糖尿病治療薬の幅が広がり、
DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬の処方を見ない日はない
と言ってもいいくらい普及した。
しかし、この両者の併用は可能なのだろうか?
結論からいくと、電子添文では禁忌にはなっていないが
「DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用はしない方がいい」
となる。
理由1
共にGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有するインクレチン関連薬で、作用の重複があるため。
理由2
両剤を併用した場合の臨床試験データはなく、有効性や安全性は確認されていないため。
理由3
1と2の理由から、併用すると保険診療上の査定対象となる可能性が高いため。
参考までに薬局ヒヤリ・ハット事例の報告例のPDFを紹介しておく。
(事例から学ぶ)新規収載医薬品に関する事例-マンジャロ皮下注アテオス-
マンジャロ皮下注アテオスが処方された際は、作用機序が同じ他のGLP-1受容体作動薬との重複に注意するだけでなく、同様にインクレチン関連薬に分類されるDPP-4阻害薬との重複についても確認する必要がある。
ところでDPP-4とGLP-1って?
食事をとると、GLP-1という物質が消化管(小腸のL細胞)から出てくる。
GLP-1は、膵β細胞で血糖値依存的に(≒血糖値が高い時だけ)インスリンの分泌を促進し、膵α細胞ではグルカゴン分泌を抑制することで血糖値を下げる。
また、中枢では摂食抑制ホルモンとして作用し、食欲を抑える効果がある。
このような特徴的な作用をもつGLP-1ではあるが、DPP-4という分解酵素によりあっという間に分解されてしまい効果がなくなってしまう。
ここに着目したのがDPP‐4阻害薬とGLP-1受容体作動薬だ!

DPP-4阻害薬
その名のとおりDPP-4を阻害し、GLP-1の分解を抑制することで効果を発揮する。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1に類似した構造をもち、同様の効果を発揮し、かつDPP-4で分解されにくいように化学合成して作られたのもの。
2つの薬剤に共通すのは、いずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している、ということだ。
DPP‐4阻害薬とGLP-1受容体作動薬などの種類
DPP-4阻害薬
<毎日服用>
シタグリプチン(ジャヌビア®、グラクティブ®)
ビルダグリプチン(エクア®)
アログリプチン(ネシーナ®)
リナグリプチン(トラゼンタ®)
テネリグリプチン(テネリア®)
アナグリプチン(スイニー®)
サキサグリプチン(オングリザ®)
<1週間に1回服用>
トレラグリプチン(ザファテック®)
オマリグリプチン(マリゼブ®)
Q.腎機能が低下していても通常量が使えるDPP-4阻害薬は?
A.リナグリプチン(トラゼンタ®)とテネリグリプチン(テネリア®)
GLP-1受容体作動薬
<毎日使用>
エキセナチド注射剤(バイエッタ®皮下注)
<毎日服用>
セマグルチド 経口薬(リベルサス®)
<1週間に1回使用>
持続性エキセナチド注射剤(ビデュリオン®皮下注)
デュラグルチド(トルリシティ®皮下注)
セマグルチド(オゼンピック®皮下注)
GIP/GLP-1受容体作動薬
チルゼパチド(マンジャロ®)
インスリン/GLP-1受容体作動薬配合
ゾルトファイ®配合注(インスリン デグルデク/リラグルチド)
ソリクア®配合注(インスリン グラルギン/リキシセナチド)
最後に…
似た作用を持つんだから併用はしないよな、と通常なら判断できることでも、忙しかったり、確認不足などで見過ごすこともあるかもしれない。
しかしそれは言い訳にすぎないので、そうならないように日々注意して仕事をしていきたい。


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