機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)
機能性ディスペプシア(FD)は、内視鏡などの検査で器質的疾患を認めないにもかかわ
らず、もたれ感や飽満感、みぞおちの痛みなどの上腹部を中心とする症状が持続する機能性疾患である。
基質的疾患を除外するため、確定診断には内視鏡検査の実施が求められている。
なお、NSAIDs(低用量アスピリンを含む)の服用によりディスペプシア症状の出現は有意に増加する。ただし、これらの薬剤の中止で症状が軽減・消失する場合は、FDではないとして考える。
☞薬剤が原因の場合はFDではない。
FDは致死的な疾患ではないが、患者の生活の質(QOL)に及ぼす影響は大きいとされる。
日本における機能性ディスペプシアの有病率は一般的に10~20%程度とされている。
FDは内視鏡などの検査で器質的疾患がないが、おなかの不調を訴える病気。
FDの治療薬
現在、保険適応があるのはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用により消化管運動を亢進させるアコチアミド(アコファイド®)のみである(2021年7月時点)。
☞アコファイド®を処方するためには、「内視鏡検査をしてFDと診断する必要がある」ため、簡単にポンポン処方できない。
適応外で使用されるものには、上腹部症状改善のための対症療法として
●アコファイド®以外の消化管運動機能改善薬(ガナトン®、ガスモチン®など)
●H2受容体拮抗薬
●プロトンポンプ阻害薬
などがあり、ガイドラインでは全てエビデンスレベルはAである。
また、一部の漢方薬(半夏厚朴湯など)や抗うつ薬・抗不安薬なども使用されることがあり、こちらもガイドラインではエビデンスレベルAである。
ただし、FDの治療の特徴として、プラセボ効果が大きいことが知られており、その効果は5~90%と報告により様々である。
FDにはアシノン®がよいかも?
ガイドラインでは、H2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬のFDに対する効果には有意な差はないため、どちらの治療でもよいとされる。
しかし、もしかしたらH2受容体拮抗薬のうちアシノン®(ニザチジン)がよりよい効果が出す場合があるかもしれない。
それは、ニザチジンは他の胃酸分泌抑制剤にはない特徴として、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで消化管運動を促進する作用もあるからだ。
☞消化管運動促進により胃の動きがよくなり、胃のもたれ感を改善することが期待できる。
FDの治療としてPPIが処方されていても胃のもたれ感が強い場合は、アシノン®にしてみるのも1つの方法かもしれない。
ただし、逆流性食道炎を合併していた場合は変更しないほうがいいだろう。
H2ブロッカーの適応外処方
シメチジン(タガメット®)
大腸がん、その他のがんの転移抑制を目的に適応外使用されることがある。
シメチジンには、がん細胞転移に関わるE-セレクチンの発現を抑制する報告があり(Oncol Rep. 2009 Dec;22(6):1293-7.)、この作用はH2ブロッカーの中でもシメチジンに特有のもの。
また、肩関節石灰沈着性腱板炎にも使用されることがある。
ファモチジン(ガスター®)
抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)で効果不十分な蕁麻疹に使用されることがある。
シメチジンと同じく、石灰沈着性腱板炎に使用されることもある。
ラフチジン(プロテカジン®)
適応外で、抗癌剤による口内炎、舌痛症、末梢神経障害の緩和に使用される。
カプサイシン感受性知覚神経を介した作用により効果があるものと考えられている。
ニザチジン(アシノン®)
消化管運動亢進作用と唾液分泌促進作用がある。
唾液分泌が少ない人に、適応外で使用されることがある。
また、「胃酸分泌抑制作用+消化管運動亢進作用」を期待して、機能性ディスペプシア(FD)に使用されることもある。
参考:
アコファイド®のIF
機能性消化管疾患診療ガイドライン2014
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