吸入ステロイドは成長に影響があるか?
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017によると、「小児喘息患者が吸入ステロイドを長期使用すると、成長抑制と関連する可能性がある」としています。
その根拠となるメタアナリシスがこちらです。
軽症~中等症の持続型喘息のある18歳までの小児(8471人)を対象とした、25の無作為化比較試験 (RCT)のメタアナリシス1)によると、
小児喘息患者が吸入ステロイドを1年以上使用すると、身長の伸びが年間平均で0.48cm少なくなりますが(-0.48cm、95%信頼区間:-0.65~-0.30)、
2年以上使用すると統計的有意差はなかった(-0.19cm、95%信頼区間:-0.48~0.11)とあります。
なお、この時に使用された吸入ステロイドは、
〇ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(商品名キュバール)
〇ブデソニド(商品名パルミコート)
〇シクレソニド(商品名オルベスコ)
〇フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名フルタイド)
〇モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名アズマネックス)
〇flunisolide
でした。
この中で、日本で小児適応があるのは、キュバール、パルミコート、オルベスコ、フルタイドの4つです。
また、1日量400μgのブデソニドを5~13歳の小児が4~6年間使用し、成人年齢(24.9±2.7歳)に達した時の身長をコントロール群と比較した1試験があります。
これによると、ブデソニドを使用した群の方が、コントロール群の身長よりも平均1.2cm低いという結果でした2)。
このように、吸入ステロイドは成長抑制をきたしうる可能性があります。
では、吸入ステロイドにより成長抑制の可能性があることを、患者や患者の家族にどう伝えるか。これはなかなか難しいことだと思います。
しかし、小児喘息の長期管理に吸入ステロイドが不可欠な薬剤でもあることも事実です。
成長抑制というリスクと、喘息による入院・死亡を減らすというベネフィットを十分に考慮した適切な使用、そして説明が個々の患者さんに必要になってくるでしょう。
参考:
1) Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth.
Evid Based Child Health. 2014 Dec;9(4):829-930.
2) Effect of inhaled glucocorticoids in childhood on adult height.
N Engl J Med. 2012 Sep 6;367(10):904-12.
吸入ステロイドとロイコトリエン拮抗薬はどちらが喘息に効くか?
「吸入ステロイド」と「モンテルカスト」の効果を比較した無作為化比較試験 (RCT)のメタアナリシス1)によると、結果は次の通りでした。
軽症~中等症の持続型喘息と診断された18歳未満の患者に対し、
「吸入ステロイドを投与した群」と「モンテルカストを投与した群」とで喘息の悪化を比較したところ、
喘息の悪化は「吸入ステロイド群で21.3%」、「モンテルカスト群で25.6%」、相対リスクは0.83(95%信頼区間:0.72-0.96)でした。
つまり、吸入ステロイド群の方が喘息の悪化が少なく、相対リスクでは約17%の減少、絶対リスクでは約4%の減少です。
しかし、絶対リスクで約4%の違いというのはそこまで大きな差ではない、と考えることもできます。
このことから、吸入ステロイドによる副作用(成長抑制など)を気にする患者においては、喘息症状が軽症~中等症の場合はモンテルカストを使ってみるのも1つの選択肢となるでしょう。
参考:
1)The role of inhaled corticosteroids and montelukast in children with mild-moderate asthma: results of a systematic review with meta-analysis.
下記リンクで読めます。
Arch Dis Child. 2010 May;95(5):365-70.
http://www.sefap.it/farmacovigilanza_news_201012/merec_monthly_no32.pdf
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