ピロリ菌と逆流性食道炎の関係
ピロリ菌の除菌後に、まれに一過性の胸焼けや、逆流性食道炎が起こることがある。
これは、除菌前では高かった胃内pHが元のpH1~2に戻るために起こると考えられている。
しかし、症状は軽微の場合が多く、治療が必要となるケースはまれである。
ピロリ菌が生息すると胃内pHが高い理由
●胃のpHは1~2という強酸性で、通常の菌は生息できない。
●ピロリ菌が活動するのに最適なpHは6~7で、4以下ではピロリ菌は生きられない。
●ピロリ菌は、胃酸でやられないようにウレアーゼという酵素を作り出している。
●ウレアーゼは胃の中の尿素を分解してアンモニアを作り、ピロリ菌のまわりの胃酸を中和する。これにより胃の中でもピロリ菌は生息できる。
一方、
消化性潰瘍患者に対して除菌しても、逆流性食道炎の発症は増加しないという報告や、
十二指腸潰瘍を合併している逆流性食道炎の場合には、むしろ逆流性食道炎が改善するという報告、
十二指腸潰瘍合併例でなくても、1 年後には GERD 関連の QOLと酸逆流症状は改善するとの報告がある。
これらのことから、日本ヘリコバクター学会の診療ガイドラインでは、除菌による逆流性食道炎の発症増加や症状増悪をほとんど認めないため、「逆流性食道炎の存在はピロリ菌の除菌の妨げとはならない」としている。
GERD (ガード)、NERD(ナード)とは
GERD(gastroesophageal reflux disease)は「胃食道逆流症」といい、「胃内容物の逆流により臨床症状や合併症を生じた病態の総称」と定義されている。
GERDは、症状や食道の粘膜の状態によって逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症(NERD non-erosive reflux disease)に分けられる。
典型的な症状として、
逆流性食道炎:胸やけ・呑酸症状があり、食道粘膜に炎症がある。
NERD:胸やけはあるが、食道粘膜に炎症がない(内視鏡所見に異常なし)。GERDの半数以上を占め、女性や非肥満者に多い。
参考:
●ピロリ菌のお話.jp:武田薬品工業株式会社
●ピロリ菌除菌が逆流性食道炎に与える影響
●pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版Q&A
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