認知症治療薬を一時的に休薬し、再開する場合の投与方法
認知症治療薬には
1.コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3つ)
2.NMDA受容体拮抗薬のメマンチン
がある。
これらの薬剤に共通していることは、少量からスタートし、時間をかけて維持量まで増量することだ。その理由は、維持量から治療を開始すると副作用が高頻度でおきるためだ。
投与開始初期の主な副作用、通常の増量の方法
ドネペジル(アリセプト®)
●食欲低下、吐き気、下痢など
●1日1回3mg
↓ 1~2週間あけて
5mg
↓ 4週間以上あけて
10mgへと徐々に増量
ガランタミン(レミニール®)
●食欲低下、吐き気、下痢など。
●1回4mg、1日2回
↓ 4週間あけて
1回8mg、1日2回
↓ 4週間以上あけて
1回12mg、1日2回へと徐々に増量
*中等度の肝障害では
1回4mg、1日1回
↓ 少なくとも1週間たってから
1回4mg、1日2回
↓ 4週間以上あけて
1回8mg、1日2回へと増量。最高用量は1日16mg。
*重度の腎障害患者(クレアチニンクリアランス9mL/分未満)では、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること、となっている。
リバスチグミン(イクセロン®、リバスタッチ®)
●吐き気、嘔吐、食欲不振など。
●貼り薬のため投与量と関係なく皮膚症状(かゆみ、かぶれ、炎症など)が出ることがある。
●開始用量には次の2パターンがある。
①1日1回4.5mg → 9mg → 13.5mg → 18mgへと増量。増量の間隔はそれぞれ4週間毎。
②1日1回9mg → 4週間後に18mgに増量。9mgからスタートすると、吐き気、嘔吐などの副作用が出やすくなることに注意が必要。
メマンチン(メマリー)
●めまい・傾眠など
●1日1回5mg→10mg→15mg→20mgへと、1週間ごとに増量する。
*高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)の場合の維持量は1日1回10mgまで。
さて、副作用や効果の判定などで一時的に薬を中止したのちに薬を再開する場合はどうしたらよいだろう。初期用量からなのか、維持量から再開でよいのか。
まとめてみると以下のようになる。
維持量で再開できる休薬期間
ドネペジル
・5mg投与時の消失半減期は89.3±36.0時間。
・維持量で再開できる休薬期間は3週間以内。
参考:【アリセプト】 アリセプトを休薬した後に投与を再開する場合、服用量を何mgから再開したらよいですか?(アリセプトのすべて Q17 P27)
ガランタミン
・12mg反復投与時の消失半減期は10.7±7.2時間。
・維持量で再開できる休薬期間は3日以内。
リバスチグミン
・18mg投与時の消失半減期は3.3時間。
・維持量で再開できる休薬期間は4日以内。
・添付文書には以下の記載がある。
休薬期間が4日程度の場合は、休薬前と同じ用量又は休薬前に忍容であった用量で投与を再開する。
それ以外の場合は本剤の開始用量(4.5mg又は9mg)を用いて投与を再開する。投与再開後は、再開時の用量を2週間以上投与し、忍容性が良好であることを確認した上で、減量前の用量までは2週間以上の間隔で増量する。
メマンチン
・20mg投与時の消失半減期は71.3±12.6時間。
・維持量で再開できる休薬期間の目安は1週間以内。
参考:メマリーを休薬している認知症患者さんに、メマリーを再投与するときの投与方法を教えてください
*日経DIクイズだと、2週間以内と書いてある
最後に…
多くの薬は休薬→再開のときに休薬期間や再開時の量を気にしなくてよいが、今回紹介したように認知症治療薬の場合はそうはいかない。
何らかの事情で休薬する場合は、再開時のことも考えておく必要がある。
なお、自分なら次回以降スムーズに対応できるように、薬歴に記載する。
例)ドネペジルは〇〇の理由のためいったん中止。
3週間以内なら維持量で再開可能!それ以外は初期量から!
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