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脂質異常症(高脂血症)

スタチンを中止するCKの基準は?横紋筋融解症とは?

横紋筋融解症とは

スタチンを服用中の筋肉痛や血清CK(CPK)の異常な上昇は、重大な副作用の一つである「横紋筋融解症」の可能性がある。

横紋筋融解症の特徴として、筋肉痛、尿の色がコーラのように黒くなる、などの自覚症状があり、検査値ではCK(CPK)値は正常上限40倍以上(およそ10,000 IU/L以上)の高値になる。

尿の色がコーラのように黒くなる理由は、筋細胞の壊死・融解により尿中に出てきたミオグロビン(筋肉成分)による。
ミオグロビンが尿細管で詰まると、急性腎不全を引き起こすことがあるため、スタチン服用中に明らかな尿の色の異常があるときは、服用を中止し、すぐに医療機関に受診するよう患者に説明しておく必要である。

なお、スタチン服用により、筋肉痛は5%、筋障害は0.1~0.2%、横紋筋融解症は0.01%に生じるという報告がある(Mayo Clin Proc. 2008 Jun;83(6):687-700.)。

横紋筋融解症の発生頻度は低いが、適切な処置が行われない時には死亡する場合もあるため要注意だ。

 

スタチンを中止するCKの基準

スタチン不耐に関する診療指針2018」に、スタチン服用中のCK上昇に対する対応が記載されているが、読んでいて??となる箇所がある。指針の詳細は必ず各自で読んでいただきたい。
この指針と、「スタチンによるCK上昇への対応(日本医事新報社)」の記事を読んで、自分なりに以下のようにまとめてみた。あくまでも1つの目安であり、絶対的なものではない。そのまま臨床応用することは避けていただきたい。

 

 

<CK値とSAMSによって分類>
SAMS(statin-associated muscle symptoms:スタチン関連筋症状)は、スタチンが原因となって出現する筋症状のことで、「筋肉の痛み」、「つり」、「こわばり」、「違和感」などあらゆる筋肉症状を含む。

 

●正常上限の 4倍未満の軽度上昇(およそ500~800 IU/L未満)
SAMS():スタチンの継続(or減量して継続)が可能。心血管リスクが低い時は、中止を検討。
SAMS():症状が軽ければスタチンの継続(or減量して継続)、症状が重ければスタチン中止。

 

●正常上限の4倍以上10倍未満の中等度上昇(およそ(500~800 IU)~2,000 IU/L未満)
SAMS():スタチンの継続(or減量して継続)が可能。心血管リスクが低い時は、中止を検討。
SAMS():スタチンをすぐに中止。

 

●正常上限の10倍以上の高度上昇(およそ2,000 IU/L以上)
スタチンをすぐに中止。

ただし、実際には500IU以上だと筋肉症状の有無によらず中止指示がでることが多い気がする。

 

<参考>
スタチン不耐に関する診療指針2018より抜粋

スタチンによる筋有害事象の評価は、SAMSの有無と血清CK値に基づき4つの区分(カテゴリーA、B、C、D)に分けて対策をたてる。

①カテゴリーA:血清CK正常上限4倍未満かつSAMSなし。正常あるいは検査データだけの異常であり、スタチン継続が可能である。

②カテゴリーB:血清CK正常上限4倍以上 正常上限10倍未満かつSAMSなし、あるいは血清CK正常上限4倍未満かつSAMSあり。軽度の筋有害事象である。患者がSAMSを許容できれば、スタチンを継続、あるいは減量して継続することが可能である。ただし2~4週間後に再度評価を行う。カテゴリーA、Bであれば治療継続可能であるが、カテゴリーC、Dに悪化するようであれば治療は中止する。また患者がSAMSを許容できない場合には、中止し4~6週間の休薬期間をおく。別のスタチンの再投与を試みる前に、もう一度評価を行う。カテゴリーA、Bであれば新たなスタチンによる治療開始が可能であるが、カテゴリーC、Dに悪化するようであればスタチン治療を中止する。

③カテゴリーC:血清CK正常上限10倍以上かつSAMSなし、あるいは血清CK正常上限4倍以上、正常上限10倍未満かつSAMSあり。中等度の筋有害事象である。スタチン継続の必要性が高い場合にはSAMSを許容できれば、スタチンを継続、あるいは減量して継続することが可能である。筋有害事象が増悪する可能性が高いと判断される場合は2~4週間あるいはそれよりも短い間隔で再度評価を行う。カテゴリーA、Bに改善すれば治療継続可能であるが、カテゴリーC、Dであれば治療は中止する。患者がSAMSを許容できない場合、中止し4~6週間の休薬期間をおく。別のスタチンの再投与を試みる前に、もう一度評価を行う。カテゴリーA、Bに改善すれば新たなスタチンの治療開始が可能であるが、カテゴリーC、Dであればスタチン治療を中止する。その後の脂質管理については脂質代謝専門医へコンサルトする。

④カテゴリーD:血清CK正常上限10倍以上かつSAMSあり。重篤な筋有害事象である。すぐにスタチンを中止し、横紋筋融解症やミオパチーに進行する危険に注意する。特に横紋筋融解症を発症している場合には直ちに治療を開始する。第2のスタチン投与を含む今後の脂質管理については脂質代謝専門医へコンサルトする。

 

 

スタチンは血糖値に影響?

筋肉以外の症状で、スタチンで注意すべき副作用には「新規」糖尿病発症がある。
また、すでに糖尿病になっている患者へのスタチンの投与は血糖値へ悪影響を及ぼす可能性がある。

下記グラフは スタチンのDM発症、薬剤差を見極める【研修最前線】 より。

 

国立循環器病研究センターの脂質異常症を有する日本人の糖尿病患者における、ロスバスタチンとアトルバスタチンの効用比較によると、

LISTEN試験では、日本の132施設よりⅡ型糖尿病と脂質異常症を有する1,049人を登録し、ロスバスタチンを日に5mg投与する群とアトルバスタチンを日に10mg投与する群に無作為に1:1に割り振り、12か月の治療によるHDLコレステロール以外のコレステロール(非HDLコレステロール)・LDLコレステロール・糖尿病の評価基準となるHbA1c値の各項目の変化率を調査しました。

その結果、非HDLコレステロールは両群とも顕著な低下が認められ有意差はなかったものの、LDLコレステロールの低下率はロスバスタチン群で有意に大きくなりました(図1)。

また、HbA1c値は両群ともわずかに上昇が認められたが有意差はありませんでした。ただし、治療開始後6カ月の時点ではアトルバスタチン群で有意にHbA1cの増加率が高く(図2)、試験期間中に糖尿病治療薬の処方量が増えた患者の割合はロスバスタチン群が8.8%であったのに対しアトルバスタチン群では12.7%と明らかに多い結果となりました(図3)。

 

ただし、日本糖尿病学会で出版している「科学的根拠に基づく糖尿病ガイド2013」では、糖尿病患者の脂質異常症の意義として、”糖尿病患者の脂質異常症は積極的に治療する”と書いてある。

米国糖尿病学会(ADA)では、糖尿病それ自体が心血管リスクが高いことを考え、「糖尿病患者に対して、心血管予防を目的にスタチン投与を推奨する」としている(New Standards of Care Provide Guidelines for Statin Use for People with Diabetes to Prevent Heart Disease)。

 

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