SMART療法
SMART療法とは、1つの吸入薬のみで、喘息の長期管理薬(コントローラー)+喘息の発作治療薬(リリーバー)として用いる治療法のこと。
以前はSymbicort maintenance and reliever therapyの略だったが、
今は、single inhaler maintenance and reliever therapyの略とされている。
SMART療法はICS/LABA*配合薬の中で唯一、シムビコート®だけに認められている。
*ICS: inhaled corticosteroid(吸入ステロイド)
LABA:Long Acting Beta2-Agonist(長時間作用型β2刺激薬)
つまり、シムビコート®を維持療法で使用していても発作が出た場合は、同薬剤を発作時にも頓用吸入をしてもよいということだ。
SMART療法を可能としているのが、シムビコート®に含まれる、β2刺激薬であるホルモテロール。
このホルモテロールには3つの特徴がある。
特徴1.SABA(短時間作用性β2刺激薬)と同じく吸入後約5分で効果が出る。
特徴2.作用時間は12時間程度続く。
特徴3.用量反応性がある(使った分だけ、より気管支を拡張する)。
これらの特徴により、コントローラー+リリーバーとして使用ができる。
通常、喘息患者はコントローラーとリリーバーの両方を携帯する必要があるが(例:レルベア®+メプチン®エアー)、シムビコートはこれ1つでコントローラーとリリーバーの2つの役割を果たすことができ、患者には大きなメリットとなる。
しかし、SMART療法にはデメリットもある。
喘息患者のSMART療法に対する理解度によっては、医師の指示に関係なく自由に調節して使用していいと判断され、不必要な頓用吸入をされるケースがある点だ。また、1日の最大使用量を超えてしまうことも考えられる。
そのため、SMART療法を実施するのであれば、患者教育は必須である。
なお、SMART療法を指示されていない患者には、発作時に使用してもいいですよとは言ってはいけない。
アドエア®、レルベア®でSMART療法はできるか?
結論からいくと、ICS/LABA配合薬であってもアドエア®、レルベア®ではSMART療法はできない。
その理由は、含有されるβ2刺激薬の特徴による。
アドエア®…β2刺激薬のサルメテロールは効果発現が遅く、用量反応性がない。
レルベア®…β2刺激薬のビランテロールは効果発現は早いが、用量反応性がない。
このように、ホルモテロールと異なり効果発現が遅かったり、用量反応性がないものはSMART療法には適さない。
なお、フルティフォーム®はホルモテロール+ステロイドであるためSMART療法ができそうだが、してはいけない(ことになっている)。
これは単純にそのような適応を申請していないためだと思われる。
シムビコート®の適応
シムビコート®には喘息とCOPDの適応がある。COPDにはSMART療法はできない。
〈気管支喘息〉
通常、成人には、維持療法として1回1吸入(ブデソニドとして160µg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として4.5µg)を1日2回吸入投与する。
なお、症状に応じて増減するが、維持療法としての1日の最高量は1回4吸入1日2回(合計8吸入:ブデソニドとして1280µg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として36µg)までとする。
【以下、SMART療法に関する記載】
維持療法として1回1吸入あるいは2吸入を1日2回投与している患者は、発作発現時に本剤の頓用吸入を追加で行うことができる。
本剤を維持療法に加えて頓用吸入する場合は、発作発現時に1吸入する。数分経過しても発作が持続する場合には、さらに追加で1吸入する。必要に応じてこれを繰り返すが、1回の発作発現につき、最大6吸入までとする。
維持療法と頓用吸入を合計した本剤の1日の最高量は、通常8吸入までとするが、一時的に1日合計12吸入(ブデソニドとして1920µg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として54µg)まで増量可能である。
〈慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解〉
通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320µg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として9µg)を1日2回吸入投与する。
参考:各種添付文書
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