イトリゾール®カプセルと内用液(成分イトラコナゾール)は、食事影響の受け方が違う、適応症が違う、BA(バイオアベイラビリティ)が異なるなど、知っておかないといけないことが多い。
イトラコナゾールの作用機序、特徴
真菌のチトクロームP450に特異的に作用して、真菌の細胞膜の主要構成脂質であるエルゴステロールの生合成を阻害する。
ヒトにイトラコナゾールを経口投与すると、主に肝臓で代謝され、主活性代謝物はヒドロキシイトラコナゾールであった。
なお、腎機能による用量調節は不要である。
イトリゾール®カプセル
●食直後に服用(空腹時だと吸収低下)
空腹時に投与すると、食直後投与時の最高血漿中濃度と比較して約40%にまで低下し、ヒドロキシイトラコナゾールも同様の傾向が認められた。
●胃酸分泌が低下するとカプセルの溶解性が低下し、吸収が低下することがある
→胃酸分泌抑制剤(H2ブロッカー、PPI、タケキャブ®)の併用は要注意。
●酸性の飲料(コーラ)は吸収を促進する。
<カプセルの問題点>
食事摂取が困難な患者や、胃酸分泌抑制薬を併用している患者では、イトラコナゾールが十分に吸収されず、十分な血中濃度が得られず、治療が困難になる場合がある。
イトリゾール®内用液
●カプセルは1993年発売、内用液は2006年発売。カプセルの改良型。
●空腹時に服用。
空腹時の方が、食直後投与よりも未変化体及びヒドロキシイトラコナゾールのTmaxが短縮(約0.5倍)、Cmaxの上昇(1.7倍及び1.6倍)、AUCの増加(1.1倍及び1.2倍)。
●胃酸分泌の影響を受けない → 胃酸分泌抑制薬を併用できる。
●カプセルよりも吸収がよく、食事摂取が難しい患者でも安定した血中濃度が得られる。
●内用液はカプセルと生物学的に同等ではなく、BAが向上している。
<内用液の問題点>
内用液には、溶解補助剤のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが含まれている。
これに起因する胃腸障害(下痢、軟便等)及び腎機能障害の発現に注意すること。
切り替え時の注意点
カプセル→内用液への切り替え:
イトラコナゾールの血中濃度(AUC、Cmax)の上昇による副作用の発現に注意すること。また、内用液に含まれている、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに起因する胃腸障害(下痢、軟便等)及び腎機能障害の発現に注意すること。
内用液→カプセルへの切り替え:
イトラコナゾールの血中濃度が低下することがあるので、原則として切り替えを行わないこと。
ただし、内用液のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに起因する胃腸障害(下痢、軟便等)及び腎機能障害による異常を認めた場合などを除く。
適応症の違い(2021/1月時点)
赤文字はカプセル、内用液の共通適応。
カプセルの適応
①内臓真菌症(深在性真菌症):
真菌血症、呼吸器真菌症、消化器真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎
②深在性皮膚真菌症:
スポロトリコーシス、クロモミコーシス
③表在性皮膚真菌症(爪白癬以外)
〇白癬:体部白癬、股部白癬、手白癬、足白癬、頭部白癬、ケルスス禿瘡、白癬性毛瘡
〇カンジダ症:口腔カンジダ症、皮膚カンジダ症、爪カンジダ症、カンジダ性爪囲爪炎、カンジダ性毛瘡、慢性皮膚粘膜カンジダ症
〇癜風、マラセチア毛包炎
④爪白癬(パルス療法)
内用液の適応症
①真菌感染症:
真菌血症、呼吸器真菌症、消化器真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎、口腔咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症
②真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症
③好中球減少が予測される血液悪性腫瘍又は造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防
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