配合剤は内服だけではなく、今や注射剤でも発売されている。
ゾルトファイ®配合注、ソリクア®配合注は「基礎インスリン製剤+GLP-1受容体作動薬」が配合された新しい注射剤。
既存のインスリン単剤を示す単位は使用できないので、新しい単位として「ドーズ」が規定された。
ゾルトファイ®配合注
<特徴>
●2019年9月に発売。
●インスリン デグルデク(トレシーバ®注)+ リラグルチド(ビクトーザ®皮下注)の配合剤に相当する。
●本剤の用量単位である1ドーズには、インスリン デグルデク1単位、及びリラグルチド0.036 mgが含まれる。
<適応>
インスリン療法が適応となる2型糖尿病。
<用法用量>
通常、成人では、初期は1日1回10ドーズ(インスリン デグルデク10単位、リラグルチドとして0.36 mg)を皮下注射する。
適宜増減するが、1日50ドーズ(インスリン デグルデク50単位、リラグルチドとして1.8 mg)を超えないこと。
注射時刻は原則として毎日一定とする。
☞食前などの指定はない。
トレシーバ®の用法用量
通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射。
投与量は適宜増減する。
他のインスリン製剤を併用することがあるが、他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位。
ビクトーザ®の用法用量
通常、成人には、0.9mgを維持用量とし、1日1回朝又は夕に皮下注射。
ただし、1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量する。
適宜増減するが、1日0.9mgで効果不十分な場合には、1週間以上の間隔で0.3mgずつ最高1.8mgまで増量できる。
ソリクア®配合注
<特徴>
●2020年6月に発売。
●インスリン グラルギン(ランタス®注)+リキシセナチド(リキスミア®皮下注)の配合剤に相当する。
●本剤の用量単位である1ドーズには、インスリン グラルギン1単位、及びリキシセナチド1μgが含まれる。
☞1ドーズ中に各成分が1(単位、μg)ずつなので覚えやすい。
<適応>
インスリン療法が適応となる2型糖尿病。
<用法用量>
通常、成人には、5~20ドーズ(インスリン グラルギン5~20単位、リキシセナチドとして5~20μg)を1日1回朝食前に皮下注射する。
ただし、1日1回5~10ドーズから開始し、患者の状態に応じて増減するが、1日20ドーズを超えないこと。
本剤の投与は朝食前1時間以内に行い、食後の投与は行わないこと。
☞ゾルトファイ®と異なり、投与方法の指定がある。
ランタス®の用法用量
初期は1日1回4~20単位を皮下注射するが、ときに他のインスリン製剤を併用することがある。
注射時刻は朝食前又は就寝前のいずれでもよいが、毎日一定とする。
投与量は適宜増減するが、その他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位である。
リキスミア®の用法用量
通常、成人には20μgを1日1回朝食前に皮下注射する。
ただし、1日1回10μgから開始し、1週間以上投与した後1日1回15μgに増量し、1週間以上投与した後1日1回20μgに増量する。
適宜増減するが、1日20μgを超えないこと。
ゾルトファイ®配合注、ソリクア®配合注をどのように使い分ける?
両者の使い分けはどうしたらよいのだろうか。
最大用量で比較すると、
☑ ゾルトファイ®50ドーズは、基礎インスリンが50単位
☑ ソリクア®20ドーズは、基礎インスリンが20単位
インスリンをどのくらい必要とするかが、1つのポイントかもしれない。
また、それぞれに含まれるGLP-1受容体作動薬にも差があることや、肥満度にも注目かも。
<リラグルチドとリキシセナチドの違い>
●リラグルチド
空腹時血糖と食後血糖をバランスよく低下させる。
ビクトーザ®の単独療法(国内試験:24週)では、体重の影響は −0.92kg。
●リキシセナチド
空腹時血糖を下げる作用はほとんどないが、特に朝食後血糖値を強く下げる。
リキスミア®の単独療法(国内試験:24週)では、体重の影響は −1.31±2.09kg。
インスリンの必要量が20単位を超える
⇒ゾルトファイ®。
個人的には、インスリンは投与量を間違えれば体重を増やすし、そもそも基礎インスリンを20単位以上使う2型糖尿病の患者さんもそんなに多くない印象なので、ゾルトファイ®のMAX量50ドーズはまず使われないと思う。
20単位を超えない
⇒ゾルトファイ® or ソリクア®。
食後高血糖(特に朝食後)を特に下げたい場合はソリクア®。
なお、インスリン必要単位が10単位だと、ゾルトファイ®10ドース中にはリラグルチド0.36mgで、リラグルチド開始用量とほぼ同じくらいとなり少ないと感じてしまう。
が、実際にはこのくらいの量でも効果が出るとのこと。
肥満の程度の観点からいくと
肥満患者
⇒基礎インスリンの必要量も多い。体重減少効果が証明されているリラグルチドを含むゾルトファイ®
肥満がない患者
⇒ソリクア®
と考えるDrもいるとのこと。
使い分けに関する明確な基準はない、というのが現状だ。

注射薬の配合剤は患者負担の軽減が期待できる反面、配合比が一定のため微調整しにくい。場合によっては配合剤ではないほうがいいかもしれない。
個々の患者の状態に応じた治療方針の決定が大切である。
参考:各薬剤の添付文書
●Twitterをやっています!【くすりカンパニー】。
「お仕事の依頼」・「当サイトに記事を載せたい方」・「当サイトの記事を使いたい方」・「当サイトをご支援していただける方」を募集中!DMにてご連絡ください。