ファムシクロビル(ファムビル®)とは
ファムシクロビルは、服用後速やかに代謝を受け活性代謝物ペンシクロビルに変換され、抗ヘルペスウイルス作用を発揮する薬剤である。
適応は
●単純疱疹
●帯状疱疹
の2つ。
用法用量は
単純疱疹:
通常、成人には1回250mg(=1錠)を1日3回服用(原則として、5日間)。
また、再発性の単純疱疹の場合は、通常、成人には1回1000mg(=4錠)を2回(初回から12時間後)経口投与することもできる。
帯状疱疹:
通常、成人には1回500mg(=2錠)を1日3回服用(原則として、7日間)。
ふむふむ、
単純疱疹は3錠分3、5日間
帯状疱疹は6錠分3、7日間か。錠数と日数に注意だな。
ん?
再発性の単純疱疹の場合は、通常、成人には1回1000mgを2回経口投与することもできる。
これはなんだ?
今回のポイントはココである。
再発性の単純疱疹に対するファムビルのPITによる短期間投与
PITとはPatient Initiated Therapy、訳すと患者主導の治療。
なんのことかというと…
症状が出たらすぐに薬を飲んでね!ということ。
単純疱疹(口唇ヘルペス、性器ヘルペス)は再発を繰り返すことが知られている。
●再発頻度が年間概ね3回以上
●再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、そう痒等)を正確に判断可能な患者
などの場合に
ファムビルによるPIT治療、1回の再発分の処方が可能となる。
1回の再発分の処方というのが、
1回1000mg(4錠)を1日2回、間隔は12時間あける、というものだ。
5日、7日飲むのではなく、「1回に高用量の1000mg、1日2回でおしまい」。
しっかりと覚えておこう。
海外では1day treatmentとも呼ばれているそうだ。
PITのメリットと開発の経緯
再発性の単純疱疹は、発病初期にすぐに薬を服用すれば治療効果が期待できるとされているが、実際には初期症状の時点で医療機関を受診できる患者は少ない。
海外では発症初期に短期間服用するPIT治療が標準となっているが、日本は遅れていてそのような治療が標準ではなかった。
PITで治療できれば、発病初期の治療が可能&服薬日数の短縮&服薬アドヒアランスの向上が期待でき、いいことだらけ。
そこで、日本国内で本剤のPITによる短期治療の開発に着手し、再発性の単純疱疹(口唇ヘルペス及び性器ヘルペス)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施した。
結果、
本剤1回1000mg(4錠)2回投与のプラセボに対する優越性が検証され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と判断された。
これにより2019年2月に再発性の単純疱疹に対する1回1000mg2回投与の用法・用量が追加承認された。
なお、上記の投与量は全て腎機能が正常の場合。
腎機能が悪化している場合は、減量が必要な場合もある。
添付文書に腎機能低下時の減量方法がちゃんと記載されているので、しっかりと読むこと。
単純疱疹:3錠分3、5日間
再発性の単純疱疹:1回4錠、1日2回だけ
帯状疱疹:6錠分3、7日間
他にも抗ヘルペスウイル治療薬があるが、以下を参考に。
簡単にそれぞれの薬の特徴をまとめると
腎機能低下時に減量が必要なもの
●アシクロビル(ゾビラックス)
●バラシクロビル(バルトレックス®)
●ファムシクロビル(ファムビル®)
腎機能低下時に減量が不要なもの
●アメナメビル(アメナリーフ®)
アメナリーフ®は1日1回の服用に対して、他の薬は1日複数回。
「1日1回でよく、腎機能が低下していても用量調節が不要」というのがアメナリーフ®の最大の特徴。
ただし、アメナリーフ®の適応は「帯状疱疹」のみであることに注意(2022年6月時点)。
●Twitterをやっています!【くすりカンパニー】。
「お仕事の依頼」・「当サイトに記事を載せたい方」・「当サイトの記事を使いたい方」・「当サイトをご支援していただける方」を募集中!DMにてご連絡ください。