT1F受容体作動薬。

作用点が似ているようで異なるのがポイントだ!

トリプタン系は
5-HT1B受容体に作用→頭蓋の血管収縮
5-HT1D受容体に作用→三叉神経からのCGPR、およびサブスタンスPの放出抑制
などの作用により効果を発揮すると考えられている。

一方、
ラスミジタン(レイボー®)は
5-HT1F受容体に高い親和性と選択性を示す作動薬。
三叉神経を含む疼痛経路を抑制することによって、CGPRなどの放出を減少させ、片頭痛に対する治療効果を示すと考えられる。

…参考までに、ラスミジタンは5-HT1F受容体に対し、血管収縮と関連する5-HT1B受容体、及び5-HT1D受容体よりも440倍以上高い親和性を示す(in vitro)。

ラスミジタンとトリプタン系の最大の違い、それはトリプタン系には血管収縮作用があるのことに対し、レイボーにはそれが(ほとんど)ないことである。

レイボ®ーのIFには次のような記載がある。

(レイボ®ーは)現在の標準治療薬とは異なる化学構造及び薬理学的プロファイルを有する世界初のジタン系薬剤であり、血管収縮作用を伴わずに三叉神経の過活動を抑制し、片頭痛発作に対する作用を発揮すると考えられている。

そして、血管収縮作用の有無によって、薬剤の禁忌にも差が出ている(執筆時点)。

<トリプタン系薬の禁忌>
●心筋梗塞の既往歴、虚血性心疾患又はその症状・兆候のある患者、異型狭心症(冠動脈攣縮)
●脳血管障害や一過性脳虚血発作の既往
●末梢血管障害を有する患者

となっており、トリプタン系を使用できる人に制限があった。

一方で、

<レイボー®の禁忌>
●本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

となっており、レイボー®は脳心血管系疾患を有する患者にも投与可能であり、このような疾患のリスクが高い高齢者にも投与しやすい。

また、レイボー®の臨床試験では、片頭痛発作の開始1時間未満に服用した場合でも、1時間以上経過して服用した患者群でも、プラセボ群と比較して有意な頭痛改善が認められた。これは、薬の服用が遅れがちな患者にも、使いやすい薬剤となりうるかもしれないこと示唆する。

なお、CGRPをターゲットにした新しい片頭痛治療薬(適応は片頭痛発作の発症抑制)がレイボー®よりも先に発売されているので、こちらの記事もご覧ください。

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レイボー®の基本情報

作用機序:
5-HT1F受容体に作用し、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGPR)などの放出を減少させ、片頭痛に対する治療効果を示すと考えられる。

 

適応:
片頭痛
トリプタン系と同じ適応。痛みがあったら飲む。頭痛1時間後の服用でも効果あり。予防の薬ではない。
新薬の抗体医薬品、エムガルティ/アイモビーグ/アジョビなどは発作予防の薬。

注意点!国際頭痛学会による片頭痛診断基準により「前兆のない片頭痛」あるいは「前兆のある片頭痛」と確定診断が行われた場合にのみ投与すること、となっていることに気を付けること。

 

用法用量:
通常、1回100mgを片頭痛発作時に服用。
状態に応じて1回50mg or 200mgを投与することができる。
錠剤の規格は50mgと100mgとがある。
1回50mg、100mg、200mgの投与が可能。

頭痛の消失後に再発した場合は、24時間あたりの総投与量が200mgを超えない範囲で再投与できる。

注意点!
本剤を投与しても頭痛の消失に至らず継続している発作に対する追加投与の有効性は確立していない。
ここ、トリプタン系と違う点。トリプタン系は効果不十分なら追加できる。レイボー®は効果不十分時の追加投与は推奨されていない。

 

☆内服のトリプタン系の追加の方法☆
マクサルト®:
1回1錠(10mg)を服用後、2時間以上あけること。
1日の総投与量は2錠(20mg)以内。

レルパックス®:
1回1錠(20mg)を服用後、2時間以上あけること。
1錠(20mg)で効果が不十分の場合、次回片頭痛発現時から2錠(40mg)で服用可能。
1日の総投与量は2錠(40mg)以内。

イミグラン®:
1回1錠(50mg)を服用後、2時間以上あけること。
1錠(50mg)で効果が不十分の場合、次回片頭痛発現時から2錠(100mg)で服用可能。
1日の総投与量を4錠(200mg)以内。

ゾーミッグ®:
1回1錠(2.5mg)を服用後、2時間以上あけること。
1錠(2.5mg)で効果が不十分の場合、次回片頭痛発現時から2錠(5mg)で服用可能。
1日の総投与量を4錠(10mg)以内。

アマージ®:
1回1錠(2.5mg)を服用後、4時間以上あけること。
1日の総投与量を2錠(5mg)以内。

 

簡易まとめ

トリプタン系
5-HT1B/1D受容体作動型
血管収縮作用あり
脳心血管系疾患の患者への禁忌あり
追加投与…効果不十分なら可能

レイボー
5-HT1F受容体作動薬
血管収縮作用が(ほとんど)ない
脳心血管系疾患の患者への禁忌なし
追加投与…頭痛消失後に再発したら可能

参考:各種薬剤の添付文書、IF

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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