ヒルドイド®ソフト軟膏とクリームの違い
添付文書の記載は以下の通り。
ヒルドイドソフト®軟膏
一般的名称:ヘパリン類似物質 クリーム
基剤の種類:油中水型の乳剤性基剤
性状:白色のクリーム剤で、わずかに特異なにおいがある
ヒルドイド®クリーム
一般的名称:ヘパリン類似物質 クリーム
基剤の種類:水中油型の乳剤性基剤
性状:白色のクリーム剤で、わずかに特異なにおいがある
違いに気づけただろうか?
実は、一般的名称は同じ、性状も同じ。
異なるのは基剤の種類である。
ソフト軟膏では油中水型(o/w型)、クリームでは水中油型(o/w型)となっていて、実にわかりにくい。
なお、適応症は全く同じである。
ヒルドイド®ソフト軟膏とクリームの使い分けの方法
マルホの「ヒルドイド®の使い方」によると、季節や塗布部位によるヒルドイド®ソフト軟膏、クリームの使い分けの方法が載っている。
<季節による使い分け>
秋から冬の乾燥期には油分の多いw/o型クリーム(ヒルドイド®ソフト軟膏)が選択され、o/w型クリーム(ヒルドイド®クリーム)は、被覆性・使用感のバランスが取れており、年間を通じて使用可能です。
<塗布部位による使い分け>
顔面はヒルドイド®クリーム、手や腕、ひざや踵など被覆性が求められる部位は、ヒルドイド®クリーム0.3%やヒルドイド®ソフト軟膏0.3%が適しています。
しかし、多くの処方医はこのような使い分けにこだわっていないと思われる。
患者の好み(使用感)で選択すればよいだろう。
なお、一般に
w/o型クリーム:わずかにベタつくが、伸びは比較的よい。皮膚がただれているようなときは、わずかに刺激性あり。
o/w型クリーム:べたつきはそんなにない、伸びはよい。皮膚がただれているようなときは、刺激性あり。
という特徴がある。
一般名処方は要注意!?
ヘパリン類似物質の一般名処方マスタには、「ヘパリン類似物質軟膏0.3%」と「ヘパリン類似物質クリーム0.3%」がある。
これらをヒルドイド®、後発品で整理すると以下の通りである。
ヘパリン類似物質軟膏0.3%
●ヒルドイドソフト®軟膏0.3%:準先発品
●ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%:後発品…日医工、アメル、テイコク、ニプロ、ニットー
ヘパリン類似物質クリーム
●ヒルドイド®クリーム0.3% :準先発品
●ビーソフテン®クリーム0.3%:後発品
●ヘパリン類似物質クリーム0.3%:後発品…アメル、ラクール、SN、YD
ジェネリックの「ヘパリン類似物質油性クリーム」と「ヘパリン類似物質クリーム」は別物であることに注意が必要。
軟膏なのに、クリーム…?
ヒルドイド®ソフト軟膏とその一般名処方マスタ(ヘパリン類似物質軟膏0.3%)は、ともに名称に軟膏が入っている。しかし実際は油性クリームが正しい表現である。
*ヒルドイド®ソフト軟膏の名称は、日本薬局方の製剤総則改正前に付けられたため、軟膏がついていると思われる。
このような現状のため、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会は2019年12月に、「医薬品の一般名処方における現場の混乱回避のための要望書」を厚生労働省 保険局 医療課、に以下の内容を提出した。
現在、ヘパリン類似物質に軟膏剤は無く、一般名処方マスタの標準的記載にも軟膏が使用されており、油性クリームが使用されていないために、容易に後発医薬品の販売名を連想することが困難な状態となっています。
軟膏剤・クリーム剤の定義
軟膏剤:
皮膚に塗布する、有効成分を基剤に溶解又は分散させた半固形の製剤である。 本剤には、油脂性軟膏剤及び水溶性軟膏剤がある。
クリーム剤:
皮膚に塗布する、水中油型又は油中水型に乳化した半固形の製剤である。油中水型に乳化した親油性の製剤については油性クリーム剤と称することができる。
参考:日本薬局方 通則
外用薬の剤形変更はできる?
外用薬の剤形の変更は、疑義照会なしにできない。
例えば、疑義照会なしに
ヒルドイド®ソフト軟膏 → ヒルドイド®クリーム
ヒルドイド®ソフト軟膏 → ヘパリン類似物質クリーム0.3%
ヘパリン類似物質油性クリーム0.3% → ヘパリン類似物質クリーム0.3%
への変更はできない。
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