手術前に中止する薬剤と聞いて何を思い浮かべるだろうか?
血液サラサラ系
医療関係者ならまず思い浮かべるのが、いわゆる血液サラサラの薬。
例えば、
アスピリンなどの抗血小板薬
ワーファリン®、イグザレルト®などの抗凝固薬
抗血小板作用を持つエパデール®、ロトリガ®
などだと思う。
こういった薬以外にも、手術の前後で注意したほうがよい薬があることを紹介していきたい。
ARB、ACE阻害薬
まずは高血圧治療薬のARB(カンデサルタン、アジルサルタンなど)。
アジルサルタン(アジルバ®)の添付文書には以下の記載がある。
手術前24時間は投与しないことが望ましい。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤投与中の患者は、麻酔及び手術中にレニン-アンジオテンシン系の抑制作用による高度な血圧低下を起こす可能性がある。
類似薬のACE阻害薬も同じだ。例えばエナラプリル(レニベース®)の添付文書には
手術前24時間は投与しないことが望ましい。アンジオテンシン変換酵素阻害剤投与中の患者は、麻酔及び手術中にレニン・アンジオテンシン系の抑制作用による血圧低下を起こすおそれがある。
と記載がある。
エストロゲン製剤
次に注意すべき薬剤は女性ホルモン製剤(エストロゲン製剤)だ。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、肝臓に作用し血を固まりやすくする物質の合成を促進する働きがある。そのため、エストロゲンを含むお薬を休薬せずに手術を行うと、手術の後に足などで血栓ができやすくなり、血栓症を引き起こすことがある。
一般に、エストロゲン製剤の手術前の休薬期間は長く、手術の4週間前から休薬とすることが多い。
エストロゲン製剤は単剤と合剤がある。
エストロゲン製剤単独
●プレマリン®
エストロゲン製剤+プロゲスチン製剤(=LEP、低用量ピル)
●ルナベル®
●ヤーズ®
など。
プレマリン®の添付文書には以下の記載がある。
手術前4週以内又は長期臥床状態の患者:
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。血液凝固能が亢進し、血管系の副作用の危険性が高くなるおそれがある
ルナベル®、ヤーズ®の添付文書の禁忌項目には以下の記載がある。
手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者[血液凝固能が亢進され、心血管系の副作用の危険性が高くなることがある。]
女性ホルモン製剤が投与されていたら、まずは添付文書で休薬期間を確認することが大切!!
LEP(Low dose Estrogen Progestin)に関しては以下の記事の中でも紹介しているのでぜひご覧ください。
エストロゲン様作用を持つ薬剤
最後に紹介するのが、骨粗鬆症治療薬のラロキシフェン(エビスタ®)とバゼドキシフェン(ビビアント®)だ。
共にエストロゲン受容体に作用することで効果を発揮するのだが、その際エストロゲンと同じような作用が発揮されるため休薬が推奨される。
この2つの薬の手術前の休薬期間は3日間。
エビスタ®の添付文書には以下の記載がある。
静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症を含む)のリスクが上昇するため、長期不動状態(術後回復期、長期安静期等)に入る3日前には本剤の服用を中止し、完全に歩行可能になるまでは投与を再開しないこと。
ビビアント®の添付文書には以下の記載がある。
長期不動状態(術後回復期、長期安静期等)に入る前に本剤の投与を中止し、完全に歩行可能になるまでは投与を再開しないこと。
こちらには3日前、との記載はないが、エビスタ®と同様に考えておくのが無難と思われる。
参考:非常に丁寧にまとまっている資料がこちらです。
ARB、ACE阻害薬:1日
エビスタ®、ビビアント®:3日
ワーファリン®:5日
アスピリン:7日
エストロゲン製剤:4週間
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