ワセリンと言えば軟膏の基剤に使用されたり、皮膚保護剤として使用されたりと、医療従事者であれば身近なものである。
実は、ワセリンは製品によって純度が異なり、販売名も異なることをご存知だろうか?
そして純度の低い製品を使用するとごくまれに接触性皮膚炎を起こすことがあるそうだ。
白色ワセリン
まず、白色ワセリン。これは石油から得た炭化水素類の混合物を脱色・精製したものの総称。微量だが不純物があり、これらが酸化されると劣化・皮膚への刺激となることがある。
<(一般的な)白色ワセリンの適応>
●軟膏基剤として調剤に用いる。
●また、皮膚保護剤として用いる。
注意!健栄製薬株式会社の白色ワセリンの適応は
●軟膏基剤(一般軟膏用基剤、眼軟膏用基剤)として調剤に用いる。
●また、皮膚保護剤として用いる。
本剤は無菌製剤ではないので、眼軟膏用基剤として用いる場合は、滅菌処理すること。
となっている。
プロペト
この白色ワセリンをより精製し、不純物を少なくしたのがプロペト。
プロペトの添付文書には、
プロペトは日本薬局方白色ワセリンの規格に適合するとともに、次のように眼科用基剤として適切な物性を有する。
●稠度、粘度ともに眼科用軟膏として適切な物性を有する。
●夾雑有機酸類が少なく、その他の刺激性要素をほとんど含有しない。
●加熱滅菌に耐え、ほとんど変色することがない。
との記載があり、明らかに「白色ワセリン」とは区別される。
<プロペトの適応>
眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる。
なお、眼科用の基剤として使用する場合は、調製後滅菌処理をすること。
サンホワイト
さらにこのプロペトを精製し不純物をもっと減らしたのがサンホワイト。
サンホワイトは医療用医薬品ではなく化粧品として市販薬で販売されている。
白色ワセリンとプロペトを皮膚保護で使用する場合、通常はそこまで使い分けを気にする必要はないと思われる。
ただし、白色ワセリンが原因と思われる接触性皮膚炎が生じた場合、アトピーなど皮膚バリア障害がある場合はプロペトの方が好ましいかもしれない。
白色ワセリンやプロペトでも皮膚刺激性を感じる場合は、サンホワイトの使用を考慮するのも1つ手である。
以上、ワセリンでも純度によって製品が異なることを覚えておこう。
純度が高くなる順
白色ワセリン<プロペト<サンホワイト
なお、2012年とだいぶ前だが製薬会社に確認したところ、アンテベート軟膏とキンダベート軟膏は基剤としてサンホワイトを使用していると教えていただいた。
白色ワセリンとプロペトの変更は可能?
白色ワセリンとプロペトは先発、後発に分類されない医薬品。
そのため、疑義照会なしに 白色ワセリン→プロペト or プロペト→白色ワセリン
への変更は不可とのこと。
こちらのサイトを参考にしました。
純度の問題ではなく、区分の問題のため疑義なしに変更できないとは。
(実は、白色ワセリン→プロペトはOKで、プロペト→白色ワセリンは疑義照会が必要と思っていました…)
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