抗がん剤による口内炎の発生頻度は30~40%とかなり高いです。
一般に、抗がん剤を投与してから4~5日目くらいから口内炎ができ始め、10~14日間ほどで治癒します。
治癒するまでに次の抗がん剤投与が開始されると、症状が悪化したり、新しい口内炎ができたりし、治療の継続に大きな影響を与えます。
抗がん剤により口内炎ができるメカニズム
①抗がん剤が直接口腔粘膜に作用し、フリーラジカルが発生することで粘膜障害が起きる
②骨髄抑制による免疫低下で口腔内感染を引き起こす
③放射線照射による唾液分泌障害
などがあります。
抗がん剤による口内炎の治療薬には保険適応されるものと、されないものがあります。
保険適応されるもの
エピシル®口腔用液(局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材)
2018年1月31日に保険適用された管理医療機器で、「化学療法や放射線療法に伴う口内炎で生じる口腔内疼痛の管理及び緩和」に使用されます。
<使い方>
ポンプを1~3 回プッシュし、患部に内容液を滴下塗布したのち、舌で患部に塗り広げます。その後、保護膜が形成されるまで数分おきます。
<原理>
口腔粘膜に適量を適用すると数分以内に口腔粘膜の水分を吸収してゲル状になり、物理的バリアを形成することにより、口内炎で生じる口腔内疼痛を管理及び緩和します。
保険適応はないが、おそらく通常の口内炎として保険請求していると思われるもの
①アフタゾロン®口腔用軟膏0.1%(デキサメタゾン)
適応:びらん又は潰瘍を伴う難治性口内炎及び舌炎
☆他にも口腔用のステロイド剤があります。
・トリアムシノロンアセトニド口腔用貼付剤25μg「大正」
・アフタッチ®口腔用貼付剤25㎍
②トランサミン®(トラネキサム酸)
適応:口内炎における口内痛及び口内粘膜アフター
☞今回調べていたらトラネキサム酸にも口内炎の適応があることを知りました。そのような処方を見たことがないので、あまり処方頻度は高くないと思われます。
保険適応されないもの
①含嗽用ハチアズレ®顆粒10g+グリセリン60ml+精製水(加水全量500ml)
1回50ml、1日数回うがい
②アルサルミン®内用液10%
1回10mL を2 分間以上口腔内に含ませる
③アルロイドG®内用液5%
1回30mL、毎食前にうがい
☞口内炎に使用したことがありますが、アルロイド®が口内炎を覆ってくれている間(持続時間は短い)は症状がかなり緩和されます。
☞アルロイドG®内用液にプロマック®(ポラプレジンク)を混ぜることもあるそうだ。
④ザイロリック®(アロプリノール)
500mg+ポリアクリル酸ナトリウム0.5g+リドカイン塩酸塩100mL +精製水400mL。
1日数回、適宜うがい。
⑤ムコスタ®(レバミピド)
1回1錠、1日3回。粉砕して水に溶かして服用。1錠を30〜50mlの水に溶かして使用。
☞粉砕すると嫌な苦味がするのが欠点。
フリーラジカルの発生に伴う口内炎には、活性酸素の発生を抑制するアロプリノール、レバミピドが有効。
レバミピド内服、レバミピド含嗽液は口内炎発症の予防効果が報告されている。
★薬物による口内炎治療には限界があるため、ブラッシングやデンタルフロスによる口腔ケアが非常に重要になります。
参考:
重篤副作用疾患別対応マニュアル 抗がん剤による口内炎
薬剤学,65(1),43-47(2005)
YAKUGAKU ZASSHI 135(12) 1397―1402 (2015)
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